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第15話 冬市の仮誓約式

王都へ向かう前に、私は北辺の冬市で小さな仮誓約式を行った。


 相手はクララではなく、ヘレナの年金再認証だった。婚礼証四八七二が正式に戻るまでの仮登録を、領主立会いの公開式で認める。これなら年金も配給もすぐ動かせる。


「そんなことまで、できるんですか」


 ヘレナが目を見開く。


「本来の制度です。王都が眠らせていただけで」


 冬市の広場で、私は新しい封蝋を温め、仮登録札へ押印した。アルノーが立会人として名を記し、シスター・ノーラが公開台帳へ写す。拍手は控えめだったが、空気は確かに変わった。


「紙があると、生きていける」


 ヘレナのその一言が、胸に深く沈んだ。


 夜、帰り道でアルノーが私へ灰青色の手袋を渡してきた。


「王都は北辺より冷える」


「そんなはずないでしょう」


「人が」


 私は笑って受け取った。明日から戻るのは、祝宴の都だ。けれど私の手は、北辺でちゃんと温められていた。


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