天変
「天変…ですか」
帰宅したアキトの話を聞いて翔は唸ってしまう。
黒鴉は呆れたように肩を竦める。
「少し時勢に都合良い事言ってるわね…来週でしょ?どうせ何も起きないわよ」
「一応警戒すべきじゃないか?」
「祭りを開いて出張中の武士を集める。武威を示して何事も無かった事になるわよ。浜松、アンタは警戒し過ぎなのよ」
厳しい意見を出す黒鴉にメンバーは難しい顔をする。
「でもいつか敵は来る、それがその時じゃないとは言えないよな」
「…そうね」
反論を受けて黒鴉は腕組みして小さく溜め息をつく。玉藻前が二人を宥める。
「まあまあ、取り敢えず注意する。それでエエんやない?ウチらはやれる事をやる。そうやろ?」
二人は黙って頷いて一週間後に備えるのであった。
早馬が走り一週間後の祭りに沢山の地方武士が呼び出される。
翔達は祭りに合わせて何か催し物をするのかと四ノ宮から確認が来る。
「前に勝手に葛之葉さんたち呼んだ件で警戒されてる…」
翔が苦笑いして報告するとアキトが冷静に答えを出す。
「当たり前だな…取り敢えず俺達は何もやる必要なし!祭りの警邏をするって事で」
「あはは、ですよね」
準備が着々と進む中で祭りまで残り一日、地方へ出向している武士達の一部が招待を受けて都へ戻ってくる。
義朝が父の為義と出会って早速皮肉を口にする。
「都へ早い出戻りだな親父」
「うるせぇ、皇の招待じゃなきゃ来ねえよ!」
為義はぶっきらぼうに言い放ちさっさと家に帰れと息子を足蹴にする。
「親父は?」
「先に挨拶してぇ奴がいる」
アキトに直接会いに武家屋敷を訪ねてくる。対応しに出た翔を睨みつけて威圧する。
「よぉ、アキト殿は?」
「え?あー、ちょっと待ってて下さい」
慌てた様子で翔はアキトを呼び出す。
「あ、為義殿。地方に行ってるって聞きましたが…」
「皇の招待なら受けなきゃな。ついでにお礼参りだ」
「ハハッ、そりゃどうも」
力強く威圧してくる為義だがアキトは軽くあしらうように笑って流す。
「で、お前はなんでこんな祭りをやるか知ってんのか?」
本題に入られてアキトはチラッと外を見て為義を中に招き入れる。そして景明の占いによる天変の時に合わせて祭りをすると聞いて合点がいったように頷く。
「なるほどな、政変に合わせた祭りなら政敵の武士まで呼ぶ必要は無いはずと思ったが…天変か」
「へぇ、真に受けるんだな」
「当たり前だ。景明殿の為人を俺はよく知っている。雇い主の都合良い事言う風見鶏なんかじゃねぇ…何かあると言うなら本気だぜ」
翔達はその風見鶏だと馬鹿にしていたが冗談やそういう事じゃないと言われてゴクリと息を飲む。
為義は腕組みして言葉を反芻する。
「天変か…嵐とかなら祭りなんて言うはずないし天候とは違うか?…なぜ武士を集める…?」
ふと以前やって来た大怪獣について思い返してまさかとニヤニヤしているアキトを見る。
「来るのか?ドデカいヤツが…!」
「かもな、その時は力を合わせようぜ」
翔達も大きく頷いてそれが明日に迫っている事に緊張した面持ちをするのだった。
ーーーーー
祭り当日、武士達が闊歩して名目上は新しい皇を迎えて讃えるお祭りが開催される。
のほほんとしている人々や何も知らない武士を置いて一部の人はピリピリとした空気を纏って警邏を行なっていた。
頼賢が兄の義朝と話をしていた。
「父上の言っていた天変に備えろというのは…事実でしょうか?」
「お前、我が家は何も聞かされてないんだな。平良氏はひりついた空気だと言うのに…」
「うぐっ、それは…敗北した藤村氏の侍集団には…」
この様子だと老い先は短いなと義朝は頼賢に溜め息をつく。その横で更に弟の為朝は大笑いする。
「兄者達は当主の器としては未完だからな!長兄が戻ればズバッと解決なんだがな!」
「ッチ、煽てても何も無いぞ」
息子達のやり取りを見て為義は次男で現当主の水原義賢と真剣に話し合う。
「扱いが軽いなら主君を鞍替えする事も視野に入れろ?凝り固まっても仕方ねぇぞ?」
「そうですね、父上の言う通りです。いつまでも燻ぶる水原ではありません!」
「この天変とやらで天下を見極めようじゃねえか」
肩を叩き息子を激励する為義であった。
日の出と共に始まった祭りは順調に進み飲めや踊れやのどんちゃん騒ぎであった。
翔達は警邏作業で都の見回りを行なっていた。
警戒ルート上で再開したアキトに対して翔は不安を吐露する。
「一体何が来るんでしょうか…前回の大怪獣騒ぎは外されちゃいましたし…」
「今回も外してやりたかったよ、正体掴めない相手とは戦わせたくない。守りきれる自信がないからな」
「力不足…ですか」
どちらかというと責任持てないとアキトは苦笑いして何を今更と翔は呆れ返る。翔は自分達だって戦えると口を尖らせて批判しようとする。
そんな中で空を飛ぶ未確認飛行体。円盤型のそれは完全に異質であり世界の外のそれであった。
「………」
流石の展開に唖然呆然の二人であったが侵略者にハッとして追い掛けるのであった。




