パワーアップしたくて
蘆谷一派を捕縛し終えた武士達はこれで大手を振って都に帰還できると大喜びする。
「やっと都に帰れるぞー!」
吉報を持ち帰れると翔達も安堵するが玉藻前は溜め息をついてせっかくのパワーアップチャンスがふいになったと肩を落とす。
「倒して強くなったじゃない」
黒鴉は励ますが玉藻前は納得いっていない様子で新たな殺生石を見つめる。
「精霊が居らんかったら負けとった…自力じゃないんや…」
玉藻前の意見を聞いて翔は腕組して考える。
「精霊も自力の一つだと思うが…納得行かないなら石と対話してみたらどうだ?」
聞くってどうやってと玉藻前は苦笑いして思うがダメ元で会話を試みる。
「ちょいちょい、ええか?」
ノックするようにコンコンと殺生石を軽く叩く。
『なんだ騒々しい…私は眠りたいのだ』
意識も思考も残っていて玉藻前はビックリして飛び上がるが九尾は玉藻前が何もしないしされないと分かるや大笑いする。
『下らない用事なら触れるな』
「ウチ強うなりたいんや、何か教えて欲しいんや」
力を懇願する玉藻前に九尾はポカンとしながらも面白いと力を分け与えてやるとピカッと光る。
「むむ?何か変わったか?」
『我が妖気を少し分け与えた。お前の器が適応出来るならいずれ目覚めるだろう』
「…適応出来なかったら?」
九尾はクックックと笑う。
『我が内側からお前を喰らってくれる』
恐ろしい事を言われて玉藻前はブルッと身震いする。
「どえらい事になってもうた…」
リスクが大きすぎると頭を抱える玉藻前だったがアキトに肩を叩かれて応援される。
「心の鍛錬か、丁度いいんじゃないか?精神を研ぎ澄ませろ」
「無茶言うで、ホンマ」
「尻尾三本目指せ」
アキトはゲラゲラ笑いながら帰り支度を進めるので玉藻前も仕方なくその場を去るのであった。
ーーーーー
馬に跨り武士達より先に帰路につく一行は関東平野の宿場町で一泊する事にする。
玉藻前は宿にて精神統一して九尾の妖気に立ち向かう。
(うぬぬ…妖気に勝たんとアカンなんて…面倒事になったわ)
玉藻前は自身の精神の内側に潜む九尾の妖気を探り精神世界の中で戦いを挑む。
(精霊は居らん…真面目に立ち向かうしかあらへん!)
精神世界では玉藻前の前に少し小さくなった九尾の狐がお座りしていた。
「なんか小さくなっとる…」
『力の一部だからな…さあ死合うぞ』
九尾はクワッと口を開き前傾姿勢になる。尾を揺らし素早く爪を剥いて襲い来る。玉藻前は刀を抜いて爪とかち合わせて弾き返す。
「おんどりゃぁー!」
『ふむ、強き心か…』
狐火を互いに放ち相殺し合う。一瞬互いに睨み合いをしてまた爪と刀がぶつかり合う。
「妖気だけでこの強さ…やっぱ凄いわ…」
カッカッカと九尾は笑い尾の先から狐火を放つ。玉藻前は回避行動を取って狐火を避ける。
『どんどん行くぞ』
追撃が飛んできて玉藻前は対処を余儀なくされる。必死に相殺の火弾を放ち撃ち落とす。
『まだまだ次はあるぞ?』
「どないせぇ言うねん!」
思わずツッコミを入れる攻撃の連打に敗北の二文字が脳裏を過ぎる。
(アカン、気持ちで負けたら終わりや!一網打尽にする手段を考えるんや!)
自分に言い聞かせて少ない時間で作戦を練る。
(アッキーが言っとったな…尻尾三本目指せって)
自分の限界を突破し新たな技を会得しなきゃ超えられない壁が目の前にいると全身全霊を掛けて新たな境地を目指す。
まずは二本尻尾になりバリバリと電撃を放ち火弾を連鎖破壊する。
「こっからが本番や!」
『…ほう』
玉藻前は気合の掛け声と共に尻尾三本のイメージを練り上げ新たな尻尾を生やす。
『姿だけでは変わらぬぞ!』
九尾は炎の壁を作り出して逃げ場を塞いだ上で爪の攻撃と狐火のコンビネーションアタックを仕掛けてくる。
「変わったのは尻尾だけやない!」
刀に雷を纏わせてかち合いと同時に雷を放ち狐火を相殺しながら九尾にダメージを負わせる。
感心感心と九尾は笑いながら黒い炎を展開する。
『ではコチラも本気といこう』
玉藻前は咄嗟に攻撃をし返すが黒い炎は相殺出来ず迫ってきてギリギリで躱す。
『技は見せたぞ?どう対処する?』
「上から目線ムカつくわ!三本目の奥義見せたる」
玉藻前はスッと指を黒い炎に向けて氷の礫を発射する。
「食らえっ!」
バシュッと黒い炎と相殺する氷の術に九尾はカッカッカとまた笑う。
『氷か、面白い』
使う属性を増やしたかと感心感心とまた九尾は頷きつつ力を溜め始める。
『最後のお題だ。どう答える!?』
一際大きな黒い炎を作り出して九尾は放つ。玉藻前は手に汗握りながらも冷静にコチラもとっておきの冷気を込めて氷の塊をぶつける。
『安直だ!だが気に入った』
黒い炎は相殺されて九尾の幻影も霞んでいく。
「まだ決着しとらんで!?」
『妖気は使い切った…さらばだ』
「なんやて!?」
勝手に暴れるだけ暴れて九尾の幻影は消えていき玉藻前は消化不良気味になりながらも勝利を収めるのであった。
翌日不機嫌そうに玉藻前は口を尖らせていた。
「何かあったのかしら?」
「さぁ、触れない方が良いこともある」
黒鴉の言葉に翔はそっとしとこうと答えるのであった。




