容赦無き追撃
大怪獣の侵攻の翌日、復興の裏で大怪獣の対処を宮中で話し合いが始まっていた。
「今こそ追撃の時!相手が引いたのは痛手を負ったに違いない」
「復興に力を入れるべきだ。あんな大妖魔倒せるとは思えない」
意見は二分されてヒートアップしていく。
そんな中でアキトは宮中を外から見守りながら一人でも行動しようかと考える。
(どうせまた来るんだしその前に手を打つなら俺一人でもなんとかならないかなぁ…)
大怪獣を前に思っていたよりも氷雨一本じゃ苦戦した事を考えて頬を掻く。
(だからといって神鳴の力借りるのもなぁ…)
「アキト殿、何を考えている?」
たまたま居合わせた為義に微妙な顔をされる。
「妖術で氷を作り出すのは凄いがあの妖魔…相性は良くなかったな」
「だからちょっと考えてるんですよ」
「考える?…お前まさかアレを倒す気か?やめとけやめとけ、矢雨すら耐える怪物だ。勝てないものは勝てない」
諦めムードな為義にアキトは難しい顔をする。
「どうせまた来る。その場合次も宮中を守れるとは限らない。誰かが倒さなきゃならない」
「確かにな…だが協力は出来ねぇぞ」
為義の言葉にアキトは仕方ないなと頭を振って一人で何とかする覚悟を決めるのであった。
ーーーーー
護衛のお仕事の後アキトは武家屋敷に戻り半日で大怪獣の討伐を考える。
「何処に行ったかわからないがデカい図体だ、すぐに見つかるだろ。問題は…いや、氷雨一本で勝ってみせる」
アキトは立ち上がり一息ついて出発する事とする。
復興中の焼けた街を通って都を出て逃げた怪獣の後を追うのであった。
都を出てすぐにアキトは便利な薬を取り出す。
「じゃじゃーん。高速移動薬ー!」
第三夫人の調合してくれた薬をゴクリと飲んで一言「不味い!」と感想を述べつつ軽く手足をほぐしてビュンッと走り出す。
一気に加速して馬より速く走って大怪獣の痕跡を追う。
(熱線を適当に吐いて焼け焦げた跡があるな…コレを追えば…)
だんだん道を外れて山に入っていく。次第に気配、プレッシャーを感じて自然と口角が上がるバトルジャンキーであった。
山に大穴が空いていてそこに大怪獣はスヤスヤと眠っていた。
(おー、いたいた)
アキトが大穴に足を踏み入れると同時に大怪獣は目を覚まし顔を上げる。ジッと睨み合いになりアキトはゆっくりと刀の柄に手を当てる。
大怪獣は「グルルル」と喉を鳴らすような鳴き声を上げて身体を起こして口の端から火を吹く。
「今日はちゃんと相手してやるぜ」
街を守る必要が無くなったアキトは敵に集中出来ると刀を構える。怪獣は吼えて二足歩行で立ち上がり火を吐く。アキトはサッと火を避けるが周囲を速攻で火の海にされて逃げ場を失う。
「逃げ場なんていらねぇ!食らえっ!」
氷柱の雨を降らせブスブスと刺を突き立てていく。
「グワォン」
痛みに悲鳴を上げるがまだまだ健在アキト目掛けて熱線を吐く。
氷の壁を作り出して熱線を耐える。ジュージューと氷が溶けて周囲が温水で水浸しになり水蒸気で蒸し蒸しのサウナのようになる。
「必ずここで仕留める!奥義!絶空!」
空を断つ程の激しい剣圧を放ち大怪獣はその剣技をモロに受けて壁に叩きつけられる。
「タ、タフだなぁ…」
普通ならズタズタに引き裂かれる一撃を受けて原型を保っている大怪獣の頑丈さにアキトは呆れてしまう。
「ギャオオオン!」
今度はコッチの番だと言いたげに怪獣は吼えて頭を突き出し突進する。アキトはその心意気や良しと刀を居合いに構えて迎え撃つ。
「オラァー!」
アキトも吼えて居合い抜きを放ち大怪獣とぶつかり合う。弾き返し合う敵に流石外界の存在とアキトは目を見張る。怪獣は自身と互角に戦う小さな存在にだんだん恐怖の感情を露わにし始める。それは萎縮した吠え声からも感じ取れた。
「ギュ…ギャオオ…!」
「自分と互角の敵と戦うのは初めてか?悪いが俺の本気はまだコレからだぜ!」
昂揚しているアキトと対比的に怪獣は後退りする。
「どうやらここ迄みたいだな…そろそろ仕留めるぜ」
凍気が周囲を包み込み火が鎮火していく。
「久し振りに本気の一部を見せるぜ…!」
「グルルル、ギャオオオ!」
怪獣は震えながら必死の抵抗で吼えてもう一度熱線を吐く姿勢を取りながら突進してくる。
アキトもその意気に応えて氷の足場を周囲に作り出して氷のフィールドを作り出す。怪獣はその光景に驚き戸惑いつつもアキトを狙って熱線を吐き出し足場に突進し破壊を狙う。
「ここはもう俺の戦場だぜ!」
街では出来ない氷のフィールドにアキトはスケートするように滑り出し加速する。熱線が後を追うが命中しない。
アキトは氷の台を滑って飛んで刀を振り回し斬撃波を浴びせる。怪獣は熱線を準備していた口内に斬撃波の嵐を受けてズタズタになりながら悲鳴を上げる。
アキトの地力を前に完全に怪獣は戦意を失いつつあった。
「…都の人達の為にも逃す訳には行かない。悪いな」
あまりにも生物らしい怯えの感情を見てアキトは情に流されそうになりながらもトドメの一撃を放ち怪獣の首を切り落とすのだった。




