四ノ宮
都に入った一行はまずどうするかとアキトは翔に意見を求める。
「どうするって…どうしたらいい?」
翔は困った顔をして黒鴉と玉藻前を見るが二人とも分からないと首を振る。アキトは仕方ないなと説明を始める。
「まず世界感の違いから酒場とかそういうものが使えない、王様への謁見何かも無理だ」
「じゃあどうするんですか?」
「貴族社会なら貴族に仕えればいい」
急に丁稚奉公だなんて無理だろうと翔はまた困り顔をしてしまう。
「力ある者としてある程度それを利用するのは悪いことじゃあないだろう?」
黒鴉が苦しい言い訳だとして微妙な顔をする。
「都合いいわね…」
「都合良く考えるんだよ。細かい事はさ」
アキトはのらりくらりとした返答をしてさっさと適当な貴族に仕えようと翔に決めさせる。
「じゃ、じゃあここから一番近い所…」
アキトと黒鴉は微妙な反応をする。
「都の中心から離れてる貴族なんて没落貴族でしょ…?大丈夫なのかしら…」
「成り上がりプレイってか?まぁいいんじゃないか?」
貴族の御屋敷を見つけて訪ねることにするのだった。
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「我が四ノ宮に仕えたいと…?」
アキトがゴマすりしながら自分達を売り込みする。
「はい、こう見えて鬼退治した実績もあります。どうです?雇いませんか?」
「怪しい格好をしている連中と思ったが…ふむ…鬼の討伐をしたのか…」
藤村の陰陽師達と競い合いできるかと小声で呟き玉藻前がピクリと反応する。
「なんや、陰陽師と張り合いするんか!ええで!ヤッたるわ!」
腕まくりする玉藻前に四ノ宮の者はいやいやと冗談であると語る。
「藤村様に逆らうなどと御冗談を…」
「相当な権力者なんだな藤村ってのは…」
黒鴉が翔の脇腹を突いて「藤原氏」と地球での似た立場の事を告げ口する。
「ああ、成る程理解した」
「取り敢えず雇ってもらえるかどうか…」
アキトが結論を求めると四ノ宮の者は困り顔をする。
「しかし今四ノ宮に人を雇える程の力が…」
「飯と宿があればそれでいい。それで仕事をする」
「…ふむ、わかった。君達を一時受け入れしよう。依頼をこなしてくれれば正式に我が四ノ宮の侍として受け入れよう」
ひとまず依頼が入るまで小さな屋敷を借りる事になり翔達は都での居場所を手に入れるのであった。
ーーーーー
屋敷にて休息を取る一行は今後の事について話し合いをしていた。
「楽に屋敷を手に入れられたわね」
「仕事をしないといけないけどな?」
「具体的に何するのよ?」
仕事とはと聞かれてアキトは頭を掻いて答える。
「そりゃあ…侍のお仕事だろ?」
「侍って何よ?」
「護衛とか争い事を引き受けたりするんじゃあないか?」
いつも通りな厄介事を引き受けるだけだと語るので黒鴉と玉藻前は面倒くさそうな顔をする。
「じゃあアキトと浜松がやればいいわね」
「せやな、血なまぐさいのは男仕事やね」
楽をしようとするなと翔がツッコミを入れるのだった。
四ノ宮から仕事の依頼が届いたのは翌々日。翔達は呼び出しを受けて四ノ宮の本家を訪れる。
「都の外に餓鬼が湧いている。討伐をお願いする」
「分かった。早速取り掛かろう」
二つ返事でアキトが依頼を受けて一行は早速都の外に出て餓鬼が発見された区域に出撃する。
「餓鬼ねぇ…ゴブリン的な?」
黒鴉の疑問に玉藻前が説明する。
「常に飢えてる亡者の事や、小鬼とはちょいと違うわ」
「なるほど亡者というと…グールって事ね」
そういう事と玉藻前は鼻を鳴らし知的振る。
現地に到着すると上半身はガリガリで腹が膨れている文献にある餓鬼そのものが闊歩して休養中の田畑の土を掘り返しては口に含んでいた。
「ホンマの餓鬼やね…」
「さて、田畑を荒らしているようだしさっさと退治しようか」
アキトが刀を抜いて三人も武器を手に取る。餓鬼達は四人を見ると口をあんぐり広げてケタケタ笑い迫ってくる。四人は散開、餓鬼を切り捨てはじめる。
「大したことないわね!」
「ウチらの相手には小物過ぎやな」
余裕のある戦い振りを披露して競い合うように餓鬼を倒し続けて周囲から綺麗に一掃する。死体も残らない自然に優しい幽鬼であった。
「楽な仕事で良かったな」
「ちょっと頑張り過ぎたかな…」
「この程度でか?冗談言うなよ」
アキトに笑われる翔はハハハと愛想笑いする。
「ま、でもこんなもんよね。鬼退治に比べたら余裕よね」
「せやな、所詮は餓鬼やからなぁー」
さっさと報告してしまおうと四人がその場を去ろうとするとドシンと背後から嫌な音がする。
振り返ると一際大柄な餓鬼が現れてヨダレを垂らしていた。それを見てアキトが軽口を呟く。
「ハハッ大物が残ってたな」
巨大餓鬼は距離的に近かった翔を狙って掴みかかる。翔は刀を素早く抜いて回避し突進するように駆け出す。
「ハァ!」
次の瞬間には一閃の下に巨大餓鬼の首を切り落とす。
「少しは報告書に出来そうな敵だったかな…?」
「まぁデカいだけやったけどな」
楽に討伐した事には変わり無いなと笑いながら都へと一行は帰還するのであった。




