陰陽対戦
中山氏の屋敷の妖魔退治を終えた一行はアキトの深刻そうな顔を見て何かあったのだと悟る。
中山氏にアキトは自分が見た詳細の情報を説明する。
「な、何!?妖魔ではなく陰陽師の式神だと!?…黄色い陰陽服か…蘆谷の手の者か…?」
「ほらな言うたやろ、陰陽師なんて碌なもんちゃうわ」
玉藻前が鬼の首を取ったように声を上げる。
黒鴉がアシヤという聞き覚えのあるフレーズに口に指を当てて考え込む。
「アシヤって言ったら陰陽師の悪者代表みたいなものよね…でもなんでこんな襲撃を…?」
「貴族の争い事に首を突っ込んでも良いことはないぜ?それよりも中山氏の今後を考えねぇと」
四人は奮闘したが今後も続くようなら別の対策を考える必要があるとアキトは語り全員がその通りだと頭を悩ませる。
「取り敢えず夜明けまでは様子見して細かい事は中山氏本人に決めてもらうとしようか」
一同は疲弊しながらも一晩中守りを固めるのであった。
翌朝、日の出と共に任を解かれ解散することになる。
一同中山氏を心配するが案はあるらしくそれ以上は首を突っ込まない事にするのであった。
「ものごっつい疲れたで…」
「寝ずの番だったからな。屋敷に戻ったらゆっくり休め」
アキトに言われるがまま三人は屋敷に戻るなりぐったりとして泥のように眠るのだった。
一応状況の報告をしようとアキトは四ノ宮の屋敷に訪れる。
「うむ、その様子なら任務は完了したようだな」
頼永が手を叩いて喜ぶがアキトの報告を聞いて少し怪訝な顔をする。
「蘆谷の陰陽師の暗躍…か」
「蘆谷ってどんな組織なのですか?」
「うむ、蘆谷とは在野の陰陽師、弟子を抱えていて雇われては裏で活動をする者たちだ」
つまり何処にも属さないフリーの陰陽師集団とのことである。
「それが動いているとなると…安部が動くか」
「藤村お抱えの?」
「そうだ、安部景明率いる都の陰陽師だ」
気になるが侍の仕事とは無縁の陰陽対戦、アキトが望んでも観ることは叶わないだろうと思い肩を落とす。
「ちょっかい出された相手を直接殴れないのは残念でならないよ」
「血の気が多いな?水原の侍達もそうだが武者というのはそういうものなのか?」
頼永に笑われてしまいアキトは頭を掻く。
「ケジメってやつですよ…売られた喧嘩は最後まで…ってやつです」
「怖い事を言う。いや、舐められない為の自戒の言葉か?」
貴族と侍は持ちつ持たれつだが根本的に違う理念で動いていると理解して頼永は険しい顔をする。
「何れ持ちつ持たれつの関係が崩れるときが来るのかもな…」
アキトは頬を掻いていつか来る武士の時代を思い笑えないなと考えるのであった。
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次の依頼が舞い込んだのは翌日、朝から護衛を頼まれて翔が選出されて頼嗣の公務の為に宮中までの護衛をするのであった。
中山氏の件が既に宮中にも広まっていてピリついた空気感の中で宮中まで護衛を完了した翔は為義と出会う。
「む、アキトとは別の侍か…」
「ええっと貴方は?」
「水原為義、藤村殿に仕える侍だ」
アキトより一回りは若い翔に為義は上から目線で語る。
「陰陽師の呪いごときにビビる連中の気が知れん」
「でも事実ですよね、陰陽対戦がどうたらって聞いてますが…」
「ふん、下らんな。興味無いわ!」
為義は吐き捨てて宮中の門を去っていく。翔は何だったのかと頬を掻いてアキトに言われた通り昼過ぎまで時間を潰すことにする。
宮中ではどんな事が話し合われているのかと翔は考えてしまうが自分の預かり知らぬ話であってきっと関わる事はないのだろうと軽く肩を落とすのだった。
しばらくの間は都の外の餓鬼退治と護衛の日々が続き陰陽師の事は翔達から忘れられようとしていた。しかし、話が動いたのは一週間後。
安部と蘆谷の陰陽対戦を観衆のもと執り行なうと発布される。
「当然見るよな?」
アキトの言葉に乗り気の三人。四ノ宮の案内の元宮中に入る事が出来た。
どんな戦いが繰り広げられるのかとワクワクしながら陰陽師の御前試合というものを皆で観察する。
見覚えのある白と紫の陰陽服を纏った安部景明と黄と黒の陰陽服の蘆谷童満と呼ばれた陰陽師が対峙しあっていた。
どんな戦いが始まるのかと固唾を飲んで見守る翔達。
「はじめ!」
掛け声に合わせて二人は符を構えて念を唱え双方鬼の式神を呼び出し殴り合わせる。普段は見ることの出来ない陰陽師の秘儀に観衆は「おお」と歓声が上がる。
「なんや精霊術みたいなもんやな」
玉藻前が見知った戦いにちょっとがっかりしたように後ろ手を組む。
式神は一進一退の攻防を見せて蘆谷が先に符を構えて戦いにちょっかいを入れる。
「発破!」
ドンッと爆発を起こし景明の式神が後方に飛ばされる。
「汚え!」
ブーイングのようなものが上がるが戦いは中断される事なく続く。
「やりますね…ではコチラも!」
景明はほくそ笑みながら符を三枚構え拮抗していた戦局を一気に動かすように式神を呼び出す。
一体は火車、一体は雄牛、そして狐の三体を同時に使役する。
蘆谷も負けじと更に複数の鬼を呼び出してカラフルな絵面にするのであった。




