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第14話 誰の名で押された印か
修道院の搬入票、偽婚約印、義妹の招待状。三つの押印痕を並べると、ひび割れの角度がぴたりと重なった。
「同じ印面です」
私は写しを机へ広げた。
「王宮誓約局の正式印を複製し、私の主任認証で使用している。押したのはミレイア。でも複製印を用意したのはフェリクスだけじゃない」
最後に残った帳票へ触れる。浮かぶのは局長名。
「局長補佐マルセル・ヴェーグナー」
アルノーが短く息を吐く。
「王都の上まで噛んでいるか」
「婚礼証を抜き、年金を止め、持参金を流し、偽婚約を売る。義妹は表の顔で、補佐が帳簿を動かしていた」
私は自分の認証札を見下ろした。奪われた席だけでなく、名前まで道具にされていたのだ。
「返すべきは宝飾だけじゃない」
「名誉も、権限もだな」
アルノーの言葉に、私は頷いた。
王都へ戻るときが来た。祝宴の幕が上がる前に、誰の名で押された印なのかを、公開の場で突きつけなければならない。




