怒り心頭
討伐を終えたアキトは大手を振って都に戻る。当然大怪獣を討伐完了したなどと信じてもらえない話は黙っている事にした。
出雲国で翔達が丁度噂を耳にした三日目の話。
アキトは宮中の動向を確認して頼嗣から情報を受け取っていた。
「あの巨大妖魔について…討伐部隊を組むことになった」
「あー、そうなりましたか。俺が言うのもなんですがアイツ死にましたよ?」
「…どういう事だ?」
アキトは大怪獣を倒した地点を説明して確認してみればいいと伝える。
「なぜ貴殿がその事を…」
「まあまあ、ちょっとお仕事をしただけだ」
自分達が本来の仕事をしたと伝えると怪訝そうな顔をされながらもアキトの情報を元に討伐隊を組むとなり頼嗣は書簡を認めて宮中へ持っていくのであった。
翌日、討伐隊は水原と平良の二家が兵団を作り討伐に動くのであった。
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朝、アキトは参加せずに鼻をほじりながら武家屋敷で横になっていた。
そこに怒り心頭な黒鴉を筆頭に翔達が帰還する。
「この嘘吐きがぁー!」
「どわ!な、なんだお前達か。早かったな」
「なにが早かったな。よ!アンタの嘘のせいで都は火の海だったんでしょ!?」
三人は既に復興中の街並みを見てきたようで「そうだそうだ」と訴えを起こす。
「あー、はいはい。もう解決したから気にすんな」
「は?解決…?どうみても焼け野原じゃない!」
都の悲惨な現状が解決してないと黒鴉はアキトの襟首を掴む。
「そいつは俺の管轄じゃぁない!」
アキトは無実な上に仕事の範疇ではないと弁明する。
「私達が居たらそんな事にはならなかったわよ!」
「せやせや、街の被害もウチらを追い出したからやで!」
散々にアキトを批判する三人、アキトが反論や弁明する余裕も与えず黒鴉は喚き散らす。
「アンタ、どデカい妖魔と戦ったって聞いたわよ!?」
「ああ、大怪獣だな」
あっけらかんと答えるアキトに呆れてしまいながらツッコミを続ける。
「アンタの嘘で不在にさせられて都は焼かれて…!それ退治できなくてこうなったそうじゃない!」
「情報はそれなりに得てるんだな」
「私達が居たら!…アキト、もしかしてこの状況見越して嘘吐いた?」
大物との戦いを前に追い出された三人はそれに気付いて冷たい目をアキトに向ける。アキトはギクッとしながらも何のことかなと惚けるのだった。
「で、大怪獣とやらはどうしたのよ!?」
「あー、もう俺が倒した」
「倒し…はぁ!?私達の出番は!?」
アキトの言葉に黒鴉はまた声を荒げる。
「無い、今回は俺が一人でやるって決めてたからな」
「あ、今しれっと嘘でウチらを退かしたって言った」
アキトの好感度が下がる中で討伐隊が動いた事を翔が説明する。
「討伐隊が今朝出発したのとすれ違ったけど…もう討伐しちゃった。と?」
「ああ、彼等は首の落ちた死体を見ることになるな」
「うーん…それってマズいんじゃ…」
黒鴉と玉藻前がはい?と首を傾げる。
「誰が倒したのかで話題になるというか…いや、もしかしたら手柄を立てたと持ち帰ってくるかも」
「もぅ!手柄取られてるじゃない!」
ビシッとツッコミを受けるアキトはそこに何の問題があると鼻ホジする。
「喧嘩になるかもしれないじゃないですか!少なくともギスギスに…」
「あー、まぁそうなるかもなぁ…気にするな!」
「いや気にしますよ!」
討伐隊の二家が喧嘩になるのは困ると翔は険しい顔をする。
「まぁなんだ。俺一人が倒したなんて言っても信用されない。だからいずれはそうなる定めってやつだよ」
「で、でも!水原と平良ってつまり…」
地球での源平合戦の事を思い返して仲良くして欲しいと願う翔に黒鴉は呆れる。
「定めってのは事実ね。仲良くして歴史のイフを願うのは何か違うのよね…浜松はちょっと甘ちゃんね」
「それに歴史への介入は良くないぞ?」
ドライな反応に翔はうぐっと口籠る。
玉藻前は話を纏めてアキトを見る。
「つまり、出てきた大怪獣は現地民の手柄にするんやろ?んでその先の未来には介入せんと…じゃあこの先どうするんや?」
「世界の危機は倒したからな…」
「…は?んじゃあこの話は終わりなんか?」
三人は呆気に取られて目を丸くする。アキトは顎を触ってそうだなと肯定する。
「神鳴の一言次第で終わりだな」
「それ結局今回ウチら必要だったか?」
核心を突く言葉にアキトはじゃあ早速と旅行鞄越しに神鳴を呼び出す。朝早い事に不機嫌そうな神鳴が応対する。
『何?』
「この世界の危機を退治したぞ。帰還準備を…」
『まだ終わってないわよ?』
一瞬の沈黙のあとアキトは深く溜め息をついて頭を押さえる。翔達は顔を見合わせてまだ何か起こるのかと険しい表情になるのだった。
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討伐隊が戻り四人の予想通り手柄は討伐隊のものとなり水原氏と平良氏両家の名声が都で大幅に上がる。
宮中でも今回の事件を重く見て武士達の重要性、役割、発言力がより大きくなるのであった。
彼等を抱えている藤村氏等も同時に名声が高まり更に宮中での大役を担う事となるのであった。




