新人陰陽師
不気味な男に見える歴史に不釣り合いな格好のアキトがニコニコしながら近寄ってきてちゃんと僧兵の服装に着替えている異界から来た男は震えながら後退る。
「な、なんだよアンタ!こっちはもう降伏して…」
「おいおい、バレてないと思ってるのか?」
他の人とは違う魔力の流れを読み取って見分けたアキトは男を睨んで凄む。
「何が…何なんだよ?」
動揺した様子を見せる男、アキトは仕方なく一から説明する。
「お前、この世界の人間じゃないだろ?」
「!?…それはアンタこそ…ハッ!」
異世界等というものを認知している存在だと自分から口にしてしまい少なくとも特殊な出であることはアキトに伝わる。
ニヤニヤした表情のアキトに男は若干怒りの混じった声色になる。
「何の用だよ?」
「せっかく異世界に来たのに力を思う存分振るえなくて悔しいと思ってるか?」
まるで悪魔の囁きのように相手の痛い所をチクッと突く。
「だ、だったら何だって言うんだよ?」
「運が良かったな。世界のバランスを崩す程の力なら俺が粛清してた所だ」
恐ろしい文言に男は引き攣った顔をする。
「俺を殺すってのかよ!?」
「どうしよっかなー」
二人がそんなやり取りをしていると僧兵達の拘束を終えた忠盛がやってくる。
「残りはそこのお前だ。打ち首が嫌なら…」
「か、勘弁してくれ!俺はまだ死にたくねぇよ!」
アキトは忠盛に自前の捕縛縄を見せて俺がやると伝えると信用して下がっていく。捕縛縄で男の胴体をグルっと縛って腕も拘束しながら質問する。
「お前魔術はどの程度出来る?」
「下級呪文ならある程度は…」
「こんな乱に参加せずに陰陽師やってれば少しは名も売れただろうに…」
アキトの言葉に男は陰陽師とは何かと尋ねる。
「あ?陰陽師は主の為に呪いや占いする呪術の専門家だ。召喚術と魔術が使えるならそっちの道を模索した方が良かったな」
「今からでもやり直せますかね…?」
縄に縛られこれからどんな処遇が来るか分からない状況で一筋の希望に縋ろうとする。
アキトは少し考えてから名前を尋ねる。
「お前、名前は?」
「ハリスです」
「仕方ねぇな、助命嘆願出してやる。今回だけだぞ?まだ悪さするようなら俺が斬るからな?」
こうして僧兵達の大量粛清の中でハリスをアキトは将来有望な陰陽師として助命嘆願をする事になるのであった。
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「じゃあ面倒はお前ン所でみろ」
既に陰陽師の安部氏を抱える藤村氏所属の為義がアキトにぶっきらぼうにハリスを押し付けてくる。他の貴族達も出自も分からぬ男を陰陽師になど出来るかと言いたげに煙たがっていたようで結局翔達の武家屋敷で引き取る事となる。
「というわけで新人の陰陽師、ハリス君だ」
アキトは明るくハリスを仲間達に紹介するが仲間達は白けた顔をする。
「誰よそれ…」
「アキトさん?何したんです?」
一日外をほっつき歩いて戦争を見てきたなんてアキトも軽々しく言えなくて親指立ててスカウトしてきたと答える。
「スカウトねぇ…ハリスって異人さんな名前だけど?異界人?」
「ああ、そうだ。ちょっとワケありなんだよ」
ハリスは緊張した様子で頭を下げて挨拶する。
「ハリスです。よ、宜しくお願いします」
ハリスに続いて翔達も自己紹介する。
「アキトの旦那、皆異界人なんですか?」
「そうだぞ。お前みたいな悪さしかねない異界の存在を取り締まってるんだ。皆お前より強いぞ」
「はへぇ…」
気の抜けた声を漏らすハリスに黒鴉は早速雑用を押し付けようとする。
「じゃあ早速掃除とかしてもらおうかしら?」
翔が流石にそれは横暴だぞと注意する。
「黒鴉、掃除や庭の草むしりは持ち回りでやるんだ。一人に押しつけるんじゃない」
「ちょっとぐらいいいじゃない」
「良くない。あんまり迷惑掛けるなって」
相変わらずな二人に玉藻前はやれやれと首を振って陰陽師という肩書きに口を尖らせてハリスを見た後アキトに質問する。
「実力はいかほどなん?」
「中の下、戦力としては期待するな」
「…ダメやん」
ハリスにグサッと言葉のトゲが刺さる。
「陰陽師の仕事は力を誇示するものじゃないからな…数日は頼永様や頼嗣様の占いとかやらせるさ」
そうアキトは話を締めるのであった。
翌日からハリスは陰陽師として学びながら色々と四ノ宮に奉公する。
「旦那ぁ異界の魔術を呪いや占いなんて誤魔化して本当にやってけるんでしょうか?」
「数多の世界を旅してきた俺から言わせてみたらペテンも生きる術だ。そのうち流派も作ってけ」
大胆な事を言うアキトにハリスは本当にこの人達に付いていっていいのかと不安になるが今はやれる事をやると前向きにお仕事に励むのであった。
ハリスが不在の中で黒鴉はアキトに疑問を投げ掛ける。
「あの男が世界の危機って事は?」
「無いな、異界由来だが影響は無だ。俺が居なかったら今頃戦場で討ち死にしてたさ」
「ふーん…アンタ勝手に戦場に行ってたんだ?私達は復興で頑張ってるってのに…」
アキトは口を滑らせて黒鴉に仕事をしろと追い掛け回されるのであった。




