凶兆
長引いた戦争は終わり藤村氏の敗北が決まり皇は予定通り長男が継ぐこととなる。
戦争で貢献した平良氏は躍進し藤村氏は没落する。そして四ノ宮も少しは名を馳せることが出来た。
終戦し野武士達も解散し余暇を満喫する一行は戦争を振り返っていた。
「ちょっとやり過ぎたかな…?」
アキトがやってしまった事を今更後悔し始める。
「今更過ぎるわね、まぁ本陣が落ちた後どのみち水原の一軍はこっちを打ち破れなかった…それが答えよ」
黒鴉の言葉になるほどとアキトも納得する。
玉藻前は戦争の中でも起こらなかった世界の危機について疑問に思う。
「んで、世界の危機はどこにあるんや?」
「それは分からない」
結局分からないという話に一同溜め息が漏れる。
そんな訳もわからない世界の危機、ハリスにはピンと来ない顔をしていた。
「政変は世界の危機じゃないのかい?」
「違うな、異世界からの脅威が俺達の本来対応すべき事象だからな」
「うぐ…自分は世界の危機足り得ない実力だったんだよな…」
ハリスは悔しそうにするが翔はハリスのような境遇の人が増えればそれはそれで非常に危険であると答える。
「犯罪者を異世界に追放だなんてそれはそれで危険な事なんですよ?」
「じ、自分は冤罪で…」
「そこは関係無いです」
やり取りを聞いてアキトは論点がズレそうだと軌道修正を入れる。
「取り敢えず現在調査中、分かり次第そっちの事は対処する」
「すみません旦那、ご迷惑お掛けします」
「しかしまぁ藤村氏も大人しく敗北を認めたよな…」
アキトはふと世界情勢に立ち返って気になる事を呟いた。黒鴉も気になっていたようでアキトの意見に賛同する。
「ゴネても仕方ないとはいえ多少強引にでも話を都合良い方へ持っていくと思ってたわ。なんなら貴族達を寝返らせる事も出来たはず」
懸念する二人とは違い翔は少し楽観的に捉えていた。
「下手に事を荒立てない方が良いって判断したんじゃないですか?今でも貴族としての地位は高いわけですし」
「それなら戦争になる前に身を引いて欲しかったもんだ」
アキトはゲラゲラ笑って見せる。全員その言葉に賛同するのであった。
翌日、落ち着きを取り戻した都と宮中は普段通りの空気になり政務も執り行われる。
アキトとハリスが頼嗣の護衛をして宮中まで見送ると水原の息子の一人、頼賢が現れる。気不味そうに挨拶をしてくる頼賢にアキトは問題無いと笑顔で肩を叩いて挨拶を返す。
「互いに死ななかった事を讃え合おう。昨日の敵は今日の友さ」
「すみません、なんか色々と…」
「為義殿は…?」
頼賢はハッとして「父は責任を取って…」と腹切りを示唆する物言いをしてアキトは同情の目を向ける。
「そうか、大変だったな」
「あ、いえ…地方に飛ばされて…」
「あー、そっち?手紙でも送ろうかな」
ブチギレる為義の顔を思い浮かべて頼賢は苦笑いして止めといたほうがいいと答えるのだった。
ハリスはふと藤村氏が普通に宮中へ出られる事を不思議に思う。
「反乱とまでは行かずとも政敵になった藤村を受け入れるなんて…懐が深いんだな」
「一度は敵になったとは言え藤村の影響力は未だに強いんですよ、簡単に排除は出来ないといった所です」
頼賢はキッパリと言い切り今の所は前と変わらない運営が続くと話すのだった。
「結果、水原だけが損した感じだな…」
「あはは、兄達も同じ様な不満を吐露してました」
三人は団子を食べて解散しアキトだけが宮中前に残る。
(まったく、なんの為の戦争だったのやら…)
内心愚痴をついていると陰陽師の安部の一団が宮中へと入っていくのを見つける。
(なるほど、藤村氏には陰陽団が居たな…簡単に切れない訳だ…)
このご時世には占いによる祭事も重要でありそれを執り行う安部氏も簡単に排除は出来ないということでもあった。武威は示せずとも藤村氏が勢いのある事の証明でもあった。
アキトはどんな祭事をしているのか気になって宮中の方へ歩み寄る。
「これは天変来たれり!」
不穏な叫びが聞こえてくる。宮中のざわつきも聞こえてくる。
(政変が収まりすぐにか?天変というか既に大怪獣がやってきてただろうに…)
アキトは都合の良い話に苦笑いしてしまうが占いとは得てしてそういう物だと割り切りもう少し聞き耳を立てることにする。
「天は乱れ、地は荒れ、混乱が人を襲うという卦が出ています」
かなりの凶兆、それに対してどう対応するのか新しい皇の手腕が試されていた。
アキトは流石に露骨過ぎるだろうと怪しく思うが自分達が探し求める世界の危機がこの占いにぶち当たるとするならあり得ないこともないと考え込んでしまう。
皇も試されていると知り景明に尋ねる。
「して、凶兆はいつやってくる」
「七日後にございます…」
「わかった。手を打とう」
アキト達も対応の準備を整えようと思い立つ。
政が終わり頼嗣が血相を変えてアキトに先程のことを話す。
「宮中の外まで聞こえてましたよ」
「う、うむ…一大事であるぞ!」
頼嗣は皇が七日後に向けて祭りを行う等と言い出したとして大慌てな様子で屋敷へ帰るのであった。




