奮戦玉藻前
幻惑に踊らされる景明とそれを一緒になって眺める貴族達。
攻撃はあらぬ方向を狙い貴族達の反応から幻覚の中では景明有利の展開を繰り広げているようであった。
「がんばれー」
玉藻前はのんびりしながら幻覚と戦う相手を応援する。しかし次の瞬間符が飛んできて発破して慌てて回避する。
「のわっ、あっぶな!」
外れた攻撃がたまたま飛んできたのかと思ったが的確に外れたように見える攻撃が玉藻前を狙ってきて顔から余裕が消える。
(見えとるな…幻覚破りおったか…?)
景明はまだあらぬ方向を見つめているが攻撃は飛んでくる。となると気配を追っているのかと判断する玉藻前。
(オート攻撃っちゅうやっちゃな…どないする…気付かれる前に決着付けんと!)
若干の焦りが出る玉藻前だったが冷静な判断をしろと自分に言い聞かせて怪しまれない程度に相手の攻撃範囲ギリギリを攻める。
(わざわざ攻撃範囲に近づかにゃならんとかアホらしいわ…せやけどやらないとバレるし…厄介やな)
黒鴉は玉藻前の行動に呆れる。
「わざわざ攻撃に近付くなんて何やってんのよ?」
アキトは景明のオート照準攻撃に気付いていて玉藻前の行動を肯定する。
「いや、アレでいい。まだ幻覚がバレてないようだからな…」
「は?どういう事よ?」
「景明殿は攻撃の符に幾つか敵を探知して発破する符を混ぜている。幻覚だと気付かれる前に動いた訳だ」
黒鴉は少し考えたあとそれって無駄骨じゃないかと微妙な顔をする。
「結局動いてるわけだし?体力使っちゃってるじゃない?」
「回避するのはオート照準だけでいい、幾分かは楽だ」
幻覚の利点が減っててどうなのかと翔と黒鴉はやっぱり微妙な顔をするのだった。
戦いは中盤過ぎて景明の消耗は激しく符が尽きてきたようであった。
「っく、ちょこまかと…」
どうやら幻覚の玉藻前は相当な機敏な動きで回避しているようであった。
流石に消耗が激しく景明は攻撃を中断する。
「…?!」
攻撃を止めて隙が出来たのに反撃して来ない幻覚に違和感を感じた景明は幻覚だと気付く。
「女狐め!どこだ!」
オート照準の符を投げてターゲットのズレを直す。
「そこか!」
「わわっ!気付きおった!」
観衆はまだ幻覚の中で何が起きたのか分かっていなかった。
幻覚は無意味となったとなって玉藻前は幻覚を解く。
「惑わすとはやはり邪悪!」
「ヒドい言われようやなぁ…」
攻撃しなかっただけ優しいじゃないかと玉藻前は胸を張る。
「陰陽師を舐めているな…?」
「舐めとらんって」
兎歩で何か呪いを行う景明に玉藻前は身構え狐火を放つ。その火は景明の直前で霧散する。
「むっ」
「その程度、通らんぞ!」
魔法攻撃が通らないとなると玉藻前は後は切るしかないと溜め息をつく。
「しゃあない…、コレは痛いでー?」
素早い動きで一気に距離を詰める玉藻前。景明は歩法を速めつつ身構える。
刀が振るわれて防壁とかち合いギィンと鈍い音が響く。
「お!?なるほどなぁ」
防壁の硬さに玉藻前は一旦距離を取り体勢を立て直す。
「ほならやり口変えるしかあらへんな」
玉藻前に攻め手があるのかと翔達は固唾を飲んで見守る。
「本気見せたる!でやー!」
気合いを入れた玉藻前は尻尾が二本に増やす。翔と黒鴉が驚きの声を上げる。
「「尻尾が増えた!?」」
「ほう、随分と鍛えたな」
アキトが感心感心と生温かい目をする。
玉藻前は普段より妖力を高めて火を強くして片手で狐火を放ちつつ片手で電撃を放つ。
「どりゃりゃー!」
魔法攻撃を連打して景明のバリア破壊を試みる。
「ぐっ、重い!」
景明は真正面から攻撃を受けて苦い顔をする。その表情を見て玉藻前はニヤリとしてガンガン攻める。
「ほぁー!アチョー!」
魔法攻撃をしつつ一気に接近し母親の真似をして属性を纏った拳を放ちバリアを突破する。
「何…だとぉ!?」
景明はそのまま腹に一撃、拳を叩き込まれてダウンする。一本、勝負アリと御前試合は玉藻前の勝利で終わる。
「しゃあ!どんなもんじゃい!」
ポーズを決めて勝った勝ったと喜ぶ玉藻前、陰陽師が妖魔疑いのある神獣に負けたと見て貴族達は微妙な空気感が漂うのだった。
「藤村氏の陰陽師も大したことないな…」
「いや、相手が神獣とならば致し方ないのでは…?」
「しかし神獣とは名ばかりの…可憐な少女では?」
玉藻前は今更可愛い神獣アピールしつつ翔達に合流する。
「ちょっとやり過ぎたかなぁ?」
「勝ちは勝ち、お疲れ様だ」
アキトは玉藻前を労って帰り支度を進める。翔だけが不安そうにする。
「勝ってよかったんでしょうか?藤村氏から怒られません?」
「勝ち負けに口出し無用って話付いてるだろ?」
アキトの言葉にそうそうと全員が頷く。翔は大丈夫かなぁと貴族達をチラッと見る。未だにざわざわとしている貴族達、どう考えても遺恨を残していると苦笑いしてしまう。
「まあまあ、気にし過ぎやでまっつぁん。陰陽師の兄ちゃんには悪いが約束はしとるからな」
玉藻前は敗北を受け入れて呆然としている景明を見て軽く御免と手振りするのであった。




