争乱起こる
それから三日後、病に伏していた現皇の訃報が届く。思いのほかの急逝に貴族達に衝撃が走る。
喪に服す人々を置いて貴族達は動き出す。次期皇候補は二人、藤村氏の推す年端も行かない次男。
他の貴族達は藤村氏の強硬な姿勢に反対するものも居り長男を推す派閥とで宮中は二分される。
翔達が所属する四ノ宮は長男派で通す事になる。
「政治も分からぬ幼子を推すなど藤村殿は何を考えておるのだ!」
頼永は傀儡政権を作ろうとする藤村氏に真っ向から反対をする事になりアキトは話を聞いて色々と考えを巡らせる。
「やっぱりと言うか、内戦は避けられない…か」
「こちらには平良氏がいる。戦争になるにしても武士がする事になるだろう」
そんな事になれば武士が権力を持つことになるとアキトは言葉が口から出そうになるがそれがこの先の道理ならばなるようになれと溜め息を漏らすのであった。
武家屋敷に戻り情勢について話をする。
「酷い話だ、喪に服す暇も無く戦争の話なんて…」
翔が呆れと不安の混じった声色で嘆くが黒鴉はドライな感じでそれを批判する。
「一般人的思考ね、病に伏したという報せを受けた時から全て画策された事でしょうに…」
「皇の訃報に悲しむ事なくすぐに政治の話をするのもちょっとやり過ぎな感じはするがな」
アキトは翔の意見に賛同しつつ自分達はどう動くかと思い悩んでいた。
「結局は人と人の争い、俺達が出しゃばる事じゃないからな…」
「なんや?介入せんのか」
「外敵が出てくることはないだろうからな」
結局は外界の脅威の有無で決まるとアキトは腕組して答える。四人はそれでいいがハリスは四人の話に首を傾げる。
「四ノ宮の者として参戦しないんですかい?」
「俺達一人一人が一騎当千の猛者だからさ…」
アキトが苦笑いして答える。
「凄い自信家だ…」
「半分冗談だ。俺達は外界の敵と戦う為に来た救世主だからな…現地民と戦争ってのはちょーっとな?」
「きゅ、救世主…?」
ピンと来ないどころか困惑する言い訳にハリスは引き攣った顔をするのだった。
「でも四ノ宮として私兵を出さなきゃ筋が立たないってもんじゃないですか?」
「それもそうなんだよな…だから困ってる」
力を誇示して歴史に介入するべきなのか頭を抱えたくなるアキトに仲間達も頷いて難しい顔をする。
「旦那達も大変ですねぇ…自分は必要なら雇用主の命令には従う主義なんで…」
「全力出さなきゃ怒られないか…?」
「お、俺に聞かないで下さいよー!」
そっちの事情なんて知るかと言いたげにハリスは嘆くのだった。
ーーーーー
皇の訃報を聞いて政変の兆しに動き出したのは都だけでは無かった。各地の豪族達、野武士達もそれぞれの思惑に従い挙兵し始めていた。
その報告が届き貴族達と豪族の繋がりを作り始めて私兵の用意を整える。
四ノ宮も私兵の確保に動いていた。頼嗣がアキトとその事について相談を持ちかける。
「おいおいまさか野武士を雇い入れるのか?」
「そのつもりだ。君達だけが争いに参戦するのは我々の名声にも響くだろう」
たった五人の私兵などお笑い種であると頼嗣は説明する。
アキトは私兵が動くなら自分達はそれを隠れ蓑に出来るなと小さく頷く。しかし荒くれ者を都に入れるのはいかがなものかと疑問にも思う。
頼嗣はそこ疑問を感じ取ったのか聞いてもいないのに答える。
「安心したまえ、都を戦場にはしないさ。それよりも相手は…いや、今更怖気付いても仕方ないな。やると決めたんだ」
大乱は避けられないものとなり準備は着々と進められるのであった。
戦乱の予感は下々の民にも伝わっていてコソコソと噂話が広まる。意外と情報とはそういう所に転がっているもので団子を食べながらアキトは噂話を盗み聞きする。
「関東地方の武士達は藤村氏に付くそうだ。水原の倅が指揮を執ってるらしい」
「水原氏も意外と大きくなったもんだな。こりゃ平良一門も危ういんじゃねぇか?」
「そうでもないぞ貴族達は野武士や豪族を雇い入れてるらしい。連合軍を作ってるって話だ」
アキトは内心「正解」と答えつつ団子を頬張る。
「だけど烏合の衆っていうだろ?」
「そうだな。数だけじゃ歴戦の武士には勝てねえよな」
今度は「それもそう」と内心で同意する。ターニングポイントはやはり自分達かとアキトは考える。
「水原と平良…どちらが勝つのやら…」
次期皇がどうなるだとか貴族の優位性がどうなるとかよりも武士の戦の結末の方が気になっている民草を見て時代が大きく動こうとしている事に代わりはないと実感するアキトであった。
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野武士を集めた四ノ宮は他の貴族の部隊と共に都の外の山野に布陣を始める。
集まったのは兵二百余り、その規模を見て黒鴉は口を尖らせる。
「少ないわね。もっと動員されるものと思ってたわ」
「数千とか一万とか…」
翔も想像していた数字の違いにポカンとする。
「誇張されてる数字だな、そんなに動員出来るもんじゃねえよ」
「藤村氏は個人で数千は用意してるわよ?」
「そりゃお金の掛け具合が違うからな」
兎にも角にも陣形の翼端を担う事となる四ノ宮であった。




