妖魔騒動
昼過ぎになり会合が終わったのか宮中の門戸から人がぞろぞろと出て来てアキトは頼嗣を待つ。
「ああ、アキト殿。待っていたのですね」
「護衛の仕事ならちゃんと全うしないとな」
アキトの生真面目な言葉に頼嗣は一安心したようにホッとしたような顔をする。
帰路に付きながら頼嗣は次の仕事の話をする。
「君達にやってもらいたい事がある」
「やってもらいたい事…?」
頼嗣からは都を脅かす妖魔について相談される。
「妖魔…?それは陰陽師の仕事じゃあないのか?」
「藤村殿のお抱え陰陽師だけではどうにもならない事もあります」
「…ああ、まぁ主からの命なら断る理由はないな」
表向きの理由と裏の目論見など察してアキトは前向きに答えるのであった。
屋敷に戻ってきたアキト、思ってたよりも早い帰宅に皆面食らう。
「あら、お早いお帰りね」
「公務は昼過ぎには終わるそうだ。朝早い代わりに終わるのも早いホワイトだな」
「電気が無いから日の出と日の入りで一日が終わるのね…ホワイト過ぎるわね」
黒鴉はビジネスをするに当たってやりづらいと愚痴をこぼす。
アキトは思い出したように妖魔退治について話をする。
「そうだ、頼嗣殿から依頼が入ったぞ?妖魔退治だ」
翔が頭の上にハテナを浮かべて質問する。
「妖魔…?それってなんなんですか?」
「妖怪、魑魅魍魎、鬼だとかそういう類の敵性存在…だと思う」
玉藻前が話を聞いて口を尖らせる。
「そういうんのは陰陽師さまのお仕事ちゃうんか?」
「色々あるんだよ。成り上がるための思惑とかさ」
「まぁええわ、つまり陰陽師共の鼻を明かす事ができるんやろ?」
私怨の籠もった言葉に翔は苦笑いしてしまう。玉藻前のやる気を見てアキトは依頼を受けて良かったとほくそ笑むのだった。
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夕刻、翔達は早速妖魔でお悩みの貴族の屋敷にやって来る。
「なるほど貴族同士の話か、藤村氏に頼りたくない理由ってのもあるんだろうな」
中山 氏直と呼ばれる貴族に屋敷内を案内される。結構広い屋敷に四人は手分けして警備に当たる事にする。
「使用人が既に数人殺されている…侍達も逃げ出し我が命も危うく気が気でない…しっかり頼んだぞ」
そう言伝を残して中山氏は屋敷の奥に引き篭もってしまった。
「さぁて、なにが出てくるやら」
それぞれの持ち場について一人になった北対の玉藻前は少し浮き足立っているようであった。
日も落ちて星明かりだけになった所で餓鬼の群れが現れてキタキタと刀を意気揚々と抜く。
「こないな街中でも出てくるなんて行儀のなっとらんやっちゃ!」
玉藻前は振り返らずにズバズバと切り捨てていくのだった。
別の場所では黒鴉が庭園の中で蜘蛛の怪物と対峙していた。
「どこにこんな図体の蜘蛛が潜んでたのかしら?…まあいいわ、切り捨て御免!」
こちらもズバッと剣で一刀両断、軽く退治してしまう。
「ハズレだったかしら…?大したことないわね」
更に別の場所では翔が屋敷の東対廊下で大蛇の妖魔と遭遇する。チロチロと舌を出して翔を睨みつけてくる蛇に動ずる事なく刀を抜く。
「人も丸呑み出来そうな大蛇…これが妖魔か…」
牙を剥いて襲いかかってくる蛇の攻撃をサッと回避しながら翔はカウンターで一撃、首を斬り飛ばすと蛇は霧散していく。
「餓鬼と同じ消え方、片付けしなくて済む分楽だな」
残心しながらそんな感想を呟くのであった。
最後にアキト、中山氏が隠れた寝殿を守っていたが目の前に金棒担いだ赤鬼が現れる。
「鬼が相手か、ここは通さないぜ」
鬼は無言のまま金棒を振り上げ襲い掛かってくる。屋敷を壊されたら困るとアキトは金棒を羅刹の能力を発揮し弾き返す。
「崩打!」
更に鬼の姿勢を崩し首目掛けて斬撃波を飛ばし一刀で切り落とす。
この鬼も翔達が出会った妖魔同様に霧散していき違和感を感じたアキトは顎を擦る。
「これは…式神か?妖魔じゃねえなこりゃあ」
騒ぎの原因を察したアキトは周囲を注意深く見渡す。
「首謀者は逃げた後か…」
警備をしていた翔が合流してきてアキトは丁度いいと経緯を説明する。
「翔、ここを頼む。俺はこの騒動の犯人を探す」
「は、犯人?」
「こりゃ妖魔じゃない、式神だ」
いきなりな言葉に翔は呆気に取られるがアキトに寝殿の守りを托されて仕方なさそうに警戒を始める。
アキトはその場を飛び出して勘と微かな道力。魔力の流れを感じ取って敵を追う。
屋敷の入り口近くにまで来たアキトの前に黄色の陰陽服を纏った男と遭遇する。
「見つけたぞ、逃さない」
「っち、面倒な事になった…」
男は大きく舌打ちして符を指に挟みアキトに向かって投げつける。
「発破!」
ドカンッと符が爆発してアキトの目眩ましをする。突然の事にアキトは身構え硬直して一瞬の隙が生まれる。その隙を突いて陰陽師は逃げ出してしまいアキトの捕縛縄は空を切るのであった。
「しまった…服の色だけじゃ流石にどこの陰陽師かは分からないだろうな…クソッ」
油断し失態をしてしまったと反省するアキト、その後中山邸の警備は日の出まで続くのであった。




