切磋琢磨の仲
地球へと帰還した一行、久々の家とベッドだと翔は伸び伸びする。
家を任されていた黒姫が翔達の帰還を出迎える。
「おかえりなさい。平安ファンタジー…ちょっと行ってみたかったです」
「なに?興味あった?気を利かせなさいよね神鳴」
妹が興味を示した事に黒鴉が神鳴を小突く。
「いや、そんなの聞いてないし…」
「じゃあ言いなさいよ」
黒鴉は妹の消極的な所を注意する。黒姫は苦笑いして謝るのだった。
玉藻前は早く味気のあるご飯を沢山食べたいと主張し全員が腹を抑えて味気ない和食ばかりだったと口々に愚痴を零し黒姫が食事の準備をするのであった。
ーーーーー
アキトは一人先に神楽の世界の魔法学院に戻り子守をしている妻達に帰宅の挨拶をする。
神楽がアキトの帰還に歓喜してハグしてくる。
「おかえりなさーい!」
白けた目を向けるトウコと若干神楽を羨ましそうにするシュメイラ。困惑するレイン。
「はいはい、ただいま。って言ってもまたすぐに出る可能性が高いんだが」
アキトがやんわりと神楽を離しながら説明すると神楽は不服そうに口を尖らせる。
「えー!?またー?どうしてよー」
「救世とは違ってちょっと折檻しないといけない世界が幾つか出て来てな…」
折檻と聞いて何事かと怪訝そうな目をする面々。アキトは一応の説明をする。
「流刑っつって犯罪者を外の世界に放逐する馬鹿がいるらしくてな。神鳴にも調査してもらってすぐにでもそこに行って調査と是正をさせる予定」
「犯罪者の放逐は良くないわね…救世の一環なら仕方ないわね」
神楽を始め皆納得する。アキトは申し訳ないと子育てに専念する妻達に再度謝るのであった。
ーーーーー
一夜明けて、翔はアキトに呼び出されて食堂に来ていた。
「話って何ですか?」
「なぁに、ちょっとな。今のところ救世の旅はないから自己鍛錬して強くなっとけって話だ」
「え?一緒に行けないんですか?」
意外な事を言うアキトに翔は面食らう。アキトは頬を掻いて今回はちょっと血なまぐさいことになりえるからとやんわりと遠ざける。
「血なまぐさいって…どういう事ですか?」
「そのまんまだ。向こうでちょっと荒事になるかもしれない」
覚悟の有無ではなく単純に危険だから送れないと言われて翔は少し不満気な顔をする。
「俺だって戦えますよ?覚悟とか抜きにして実力不足と言われてるなら心外です」
「じゃあお前さん異世界で警察とかに喧嘩売れるか?」
「…そ、それとこれとは…ちょっと違うんじゃないですか?」
違うかどうかで言われると似たようなものだとアキトはハッキリ伝える。
「最悪相手方の治安組織とバチバチにやり合うんだぞ?喧嘩じゃねぇ、マジな戦いだ。その覚悟や責任までお前に背負わせるには早いって話だ」
「う…そう言われると確かに…責任重大ですね…」
「あくまでも交渉決裂した場合の話だが…向こうとしては受け入れ難い話だろうからな」
アキトは笑っているが相当な覚悟と自信が無ければこんな任務受け入れられないと翔は苦い顔をする。
「なんだその顔は、気にするな。元々は俺の仕事だしな。お前らには荷が重い話だろうし」
少しだけ馬鹿にされているような気がして翔は苦い顔を続けるが実力不足と経験の差は認めざるおえないと自分を不甲斐なく思うのであった。
「ま、戰にでも出て経験を溜めるんだわな」
「俺、公認選手じゃないですよ?」
「関係ねぇよ。黒鴉にでも打診すれば一発オーケーだろ?気にせずやってけ」
翔は別に黒鴉の所属でも無いんだよなぁと溜め息をつく。アキトは早ければ今日にでも出発するからさっさと決めろよと翔の尻に火を付けるのであった。
ーーーーー
「それで?特別選手枠を作れと…?」
黒鴉は怪訝そうに翔の話を聞いて口を尖らせる。
「異世界合同とも覚醒者の集いとも違うからなぁ、個人として…」
「ふーん、まぁいいけど。アンタが出たがるなんてね」
「実力に磨きを掛けて自信を付けないと…!」
黒鴉は翔の心境の変化にニヤニヤしつつ自分も頑張らないとと意識を改める。
「決めたわ、私も仕事がてらに少し戰で特訓するわ」
「え?黒鴉も…?」
「当たり前でしょ!アンタなんかに負けてられないわ!救世主としても選手としても!」
いつの間にか救世の仕事は自分の責任でもあると言い出す黒鴉に翔は唖然としてしまう。
「何でそんなに俺に対して敵対心的なものを向けてくるんだよ」
「なんでかしらね?妹の旦那だから?まぁいいじゃない切磋琢磨していく間柄って大事だと思わない?」
納得のいく言い訳を受けて翔は「そうだな」と頷くしかなかったのであった。
ーーーーー
神鳴はアキトの元にやって来ていた。
「準備大丈夫?本当に一人で行くの?」
「まぁな、今回は流石に今の翔達には荷が重いからな」
翔に説明した事を荷が重いの一言で片付けるアキトに対して神鳴はそういうものなのかと小さく溜め息をつく。
「貴方の心配するつもりはないんだけど…無茶しないでよね?」
「向こうの出方次第だな」
神鳴はやれやれと肩を竦めて異世界へのゲートを開くのであった。




