第三話 騒がしくも静かな場所
前回の話
新しい観光地のアイデアを探していた。
転移魔法を駆使して笑いの花畑に着いた。だが笑い声は聞こえてこない。静寂が支配していた。まさにここは騒がしくも静かな場所だった。
「静かなんだな。」
「あ、あの笑い声は光合成をするときに発するんです。だから夜はすごくし、静かなんですよ。」
覚えたであろう知識を披露してくれる。俺自身が観光客になった気分だ。
月夜の中にカラフルな花が並んでいる。昼は笑い声に注目していたがこう見ると斑のようで整った景色が綺麗だ。
彼女は懐から円形の物体を取り出す。
「それは何だ?」
「こ、これはブラックライトです。」
紫外線と同じ性能を発揮するライトだと記憶しているが今使う理由があるのだろうかと眉をひそめる。彼女は俺の困惑に嬉しそうにしていた。
「これで照らすとすごいき、綺麗なんです。」
思いっきりボタンを押す。紫の優しい光があたりを包む。
「……これはすごいな」
花一つ一つに青い光が転々と映し出される。辺りに星が咲いている。そんな表現が似合う景色があった。瞳を奪われてしまう。
「え、えへへ」
「これは地元の人に聞いたのか?」
「い、いえこれは自分で見つけたんです。」
風が頬を撫でて、花を揺らす。先程よりも輝きが増したような気がする。
「すごいな。どうやって見つけたんだ?」
「昨日朝日のときに光っているのが見たのでも、もしかしたらって思ったんです。……えへへ」
「……寝不足の理由はこれか。」
「ま、まぁ」
朝日が出るまでずっと張り付いていたのか。もはや体調のほうが心配になる。
「程々にしておけよ。」
「ぜ、善処します。」
彼女はとても申し訳なさそうな顔で俯く。はぁ調子が狂う。
しばらく地上の星を堪能する。自分でもここまで魅了されると思わなかった。ふと陽向を見ると腕が少しプルプルしていた。
「俺が持つよ。」
「い、良いんですか?」
陽向からブラックライトを貰おうとしたときだった。
——ドォーン!
静寂を破るこの場にふさわしくない轟音だった。腰におろした凍玻璃の柄を掴む。
「わ、私何もしてないですよ!」
「分かってる。ここで待ってろ。」
彼女はコクコクと首を振り了承する。花のない細道を通って音源の方向へ向かう。
向かいながら考える。先程の音は何だったのだろう?最近都会と言える場所に来たばかりだからそうゆう類の魔法かもしれないと考える。だが違うと勘が告げる。
そういえば轟音がなる前に何かが噛み合うような音が聞こえた。……まさか。
岩が影を作り、隠していたがそこには二人の男がいた。
「おいハイン!何ぶっ放してんだ!」
「別にいいだろレオン。どうせこの時間にいるやつなんていない。」
「ツアーガードに見つかったらどうするんだ!」
激しく口論をしている。だがそれよりも気になるものがある。この世界で見るはずがない機械仕掛けの獣。会社に入るとき教材で見た「車」がそこにあった。間違いないこいつらは異世界の技術を違法取引してる連中だ。唯一異世界との技術が合わさった。通信魔法具。通称、通魔を使って本社と連絡を取る。あまり使ったことがないため操作に少し戸惑う。昔教えて漏れ合った記憶を手繰り寄せボタンを押す。
ツーと無機質な音が会話を促す。
「こちら氷牙。今、笑いの花畑で異世界の技術を持ち込んだと思われる奴らを発見。応援が欲しい。」
こんな伝え方で大丈夫だったはずだ。応援が来るまで時間稼ぎをしなければ。
奴らの前に姿を表す。
「ツアーガードだ。異世界間違法取引の疑いで同行してもらう。」
柄を握り抜き取る。仕事の時間だ。
「炎魔。君に対処をお願いしたい。やらかした輩がいるようだ。」
上司が俺を呼ぶとは何事かと思ったが出動要請らしい。昇進の話だと思ったのに残念だ。だが暴れそうでウズウズする。
「言っとくが前回のようにやりすぎるなよ。」
完全にバレてやがった。まぁ仕方ない真面目に仕事をするとするか。
二人はこっちを見て驚嘆する。早すぎるフラグ回収だったな。
「クソっ早く逃げるぞ。乗れ!」
「いやここで仕留める!」
「バカかお前!」
「こいつがあれば無敵だ。」
見たことがない兵器が握られている。今まで見てきた魔道具でもここまで複雑なものは見たことがない。きっと異世界の技術だろう。
「来いよ!鬼のツアーガードさん!その角売りさばいてやる!!」
完全にハイになっている。凍玻璃に魔力を流す。殺さないようにするのが難しそうだ。
足に力を入れる。間合いを詰めて一撃目で決めたいところだ。足に入れた力を一気に解き放つ。峰打ちが絶対条件の戦いだ。
刃を反対に向ける。準備は整った首を目安に刀を振るう。勝利を確信したとき目の前の敵が不気味にニヤつく。
刀は空を切る。確かにいたはずなのに突然消えた。奴の固有魔法だろう。
辺りを見回す。姿はどこにもない。だが噛み合う音だけが残る。早く見つけなければ。
——ドゥーン
姿がなかったはずの背後から機械音が響く。すぐに振り向き氷魔法を盾にするが放たれたであろう光弾が氷を溶かす。このままだと焼かれる。素早く光弾の軌道からそれる。
——ドォーン!!
俺を呼んだ音が轟き暗い岩場の影を照らしてすぐに消え去った。後にはえぐられた地表があった。直撃したら生きていられなさそうだ。
「ちっ外したか。」
ハインは舌打ちをして生存確認をする。兵器からは煙が少しのぼる。刀を握り直して向き直る。まずは奴の固有魔法を見破るべきだろう。
額から汗が滲み出る。お互い一撃で決まるサドンデスは心拍を速くするのに十分だった。
固有魔法の使用を誘発するため刀を振るわず近寄る。案の定ハインの姿はパタリと消えた。勢い余って岩陰から飛び出て考察する。
「氷牙さん!」
月光と共に声が届く。声の方向を見るとライトを付けた陽向がこちらを見ていた。
「陽向!?」
素っ頓狂な声が漏れ出す。待っていろと言ったはずなのに来てしまったらしい。
「ひなた?太陽はまだ出てないぜツアーガードさんよ!」
ハインは陽向と言う言葉に反応を示した。反応からして日中の日向と勘違いをしているようだ。ここで一つの仮説が脳によぎった。
小話
実際にブラックライトで光る花は人工的にあるらしい




