都の武士
事件の翌日の夕刻。式神で宮中を襲撃したという騒動を元に蘆谷童満と配下の者を捕らえよというお達しが通達される。
四ノ宮の侍として翔達も動くかと話し合いをし結論として動く事にするのであった。
翌朝から蘆谷童満を捕らえようと動く四人は都より少し離れた土地の蘆谷の屋敷の情報を元に追跡を開始する。
「こういうのって本来警察的な組織がするものよね」
翔が想像も付かないとポカンとした顔で聞き返す。
「…あるのか?そんな組織」
「宮中にだって軍部くらいあるでしょうよ」
そんな下らない話をしていると蘆谷の屋敷を取り囲むように武装した集団が屯していて黒鴉は「ほらね」と言いたげな顔をする。
取り敢えずでアキトが進んで対話を試みる。
「どうも、皆さんも宮中からの依頼で?」
「…お前達は?」
「四ノ宮の侍です」
一介の侍と聞いてやれやれ顔をされる。
「なんだ侍か、我々は宮仕えの兵、武士といった所だ。少人数な侍は帰りな」
「まあまあ、実力はお墨付き。損はさせませんよ」
ヘラヘラとアキトは笑いつつと刀を見せて大丈夫と語る。武士達は呆れつつも合流を許可する。
「女子供連れて…平良の足を引っ張るなよ?」
平良と名乗った武士達に対してアキトは低姿勢で答える。
「はい、それは勿論!」
「…ならいいんだがな」
調子のいい事を言う男に怪訝な顔をする武士達。それをスルーしてアキトは仲間の元に戻り屋敷への突入に参加する事にするだった。
暫くして屋敷の包囲が完了して平良の大将の声に従い一同突入を開始する。翔達も遅れまいと正門から突入する。
広い蘆谷屋敷には符による罠と式神が配置されていて早速戦闘開始となる。
翔達は罠の起爆符に注意しながら魑魅魍魎の式神を退治する。武士達も式神に若干の苦戦をしていたがしっかり務めは果たしていた。
「蘆谷の者の姿が見えないな…」
翔が溜め息をついて収穫無しな事を呟く。
黒鴉もアキトも同じ事を思っていて頷きつつ会話する。
「もう逃げちゃったとか…?」
「かもな、厄介なことだ」
戦場の様相の蘆谷屋敷だがターゲットの童満をはじめとする一門の姿が何処にも見当たらず困った事になっていた。
式神等を退治し制圧を優先することになり平良と協力して翔達は働く。
「式神退治はお手の物だな」
「大したことない小物ばかりやね」
一同は楽に事を運んでいるとアキトが足を止めて辺りを見渡す。
「陰陽師の屋敷にしては罠や式神がショボいな」
「計画とかしとる時間が無かったんとちゃうか?」
時間ならありそうだがとアキトは考えつつ首を振って気にしないようにする。
「そうか?少し怪しいというか…杞憂ならいいんだが」
寝殿まで制圧が完了し屋敷のほぼ全域が制圧された結果、蘆谷の者達は逃げ出した後だと決まる。
「屋敷に叛逆の証拠など何か残されているかもしれん焼き討ちはせずに調査を続けるぞ」
意外と冷静な判断で平良の武士達は書物等を漁り始める。
翔達は中庭にて集まって今後の話をし合う。
「何とかして手柄を上げたい所だが流石に手詰まりだな…逃げた先なんて想像もできん」
「せやな…屋敷は武士達が調査しとるし…帰ろか?」
残念ながら空振りであったと報告するしかないかと肩を落とす一同だったが翔が喉渇いたと井戸にふらふらと歩み寄る。
「ちょっと敵地の水なんて怪しくて飲めたもんじゃ無いわよ!?」
「そうだけどさ、ちょっとくらい…ん?」
井戸の中を覗き込んだ翔、直後井戸から蜘蛛の身体に鬼の頭をした鬼蜘蛛が現れて翔に襲い掛かる。
「うわっとと」
慌てて刀を抜いて居合一閃鬼蜘蛛の脚を斬り落とす。しかしまだ敵は健在で加勢に入る仲間達。
「敵が残っとたみたいやで!」
「仕方ねぇな」
やれやれと三人は加勢して翔を先頭に各々が技を使い重なって四人の連携攻撃によって難なく鬼蜘蛛を退治するとそれも式神だったようで霧散していく。
「ふぅ、大物が潜んでたな…となると…」
「枯井戸やな」
井戸を確認した四人は秘密の抜け道に気付く。
「ここから脱出出来るんとちゃうか?」
玉藻前が嬉々として声を上げるがアキトは冷めた目をして答える。
「分かった所で目的地は分からないがな…」
「むぅ…取り敢えず報告だけしとくか」
結局逃げた先は不明なままで四人は武士達の頭目に報告する事にする。
「忠盛様、侍達が外への抜け道を見つけたと報告してきました」
「そうか、ご苦労であった。そちらも調査しよう」
平良忠盛は報告を受けてすぐに調査部隊を用意して枯井戸の先を調査するのであった。翔達は忙しなく動き回る武士を見て一目置く。
「私、武士なんてお硬い連中かと思ってたけど意外とフレキシブルなのね」
玉藻前も同じ感想を抱く。
「確かに、しゃんと統率も取れてるし野蛮な連中かと思っとったわ」
意外と酷いことを言う二人に思わず苦笑いが出る翔とアキトなのであった。
捕縛任務は失敗に終わった事を報告する翔達、四ノ宮の者達はガッカリするが武士達に名前を売り込んだ事で宮中での名声がまた少し高まったのではと前向きに捉える事にするのであった。




