戦のとき
戦地で開戦を待つ一行は兵士達を統括するアキトを置いて戦争なんて何すればいいのかと不安を吐露していた。
「俺達は何すれば良いんだろうか…」
「アキトが言うには防衛だけに徹しろって…」
黒鴉も攻勢に出るのは躊躇って難しい顔をしていた。
玉藻前はシャドウボクシングして攻めても構わないという姿勢を見せる。
「やったるでー!」
「やっちゃダメなのよ。私達は外の存在なんだから無双しちゃダメなの」
そういえばそうだったと玉藻前はしょんぼりする。
ハリスは無双だとか凄い自信が聞こえてきて困惑していた。
「あの…皆さん場馴れしてる感じですか?」
「まあそれなりに自分達の世界でも異世界でも修羅場を越えてきてるよな?」
翔が答えると黒鴉も玉藻前もウンウンと頷いてハリスはドン引きするのであった。
アキトは野武士上がりの兵士達に作戦を伝達する。
「今回は我々は防衛戦、やってくる敵を返り討ちにすればいい」
「なんだ前には出ないのか?」
「陣形を維持するのが大事だ。翼の末端として敵を通さないのが肝心要ってやつだ」
仲間の脇を固めてしっかりとした防衛ラインを築くのが仕事なのだとアキトの説明を聞いて兵士達は任せておけと不揃いな武器を掲げるのだった。
そろそろ開戦の時刻だと頼永が陣頭に立ち部隊を鼓舞する。
「大将は無理せず後方で指揮を頼みますよ」
アキトの注意を受けて頼永は少ししょんぼりとした顔する。
「こういう所で目立ってみたかった…」
年寄りなのに子供じみたこと言っているのを見て苦笑いしてしまう。怪我されたら困るとアキトは必死なアピールをする。
「怪我か…確かに格好つけてそれは格好が付かないというものだな…大人しく下がるとしよう」
頼永が下がってくれたお陰でアキトはやりやすくなったと守りに割くリソースが減った事に安堵する。
茶番も終わり遠くからワーッと藤村氏の兵団の声が聞こえてきて全員の身が引き締まる。
「鶴翼の陣を取っている我々にとって最初に戦火の口火を切る事になる。長期戦も覚悟しろよ」
「応!」
兵士達も気合を入れて刀と木盾をガッシリと構える。
突如としてヒュンヒュンと矢がとんできてアキトが氷を展開してガードを固める。
「来るぞ!」
矢が通らないならばと氷の壁を破壊し水原の武士達が突入してくる。
「我が名は水原頼賢!御首頂戴致す!」
「水原が相手か!威勢が良いな!此処はそう簡単に通させはしないぞ!東雲秋斗!参る!」
茶番を演じるようにアキトも名乗り返して兵士達に一斉に掛かるように指示して戦闘を開始する。
ワッと兵団がぶつかり合いアキトと頼賢は刀を抜いて剣戟を交える。
「頼賢押し通る!」
「少数だからと舐めるなよ!」
殺さぬ様に翔達は無双の勢いで兵団の武具を破壊し蹴散らしいきアキトも頼賢の剣筋を褒めつつ弾き返す。
「まだまだ甘いな、此処は絶対に通させないぜ!」
「ぐっ、強い!」
将は殺さないようにアキトは手を抜いて指導するように剣戟を行う。
「引き際ってものを読み違えるなよ若人」
「私も兄達のように!負けられないのだ!」
プライドだけは高いようだが実力差は明確で部隊もボロボロにされてしまっていた。
「重要拠点の攻略を任されたというのに!」
苦虫を噛み潰したように頼賢は悔しそうにするが周りの兵士達が戦えない程に疲弊していると気付くと意外と冷静に撤退の指示を出すのであった。
「ここは引く!覚えていろ!」
「よし、まずは一勝だ!勝ち鬨を上げろ!」
まずは一戦勝利を収めたと負傷した兵士達を下げながら沸き立つ一団。
「エイエイオー!」
楽勝とは行かなかったが重要拠点の防衛には成功したと頼永も大きく頷く。
「皆のもの!この調子で戦乱を乗り越えるぞ!」
士気が高まっていく四ノ宮の一団、他の戦況はどうあれ自分達の役割はこなすのであった。
続く敵の二陣がやってくる。
「やっちまえー!」
「野武士の一団か、ちゃんと追い返すぞ!」
勢いのある野武士の一団が斬り込んできてアキトは手心は加えるように追い返すと表現して一戦を交えるのであった。
開戦後数分で野武士達は異世界の戦士である翔達にボロボロにされる。
「な、なんて奴らだ!引け!引けー!」
野武士達は数では勝てない相手だと悟るといち早く撤退していくのだった。
アキト達の視点では戦況は硬直しているように見えたがもう片方の戦地ではそうも言っていられない様子であった。
関東から帰って来ていた坂東武者達を従えた水原の嫡男である義朝が無双の働きをして片翼を破っていたのであった。
為義は息子達の活躍に高笑いしていた。
「ハッハッハ、所詮は野武士。俺達水原の武勇の前じゃ赤子同然!」
しかしもう片翼の突破に失敗したと聞いて高笑いが止む。
「父上、申し訳ありません四ノ宮の突破に失敗致しました…」
「何?四ノ宮だと…?さてはアキト殿だな?…いや、生きて帰った事を良かったと思え、奴は強い…功を焦るな」
どうせ片翼を撃ち破ればあとは消化試合だと水原は高を括っていたが平良の一団が動き出した事で戦況は分からなくなるのであった。




