武士の戦
都が仮初めの平和を謳歌している裏で戦争の準備が刻一刻と進む。水原氏も平良氏も兵団を整え終えて後は開戦を待つだけとなっていた。
四ノ宮は参戦出来ない事を歯痒く思っていた。
「アキト殿、我々はどうするべきか…大妖魔も飛影山も…水原と平良ばかり…」
頼嗣に相談されたアキトは少し考えてから答える。
「今は政変の時流が主、変に目立ち粛清を受けるより流れに身を任せる雌伏の時ってものでしょう」
「政変…なぜその事を?」
「こう見えて耳は良いんですよ。皇が病に伏しているらしいと噂を耳にしてね」
アキトは口に指を当てて秘密ねと伝える。
頼嗣は少し考えた後にアキトの言葉には一理あると認めてどの派閥に属するか慎重に選択する事とするのであった。
武家屋敷にて一人になったアキトは仕事が無いことを良いことに都の武士と武装僧兵の戦争の様子でも見て来ようかなと興味本位で都を出るのであった。
「戦争の様子でも確認してくるかなぁー」
軽い気持ちでいそいそと都から南方の飛影山へ向かう。
コソコソと戦場近くの山に登ってそっと合戦を見守る。
(始まったばかりだな。戦線は…流石都の武士、経験の差が出ているな)
僧兵の長柄の武器でリーチの有利を取っていたがそれを物ともしない訓練された侍上がりの武士達は死を恐れず斬り込んでいく。
戦線を維持するように僧兵も動いているが水原氏の一団が深く斬り込んでいく。
(平良は冷静、それとは真逆に水原は苛烈に…面白い対比だがそれが政変の際にどう作用するか…)
アキトはこの先の事を見越してジッと戦況を見守る。
僧兵もそれなりに士気が高かったが武士の圧倒的な士気の高さには敵わず戦闘開始後数時間で平地での野戦を諦めて撤退を始めてゲリラ戦と籠城戦に切り替えるのだった。
「流石に野戦はここまでか…さて、武士はどうするのか…」
攻城兵器を持たない武士が上手く籠城戦で攻撃側が出来るのかアキトは期待していた。
水原氏は攻めあぐねていたが平良は破城槌を用意して兵団に担がせる。
(なんだ、あるじゃないか攻城兵器。シンプルな丸太式破城槌)
固く閉ざした門を破壊するために持ち出されたそれはゆっくりと進軍する。
近付かせまいと弓矢が飛んでくるがシンプルな矢盾を持った部隊が護衛に入る。平良の部隊は完全に展開を予想して武装もしっかり用意していたのだった。
(流石戦争慣れしてるな…平良氏は脳筋な水原氏に比べて知的でスマートな戦争をする)
アキトも感心する用意の良さについうんうんと頷いてしまう。
戦力の差、質と量共に上回る武士達に僧兵の降伏が待たれるだけの戦況にアキトはもう得るものは無いなと背を向けようとする。嫌な気配が辺りを包んだのはその瞬間だった。
妙なプレッシャーにアキトは振り返り身構える。
(まさか外法の力か!)
世界の危機になりえる外法の力を感じ取りアキトは手を貸す必要があるかもしれないと見学をやめて合流の道を選ぶ。
為義と忠盛が指揮を執る中にアキトが堂々とエントリーして二人から驚かれる。
「アキト殿ではないか如何なされた」
「侍に出番はないぜ?」
二人は戦争は大詰めだというのに何事かと険しい顔をされる。
アキトが説明するよりも先に寺の方角から火柱が上がり状況が変わったと二人は気付く。
「家貞!何が起こっている?!」
忠盛は将の一人を呼びつける。
「奴ら妖魔を呼び出しやがった!こりゃあ人と人の戦争じゃねぇぞ!」
「妖魔だと?!…為義殿如何する?」
「おいおいビビってるのか?状況が変わろうが敵を斬るのが都の武士だろうが!刀を持て!槍を持て!弓を持て!武士の力を示せ!」
水原の武士達は武器を掲げて士気の昂揚を見せて仏閣から溢れ出てくる外法のモンスター達を斬り倒していく。
アキトはその様子を見て苦笑いしながら自分の出番は無さそうだと頭を掻く。
「…あらま凄い士気、為義殿の一喝で奮い立たせちまった」
「ふっ、流石為義殿だ。我々も負けていられないぞ!平良一門よ!我々も立ち上がるのだ!」
「こっちもやる気満々、もしかして俺不要だったかな?」
アキトも前線に出ようかと提案するがここは俺達の戦場だと為義に強く拒否されてしまうのであった。
ファンタジーから現れたモンスターの妖魔達は軽々と蹴散らされ破城槌が到達し閉ざされた門に激しく打ち込まれる。
「どっち道妖魔を呼び出した犯人はとっちめないとな…」
アキトは外法の使い手の妖術師は外の存在だろうと見て捕縛だけはさせてもらおうと前に出る。
「放っておけば蘆谷みたいな事になり得るからな。俺の務めは果たさせてもらうぜ?」
「そこは好きにしろ、此方も寺の制圧をさせてもらう」
為義と忠盛もアキトに続き前線に出て指揮を続けるのであった。
門は破られものの数分で寺は武士達の手で軽々と制圧される。
アキトは制圧され大人しく捕縛された中に世界の外の存在を一人一人顔を見て確認する。
「お、居た居た」
そんな中で一人アキトから見れば分かる異彩の人物を見つけてお話の用意をするのであった。




