陰陽対戦2
式神バトルが繰り広げられる陰陽対戦。精霊術に似たそれをアキトはじっくり観察していた。
(ふむ、精霊術と違って同時に複数体手ぶらで使役出来る辺り便利だな)
熱心に観察しているアキトとは対極的に勝負から興味が失われている玉藻前。
「退屈な試合やな、式神なぁ…精霊みたいなもんやな」
「そうだな、学べるところもあると思うが?」
アキトは飽き性な玉藻前を注意する。その横で翔と黒鴉はどっちが勝つのかと予想し合う。
「強そうな妖怪式神か鬼の数攻めか」
「数は力よね」
「少数精鋭って事もあるんじゃないか?」
拮抗している戦局、童満がまた起爆符を式神の鬼達に仕掛け始める。その動きに景明は気付いて符を構えてタイミングを見計らい符で水の防護壁を張る。童満の爆破技は失敗に終わり式神を減らす結果になる。
作戦が失敗し舌打ちする童満は次々と新たな符を放ち様々な属性の魔法のような技を放つ。
アキトはほうほうと符というものに興味を引かれる。
「便利そうだな。呪術、魔術を書き込んだ符か…」
「魔法使えない私達からしたら確かに便利そうね」
黒鴉も符の便利さに同意する。
「狐火使えるウチには関係あらへんな。外道なやり口のドーマンも好かんし興味がなぁ…」
「アンタねぇ…もしも戦うならって考えて攻略考えてみなさいよ」
「戦うなら…かぁ」
薄目で双方を睨みつける。そして唸る。
「双方本気出しとらんやろ…?」
陰陽師達はまだ底を見せていないと言われて黒鴉は「はえ?」とポカンとする。
アキトは二人はまだデモンストレーションしかしてないだろうなとフッと笑う。
符の呪術の撃ち合いは激しさを増して式神達そっちのけで主人達がバトルを始める。
景明は童満の符を見てから対応した五行の有利な属性を的確にぶつける。
「火、水、木、金、土…陰陽五行か、景明殿は相剋した属性を即座に判断し打ち込んでいる…」
アキトが属性を分析して感心する。
「童満は自身の技に相生の呪術を放っとるな…」
勝負の行く末には興味は無いが知識はちゃんとある玉藻前が補足する。
火は金に、金は木に、木は土に、土は水に、水は火に強いという相剋関係。
火は土に、土は金に、金は水に、水は木に、木は火に力を与える相生関係。
それらを即座に判断する陰陽師達はその道のプロに間違いはないと説明されて翔と黒鴉はポカンとする。
「属性は分かるわ金って何よ?」
「物理的な鉱物や鉄器などの事や、木もそのまま樹木の属性や」
「物理的な鉱物なら土と被って…」
ツッコミを入れる黒鴉だが玉藻前は指を振ってちゃうちゃうとアピールする。
「五行の土は豊かな大地を指しとって鉱物とは別なんや」
「なんか分かったような…納得出来ないような…」
兎に角、陰陽師で大事な五行の扱いに長けている二人はエリートであると玉藻前は注意深く指摘する。
戦いは激しさを増していき熱気が感じられる程になる。勝敗の行方は未だに分からない様相であったが二人の様子から有利不利は感じ取れる。
「明らかに景明殿は余裕な表情をしているな…逆に童満殿は焦っている様子が見て取れるな」
「所詮はフリーランスのアマチュア陰陽師…プロには敵わんっちゅうことやね」
横文字をつらつらと並べる玉藻前に翔はそれじゃ伝わらないだろうとツッコミを今更入れる。
「横文字使っとるのはウチだけちゃうやろー、まあエエわ」
陰陽対戦もいよいよ大詰め、景明は式神と力を合わせて最大の攻撃を仕掛ける。童満はその攻撃を前に防戦一方であり吹き飛ばされ尻もちをつき土がつく。
「勝者!安部景明!」
「おのれ…景明!」
負けた童満は悔しそうに地団駄を踏む。
哀れみに満ちた目線が集まるがアキトは景明と同じ怪訝そうな目を向ける。
「あらは反閇か?…呪術的なものか…」
「禹歩っちゅうやつやね…確かにあり得るな」
本来は厄払いの歩法であるが呪いにも使えると語る玉藻前。景明もそれに気付いていて口元を袖で隠して何か呪文を唱えていた。
まだ陰陽対戦は終わっておらずここからが本当の対決だなんて事は傍から見て分かることではなかった。先程までの表向きのパフォーマンスとは異なり地味な呪術と掛け合いであった。
貴族達は戦いは終わって藤村氏の陰陽師、安部景明こそ最強であり蘆谷の者は所詮外道だと解散していき残された翔達も四ノ宮氏に続いてその場を去ることになる。
頼永も頼嗣も白熱した試合内容に喜んでいたが翔達は童満の最後の抵抗の宮中への呪いを気にしていた。アキトは景明の様子もしっかり確認していて何かあればきっと動くだろうと翔達を安心させておくのであった。
「ま、でも最悪何かあったら俺達も動く事になるかもな?」
「なんやそれ…嫌な予感しかせんわ!」
その日は頼嗣は宮中での書記作業があると護衛はアキトがする事にして一行は屋敷へ戻る事にするのだが公家達に全員がしっかり姿を見られていた。すぐに宮中では奇妙な服装な侍がいると噂になりその中に美人がいるということも知れ渡ることとなるのであった。




