喧嘩商売
出店に現れた景明と一触即発なムードを醸し出す葛之葉。
妖魔扱いに怒り心頭な葛之葉だったがぐっと堪えて人をしっかり演じる。
「一体何の話でしょう?」
とぼけた返事をすると景明は袖で口元を隠して冷笑する。
「狐と狸…化かし合いは結構、町人をだまくらかしてなにが目的か?」
「無礼な方ですね…騙す?正当な対価を貰って商売をしているだけですよ?」
飴とカキ氷を眺めて景明はやはり怪しいと疑う事をやめない。それどころか妖魔に対しては厳しくあればこそと強硬姿勢であった。
「あ…姐さん…どうします?」
「大丈夫よ。こういう修羅場にも慣れてるわ」
葛之葉は任せなさいと胸を張る。
「女狐め…」
「坊やはここで一戦交えたいのかしら…?」
今まで隠していたオーラが解き放たれてプレッシャーとなり景明を気圧される。
「何という妖力…」
「はい、辞め辞め。買わないなら帰って頂戴。他のお客様の邪魔よ」
葛之葉のあしらう言葉に景明は食い下がろうとする。
「都を守護する陰陽師として妖魔を見過ごす訳には…」
「本当に失礼な人ね、妖魔じゃないと言っているでしょう?これ以上風評被害を撒くなら訴えますよ?」
訴えると言われて何処に何をとキョトンとする景明だったがさっさと失せろとしっしと払い除けられて呆然とする。
そもそも商売をする妖魔を始めて見て人に友好的な所なんかも今までの常識を覆す事であって「あり得ない」と呟きつつそこで景明は一つの気付きを得る。
(そういえば同じ女狐で人の真似をしている奴がいたな…)
玉藻前の事を思い出して頭を抱える。短期間で変な妖魔が都に流入しているんじゃないかと頭痛がしてくる景明だった。そこに祭りを楽しんできた翔達が戻ってくる。
「うわ、すごっ、米俵が立ってる…」
黒鴉が思わず声を上げる。
「君達は…!」
景明が翔達を見てやっぱりと言いたげに睨みつけてくる。
「あ、これは景明殿。景明殿もお祭りで?」
「出店を出している妖魔がいるから退治に…」
「え?…あー、葛之葉さん達は妖魔じゃないですよ?」
翔は頬を掻いて説明が難しいなと呟きつつもこの世界の妖魔と呼ばれる存在とは似て非なるものだと説明をする。
「せやせや、かーちゃん達は妖魔ちゃうで!」
「私達からしてみれば同じようなものだ、人ならざる物であろう?」
返答に困る質問に口籠る翔達を見かねて葛之葉は溜め息をつく。
「分からず屋の坊やにはお仕置きが必要のようね…見世物よ。さぁ掛かってらっしゃい」
「オカン!?アカンて!街中やで?!」
「無問題、アチョー!」
葛之葉は屋台から出てきて功夫の構えを取る。
「あら葛之葉さんって功夫も出来るの?」
「知らん、地球でカンフー映画見たんとちゃうか?」
喧嘩を吹っかけた側の景明は少々戸惑いながらも符を構える。
「後悔しないでくれよ女狐」
「お喋り不要。掛かってらっしゃい!」
通りを使って喧嘩が始まりすぐに見物人達の人集りが出来る。
「飴ちゃん安いよー買ってってー」
仙狸は見物人達に飴を売り込んでいくのだった。
景明は符を投げつけ簡易的な魔法のような呪術を放つ。葛之葉は子供騙しと軽く息を吹きかけて呪術をかき消してしまう。
「何っ!?」
流石の出来事に景明は面食らい慌てて口元を隠して呪詛を唱える。呪術を使い切った符が発火して地面に方陣を描く。
「あら面白い芸ね、これはどう?」
葛之葉は禹歩を方陣の上で踊り力技で方陣を破壊する。陰陽師の技で返されて景明も色々と察する。
(妖魔とは違うと言われたが…確かに違う。明らかにこの女狐は陰陽道の使い手!)
「もう終わり?来ないならコッチから行くわよ!ハイぃー!」
八極拳の鉄山靠を葛之葉は放ち景明を吹き飛ばす。
「おかーちゃん。もう滅茶苦茶やで…」
功夫だったり八極拳だったり陰陽道だったり滅茶苦茶する葛之葉に娘の玉藻前は呆れた顔をする。
「っぐ、こんなデタラメな…!」
流石の景明も焦りの表情を示して奥の手だと式神を呼び出す。
「前鬼、後鬼!」
「あらあら、一人じゃ敵わないって事かしら?」
「なんとでも言え!私とて都を護らねばならないのだ!」
敵対する理由が浅いと葛之葉は発勁で前鬼後鬼を一撃で伸してしまう。
「葛之葉さんってあんな肉体派だったっけ…?神通力の使い手だったような…」
「兄貴のやつ格闘漫画をオカンにも読ませたな…」
「ああ…なるほど」
神斎の漫画好きから葛之葉も影響を受けた可能性が出て来て翔達は苦笑いする。
「坊や、手品は終いかしら?」
「何なんだアンタ一体…!」
式神のなかでも切り札だった前鬼後鬼が一撃で倒されて景明は一層焦る。
「玉ちゃんの母よ!」
トドメの神通力でグッと動きを封じた上で軽い往復ビンタを打ち込み景明をノックダウンさせる葛之葉であった。
「いいお灸になるといいんだけど…」
「アカンて!やり過ぎや!」
これでも権力者のお抱え陰陽師、ボッコボコにしたら問題になると玉藻前は母親を咎めるが時すでに遅し景明は姿を式紙に変えて消えてしまう。
「逃げられちゃった。面倒事はアキトさんに任せるとするわー」
祭りの日に一日商売しに来ただけだからと無関係を装う葛之葉一派に翔は苦笑いが止まらなかったのであった。




