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神の下僕は世界を救いたい  作者: D沖信


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火の海

夜。月明かりに照らされた庭を眺めて涼みながらアキトは精神統一をしていた。


(明日…アイツらにはまだ早いだろうからな…まずは俺が相手をしないとな)


出雲国へ出張させた事の言い訳に今回やって来る災厄の相手はまだ荷重だろうと見ての事であった。


(海の向こうから遥々(はるばる)やって来てくれるんだ…盛大に出迎えてやらないとな)


宮中で得た情報は海の向こうから外敵がやって来ているという漁師達からの報告であった。

眉唾物の話と流している都の人々だがアキトには分かる。敵が現れたのだと。


(むむむ、ちょっと緊張してきたな…素振りでもするか)


身体を動かしていたくなったアキトは眠気が来るまで素振りをして時間を潰すのであった。


ーーーーー


翌朝は静かな朝だった。入眠が遅かった分目覚めも遅く護衛のお仕事が始まるギリギリに目覚めて顔を洗って仕事へ向かう。

頼嗣と朝の挨拶を交わして屋敷を出発する。


「アキト殿いかがなされた?」


アキトが普段見せない殺気をはらんだ真剣な表情をしていた事を指摘されてアキトは「おっと」と表情をいつもの軽い調子に戻す。


「いや、申し訳ないちょっとだけ真剣になってた」


「ハハッ、普段は真剣じゃないと?」


「死線を潜る程の真剣さはないかなー」


死線と聞いて頼嗣も難しい顔をする。


「アキト殿程の手練れが感じる死線ですか…さぞ恐ろしい相手なのでしょうね…っは、それを感じたのですか?!」


「頼嗣殿も目敏(めざと)いですな…」


褒められて頬を掻く頼嗣にアキトは都が戦地になるかもしれない等と簡単に話せずどうしたものかと悩む。しかし話さなければ雇い主を危険に曝(さら)す事になると意を決して話す事にする。


「外敵が都に迫っています戦闘…激戦は避けられないでしょう」


「ふむ…もしや宮中で話題に出た海上の妖魔の話か?」


「妖魔で済まない相手かもしれません」


アキトの真剣な表情に頼嗣も真剣な表情になる。


「眉唾物の話で都を混乱に陥(おちい)らせる訳にはいかない…しかし議題には上げておこう」


宮中に注意を促すと話す頼嗣であった。

手遅れの可能性が高いがアキトも最善を尽くそうと心に誓うのであった。


宮中へ頼嗣を送りアキトは一人警戒をして空を見上げていた。


「何か見えるのか?」


水原為義が現れてアキトの見つめる空を見上げる。


「為義殿か、空から何かやって来そうな気がして…ね」


「何か…?殺気が漏れてるぞ?」


抑えているつもりだったが戦意が伝わって為義はニヤニヤする。


「侍がそんな殺気を振り撒くなんて只事じゃあないな?」


完全に見透かされてアキトは頬を掻く。


「敵が来る…この都に」


「いいねぇ、その敵とやらに俺も挨拶させろよ」


軽口を叩く為義にアキトは困り顔をする。そんな簡単な話じゃないんだがとアキトは口籠る。

そうこうしているとズシンと軽い地鳴りがして二人はスッと身構える。聞こえてくる低く唸るような咆哮。


「来たか…」


「おいおい、本当なのかよ!なんだありゃあ!?龍か?!」


アキト達だけでなく沢山の町人達が真っ赤な大怪獣の存在に気付く。

その体長三百メートル体高は百五十メートルはありそうな大きさの赤い怪獣にアキトはゴクリと息を呑む。

為義は慌てた様子でその場を走り去ってしまう。


「為義殿?!」


「兵団を整えるんだよ!お前も急げ」


アキトは一人しかいないと苦笑いしつつ怪獣の足止めをしないとと走り出す。


「ギャオオオン!」


大咆哮、その後熱線を吐き出して街を燃やし始める。

怪獣は明確に意志を持って都を狙っているようで踏み荒らしながら宮中を目指そうとしていた。


「それ以上は進ませねぇ!」


アキトが怪獣の足元を凍結させて足止めを狙う。


「ギャオオオス!」


大暴れする怪獣は足元の氷を踏み割り熱線を吐き出す。また家屋が焼かれて人々の悲鳴が聞こえてくる。


「大人しくしやがれ!」


氷柱を飛ばし針串刺しにしようとする。

ブスッと刺さるが浅いダメージで怪獣は効いてない様子でアキトに狙いを定める。

怪獣はガパッと口を開き熱線を発射してきてアキトは分厚い氷の壁を作り出して防ごうとする。


「クソッ、相性が悪いか?!」


悪態を付きたくなるアキトは必死にガードを固めて一撃は防ぎきる。

ワーッと武士と侍達が集まってきて弓を番(つが)えて一斉に発射する。


「宮中には近寄らせるな!放てー!」


侍達を束ねる為義の姿にアキトは勇気付けられる。


「為義殿!」


「しっかりしろ!倒すんだろ?!」


街を守りながら戦うのは大変だとアキトは軽口を叩き為義達に笑われる。


「お前一人にいい顔はさせねぇ!撃て撃てー!」


怪獣の肌が針山になる程の矢の雨を浴びせるが怪獣はまだまだ健在で侍達に向けて口を開く。


「やらせるか!」


アキトが氷の壁を作り攻撃を防ぐ。その凄まじい妖術に侍達は驚きの声をあげる。


「感心してんじゃねーぞ!お前らも頑張るんだよ!矢を構えろ!」


為義も弓を番えて放ち怪獣の口の中を狙撃する。

怪獣は少し身悶えしてデタラメに熱線を吐き出して一鳴きして撤退を始める。


「やったのか?」


「引き上げただけだ…」


都の街並みの三割程を火の海にされた怪獣との最初の一戦が幕を下ろすのであった。

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