長引く戦乱
戦況は平良の部隊が出てきた事で拮抗することになる。
四ノ宮の様子を見に平良の武士達がやってくる。
「負傷兵は居るようだが余裕がある様だな」
「まあな、こう見えて鍛えてるからな」
アキトは自慢気な顔をする。平良の部隊もこの様子なら援軍の必要は無さそうだと判断する。
「引き続き防衛を頼む」
「任せとけ」
とは言ったものの野武士達にも疲れは出ていて休憩出来る今を大事にしないととアキトは頭を掻く。
翔達は相変わらずのタフさを持っているが何時まで戦争が続くか分からない今休める内に休んどけと注意する。
「まだまだ戦えますよ」
翔は元気をアピールするが黒鴉に咎められる。
「休める時に休めって言われてるのよ、根を詰めるのはアンタの良くない所よ?」
「うぐ、そう言われると…」
注意をされて翔は腰を下ろして休憩の姿勢に入る。
暫く敵も攻めてくる様子は無く平良と水原の戦闘が続いている様子だった。
「どっちが勝つと思いますか?」
「分からん、どっちも時流を見ると強いからな…」
引けを取らない実力伯仲の両軍、そんな中で四ノ宮に進軍の指示がやってくる。
頼永は手の空いた軍団として当然の事だと頷いてアキトに進軍の合図を送る。
「マジ?陣形が乱れるが…というか俺らが前に出たら無双しちまう…」
「ど、どうするんですか?」
翔も同じ意見で二人は困り顔になるが玉藻前が「やったれ」と親指立ててハリスも戦争をさっさと終わらせようとアキトに進言する。
「とはいえ俺らが前に出るのは…よし、野武士に功を取らせよう」
野武士の使い所だと前に野武士を配置して進軍を開始する。
水原も平良以外の小物が前に出てきた事に呆気に取られるがそれが四ノ宮の兵団と知り為義が警戒するように伝える。
「アキト殿か、奴は強えぞ!兵士を削れ!」
頼賢からの報告を受けていた為義の指示で将の首より先頭の兵団を倒す事を指示する。
ワーッと為義の本隊とぶつかり合う事になる。
(うわ、為義殿か…ちょうどよく削れたら撤退しよ…)
兵団同士がぶつかり合う中でアキト目掛けて矢が飛んできてアキトは冷静に氷の礫で相殺する。
「いい鷹の目した奴がいるな…」
水原の部隊に目の良い射手がいるとアキトは褒めつつ面倒臭そうにする。
「防がれたか…親父の言う通りだな…アイツは強え」
「為朝でも当たらねえか…我が家一の射手なのにな」
「っは、名折れだな…!」
為朝と呼ばれた男はバシュッと更に矢を放ち四ノ宮の兵団先頭の野武士の額を撃ち抜く。
アキトは盾をしっかり構えるように喝を入れる。
「盾を構えても撃ち抜いて見せるぜ!」
為朝の弓の弦がギリギリと音を立てて強弓の一矢が放たれて矢盾をぶち抜き一人また射貫く。
「盾ごと…化け物かよ…!」
野武士達はその威力に恐れ慄く。
「士気が下がってるぜ?!親父!やるなら今だ!」
「頼賢に功を取らせてやりたかったが奴は前線に出しちまったからな、俺が貰ってやるぜ!」
為義が刀を抜いて兵士達に檄を飛ばし士気の下がったアキトの部隊を潰しに掛かる。
ヒャッハーと勢いのある水原の兵士達に飲まれてしまう。アキトは素早く冷静に撤退の指示を出す。
「っち、兵が保たない!引けー!」
アキトの指示に兵士達は踵を返す。
「逃がすかー!東雲ー!首寄越せー!」
「俺そんなに恨まれる事をしたか!?」
為義の追撃にアキトは目を丸くして一騎打ちに応じる。
「殿も大変だぜ…」
「テメェの首は頂くぜー!」
「血の気が濃いぞ為義殿!」
アキトの注意など聞き入れず武器を勢い良く振り回し為義は武勇を発揮する。だが相手が悪かった。アキトは冷静に武器を的確な角度に合わせて為義の刀を折る。こうして殿を努める翔達は最小限の兵士の武具を破壊して撤退する。
「っちぃ…逃がしちまったか…」
刀を見事に折られた為義は悔しそうに折れた武器を見つめてアキトの実力の高さを評価する。
「親父、追撃するか?」
「いやいい、今は平良に集中だ」
既に兵士を整え直した水原の一軍はアキト達よりも平良との一戦を大事にするように伝えるのであった。
頼永の元へ帰還した一行は疲弊し士気の下がった兵士達の負傷の治療に当たる事にする。
「むぅ、やはり水原の一軍は強いか…」
功を上げれなかったことに頼永は少し焦りの表情を見せる。アキトは心配ないと頼永を安心させようとする。
「しかし攻めてしまった以上は藤村氏との対立はより深いものとなってしまったな…」
「それは…そうかもしれませんね」
戦争後を見越している頼永の言葉にアキトも難しい顔をする。どのみち負傷兵が多くなり動けない今出来ることは平良が勝つ事を祈る事だけだと前向きに語るアキトに頼永は弱々しく頷くのであった。
「しかし為義殿も子沢山だな」
「何を言うか、子供を沢山持つものは親として当然であろう?」
「んー、そういうものか?頼永殿も頼嗣殿しか…」
頼永は子供は地方にいるとフンと鼻息荒くして腕組みする。アキトは頬を掻いて自分も子沢山なのを忘れて現代人の感覚で物を考えていたと笑うのであった。




