蘆谷を追って
曇天童子退治を終えて報告を済ませる一行は武家屋敷でぐったりしていた。
アキト以外は負けた後のダメージを癒す為であったがアキトは色々と考えながら横になっていた。
「やっちまったなぁー。面倒臭い事にならないといいんだけどなぁー」
一人聞いて欲しそうに悩みを口にしていて黒鴉が仕方なさそうに尋ねる。
「つまり?なにが言いたいのよ?」
「鬼達を見逃したことだよ。俺も鬼になって切り捨てちまった方が良かったかなーってさ」
「今更ぁ?アンタが浜松と同じで甘ちゃんなんだから仕方ないでしょ」
翔と同一人物である以上そういう甘さを持っているのは事実だとアキトは認めざるを得ないと深く溜め息をつく。
翔は甘いことを悪いのかと恨めしそうに尋ねる。
「なんだよ、情け容赦無い方が正しいって言うのか?」
「正しいかどうかは別でしょ?時と場合による…ってやつよ」
黒鴉の言葉にアキトはまた溜め息をついて今回はどうだったのかと悩みを口にする。玉藻前がそんなアキトの言葉に問題は無いと返答する。
「まぁええやん。世の中悪鬼だけやない。血を流さない事も大事なこともあるんやない?」
「そうかしら?相手は見た目がどうあれ鬼なのよ?」
「鬼いうても皆が皆残虐って訳でもないやろ?」
玉藻前の鬼にだって個性はあるという言葉に黒鴉は反論できなかった。
そんなこんなで四人で駄弁って時間を潰すのであった。
ーーーーー
また数日の間静かな日々が続きアキトが逃がした鬼が悪さをしたなんていう話は出てこなくアキトは安堵するのであった。
そんな中で宮中での務めをしてきた頼嗣からアキトは相談を受ける。
「アキト殿、実は『とある話』が上がってきていて対応するか悩んでいるのだが…」
「とある話?」
「実は蘆谷の者達と平良が交戦し敗北したという噂が宮中で囁かれていて…」
やっと蘆谷の足取りが掴めたのかとアキトは目を見張る。
「平良氏が負けたのか?!」
「声が大きい…!あまり口にする話ではないぞ?…しかしそういう噂が上がってきている。調査して欲しい」
「調査?それは何処まで行けばいい?」
頼嗣は詳細は屋敷に戻ってからだと話をするのだった。
四ノ宮の屋敷まで戻り話を再開する。
「戦地は那須高原との話だ」
「那須…遠いな」
那須高原は地球で言うと栃木県の北部に位置する場所だとアキトは腕組して唸る。
「どうにも進展しない話に敗北の噂が流れつつある。どうにかして吉報を持ち帰ってきて欲しい」
「了解した。任せてくれ」
アキトは早速武家屋敷に戻りすっかり回復した面々に事情を話す。
「那須高原…ですか」
「つまり京都から栃木…ね、遠いわよ?足はあるの?」
アキトは馬車なども無い時代だからなぁと頬を掻く。
「馬を借りれればいいんだが最悪徒歩だな」
「それはトホホやな」
玉藻前のつまらないギャグに全員が一瞬沈黙する。
「なんや、笑えや?」
「笑える話じゃないからな…那須高原と言ったらお前にも縁があるんだぞ?」
「ほえ?」
大妖怪としての玉藻前が倒された地として名を残す事でもあるとアキトが語ると何かが起こりそうな気がしてきて全員が真剣な表情になるのであった。
「那須高原か…何か起こりそうな予感がする」
「縁があるなんて言われたら行くっきゃないやん」
行く決意が固まった四人、アキトは調査する為に四ノ宮と相談し馬を何とか借りる事にする。
四頭の馬をアキトが連れてくるも翔達はサラブレッドをイメージしていたが全然違う馬に目を丸くする。
「な、なんか…もっとこうシュッとした馬かと…」
「これじゃあポニーじゃない」
ガッカリした様子の翔と黒鴉の二人と違い小さな玉藻前は喜ぶ。
「乗りやすそうでええやん」
「んー、まぁ…そうね…ポニーね…」
前向きに捉えて取り敢えず乗って一行は東へ向かう事にするのであった。
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翔達は岐阜を南下、駿河の地を東方に進み関東平野を目指すルートを進行する。
「わざわざ山脈を迂回しないといけないなんて不便ね…」
「仕方ないさ、道路の整備されているのがこういうルートしかないんだからさ」
「現代社会が懐かしいわ」
山にトンネル掘って高速道路を通している現代社会の道路が恋しいと黒鴉は溜め息をつくのだった。
関東平野に入ると関所にて武士達に遭遇する。
「止まれ、そこ行く旅の者」
困惑する翔達に代わってアキトが対応する。
「都から来た侍だ」
「都の侍だと…?何の用だ?」
「蘆谷氏を追っている平良氏を探して那須高原を目指している」
武士達は少々ざわついてアキトから詳細を伝えられて事情を把握し自己紹介をしてくる。
「我は水原義朝、貴殿らの事情は把握した関東を通る事を許可しよう」
「水原…?為義殿の家系か」
「水原為義は我が父、そうか父の知り合いか」
都の侍なら父を知っていて当然かと納得した様子で頷く。アキトは軽く武士達に頭を下げてお勤めご苦労さまと挨拶を交わして馬に戻る。
「親父さんに会ったら息子殿は元気だったと伝えておこう」
通ることを許可された一行は関東を北上、那須高原を目指すのであった。




