那須高原へ
関東平野を北上する一行は開発されていない関東の様子に関心を寄せる。
「江戸時代になるまでの武蔵国は…田舎ね」
「鎌倉とか小田原とかはもう時期開発されるんだろうけどな」
「鎌倉ねぇ…源氏というかこっちだと水原氏かしら?が平氏、こっちだと平良氏と争った後よね?」
翔と黒鴉がややこしい未来の話をするがアキトは無関心そうにそういう話はやめておけと注意する。
「例え見えてる未来だとしても触れるのはご法度。悲劇的な死を迎えるかもしれない人の話に私情を挟むとかダメだぞ」
「わ、分かってるわよ…?私達は世界を救う為に戦ってる…でしょう?」
分かっているならいいとアキトは馬を進ませる。しかし黒鴉は気になってしまう。歴史のもしもに触れられるのならその先を知ってみたいという欲求が湧いてくる。
それを翔にも見透かされてジト目を向けられる。
「もし平良氏が勝ったら…とか考えたか?」
「か、考えて無いわよ?勝者が逆転していたらとか歴史のイフを考えてなんて無いわよ」
「考えたんだな?」
地球の歴史を知らず黙っていた玉藻前もジト目を向けて黒鴉は誤魔化し笑いをするのであった。
夕刻になって街道沿いの村に入り今日はここ迄だとアキトが声を掛ける。
「夜の行軍は危険が多いからな」
「星明かりだけですもんね」
街灯なんてない街道を夜になっても進むのは賊や妖魔との遭遇が想定できると翔も納得して宿を取る準備をする。アキトが交渉して宿を取って馬の面倒を見つつ四人は一夜を過ごすのだった。
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早朝、日の出と共に村を出発する。
「ふぁー、朝早いのは慣れんなぁー」
「もう結構日にち経つのにダラシないわね」
大欠伸をする玉藻前に黒鴉はやれやれと玉藻前の髪のハネっ毛を突っつきながらくすくす笑う。
「今日中に那須高原の平良氏と合流する。蘆谷との決戦は…今のところ不明だ」
アキトの説明を聞いて三人は頷きアキトに続いて馬に跨って進行を開始する。
街道を進むと妖魔が屯していて一行を見つけ次第攻撃を仕掛けてきて四人は馬から素早く降りて戦闘を開始する。
鍛えれた四人に敵う訳もなく妖魔は速攻でボコボコにされて半数は逃げ出してしまうのだった。
「大したことないわね」
鼻を鳴らして黒鴉は腰に手を当てる。そして何か思うところがあって溜め息をつく。
「妖魔だなんてやっぱり地球とは違うのよね…」
「そりゃファンタジーの世界だからな」
アキトがあっけらかんと答えて少しでも風情を感じたかった黒鴉は呆れ顔になるのであった。
雑談も程々に北上を続行する。関東平野を越えて山道が増えてくる。
「で、今何処ら辺なのかしら?」
「利根川を越えて現代でいう宇都宮目指してる道中と言った所だ」
翔が脳内の地図を頼りに現在地を割り出そうとするが思い浮かばなくつい「なるほど、分からん!」と口走る。
「那須は栃木の北部で宇都宮は栃木の中心地、利根川は栃木に入る直前」
黒鴉がわかりやすく説明して翔も合点がいく。
丁度栃木に入って少ししたところということは玉藻前も理解する。
「殺生石はこの世界にもあるのかしら。玉藻前の伝承の遺物だけど」
「有ったら何かあるんか?」
「もしかしたら玉ちゃんパワーアップイベントが用意されてたりして!」
黒鴉の口から出る適当な言葉に玉藻前は「ホンマか!」とちょっとマジな雰囲気になってしまい冗談と言い難い空気感になる。
アキトが一応フォローを入れる。
「俺の方の玉藻、大人の奴な?アイツはパワーアップした過去があるな」
「うおお!マジか!ウチも期待してええんか!?」
「どうだろうな?行ってみないと分からないぞ」
期待だけさせて仲間のやる気を引き出すアキトなのであった。
宇都宮の辺りを越えると山道も増えてくる。
馬での進行に感謝しながら高原を目指していると遂にお目当ての平良氏の一軍と合流が叶う。
「む、お前達は…!」
「忠盛殿いる?」
アキトが気さくに挨拶して平良氏のリーダーの忠盛の居場所を尋ねる。
「何事だ?…貴方は確か四ノ宮の侍であったな」
「蘆谷の足取りが掴めたと聞いて馳せ参じました」
蘆谷の名前を聞いて平良氏達は苦々しい顔をする。どうやら苦戦しているのは事実らしくアキトは内心ニヤリとする。
バトルジャンキーの血が騒いでいるのを何とか抑えてアキトは真面目なトーンで援軍に来たと話す。
「たった四人の援軍か、馬鹿にされているのか」
「俺達強いんで期待してくださいよ」
蘆谷屋敷で既に実力は見せたつもりだがとアキトは頬を掻く。忠盛は小さく溜め息をついて期待はしていないと冷たく突き放す。
玉藻前はウズウズした様子でアキトに件の話をする。
「なあなあ、殺生石はどこにあるん?」
「うーん、高原は広いからな。蘆谷退治のついでで探しに行くか」
アキトはヘラヘラ余裕のある態度を見せて平良氏達をイラつかせてしまう。
「ここは戦場だ、旅行気分は辞めろ」
「これは失敬、取り敢えず先鋒努めさせてもらいますよ」
翔達は自分達もなのかと驚きつつ戦場と呼ばれる那須高原へと足を踏み入れるのであった。




