本題を話す
アキトがセコセコと山賊退治に明け暮れている一方で地球に残っていた翔達は『戰』への参戦を調整していた。そんな中で黒鴉が翔の扱いに困っていた。
「浜松ねぇ…正直言うと勝てる選手を当てるのも大変なのよねー」
社長室にて仕事をしながら悩む黒鴉に対して秘書の神華は呆れた顔をしていた。
「社長、浜松を打ち負かす事に執着しないでください。いい勝負すれば観客は喜ぶんですから」
「やるからには勝つのよ!ギャフンと言わせるの!」
意固地な黒鴉に神華は溜め息をついてボソッと意見を呟く。
「じゃあ自分がやればいいのに…」
「それよ!」
黒鴉は自分も強くなりたいと考えていた所だと席を立ち上がる。神華は自分の言ったことに後悔してしまう。
(やばー、これで黒鴉様が負けたら…絶対当たられる!)
黒鴉が燃える一方神華は肩を落とすのであった。
一方、翔は家でまったりしていた。
「仕事が休みだからここ数日暇だな…」
「一緒に家事しましょう!」
黒姫に鼓舞されて翔は重い腰を上げて一緒に家の中を掃除し始める。
「黒鴉に頼んで戰の参戦を願ったけど…なんか嫌な予感がしてきたな」
「姉さんに頼んだんですか?それは…嫌な予感がしますね」
信用の無い黒鴉、妹からすら怪訝な目を向けられるのであった。
翔はせっせと掃除をして普段しない作業に使わない筋肉が使われて背筋がピンとする。
「たまにはこういうのも悪くないな」
「そうですね、小さな幸せというやつですよ」
黒姫の励ましが骨身に染みる翔なのであった。
ーーーーー
後日、戰の調整が終わったと黒鴉から連絡が入り翔と黒姫が神藤のビルへと赴く。
「来たわね、我がライバル!」
「…ライバル?」
キョトンとする翔に指を突き付けて黒鴉は高笑いする。
「光栄に思いなさいちゃんとアンタが地べたに平伏す舞台を用意してあげたのだから!」
「姉さん…翔君は簡単には負けませんよ?」
「フフン、それは有象無象が相手だから…今回はスペシャルな試合!この私が相手よ!」
一瞬の沈黙の後、翔が小首を傾げる。
「本気か?手の内バレてる同士だぞ?」
「本気よ本気、私がアンタに負ける訳ないじゃない!」
黒姫がムッとして姉の言い分にツッコミを入れる。
「姉さん、翔君と本気でやりあったら負けますよ?」
「な、なんだとぅー?!生意気な妹め!浜松の手の内は分かってる。精霊は私の方が多い!つまり手数は私の方が有利!」
「…脳筋ですか?もう少しマトモな思考してください」
流石に論理が破綻していると黒姫は溜め息を漏らして黒鴉の隣で黙っていた神華も「ですよね」と言いたげに溜め息を漏らす。黒鴉は憤慨して翔をもう一度指差す。
「細かい事はいいの!私か浜松か、白黒つけようじゃないの!」
「そ、そうだな…もう遺恨は無しだぞ?」
「私が勝つに決まってるわ!遺恨なんてアンタが残さなきゃいいのよ!」
勝ちを確信している黒鴉に一同大丈夫なのかと不安に思う。試合は一週間後の戰のメインイベント扱いであると黒鴉は堂々と宣戦布告するのであった。
ーーーーー
話は異世界に戻り山賊退治を一通り終えたアキトに戻る。
「本当に全て片付けてきたのか…凄まじいな…」
スライダー将軍はアキトの手腕に驚き傭兵にしとくのは勿体ないと呟く。
「ギフト持ちが居なけりゃこんなもんですよ」
「そうか、ギフト持ちは珍しいからな」
地図に軽くバッテンを描いていき首都周辺は安全になったと確信して言えるようになる。
「所で将軍、犯罪者を異世界送りにしているという噂を耳にしたのだが本当か?」
本題に入りたいアキトは噂を聞いた体で話を切り出す。
「誰から…いや、それは本当だ」
「どこの誰がそんな馬鹿げた事を…送り込まれた方の迷惑とか…いや、考えるわけ無いか」
アキトが呆れた顔をして溜め息をつく。スライダー将軍はアキトの物言いを不思議に思い一体何者なのかと疑いの目を向ける。
「隠しても仕方ない、異世界からの使者だ」
「なんとっ!」
「異界送りを今すぐ辞めてほしいんだけど?」
アキトが毅然とした態度を見せると将軍は若干の困惑を見せるものの険しい表情をする。
「それは…難しい…」
「おいおい、犯罪者を異世界に流されて困るのは向こうさんなんだぜ?あんたらも同じ事をされたら困るだろ?!」
「その通りだが…」
なんとも歯切れの悪い返答にアキトはイライラが積もる。
「皇帝でも何でもいい、俺の話を聞ける奴を出してくれ。それぐらいの仕事はしたつもりだぜ?」
「皇帝は今は不在だ…内戦が終わるまで安息の地にいる」
「ッチ、そういう事かよ。ならさっさとこんな内戦終わらせる必要があるな」
アキトは一人でもやってやると豪語して作戦室を出ようとする。
「ま、待ちたまえ!…君一人に背負わせる訳にはいかない。この書状を前線基地まで届けてくれ」
「いいけども…内容は?」
「兵団を送る。『前線基地は開戦の火蓋を落とせ』だ」
やる気になった帝国にアキトはニヤリとして書状を受け取り前線基地までトンボ返りする事にするのであった。




