鬼退治
鬼退治に南の山にやってきた一行、黒鴉は山登りするのかと若干顔を顰める。
「山に住み着くなんて物好きな鬼ね…」
玉藻前はそんな不思議なことなのかと小首を傾げる。
「別に変な事やないやろ?自然の要塞を利用しとるんやろ?」
「自然の要塞ね…確かにそうかもね」
向かうのに辟易とする時点でそれなりに効果があるようだと黒鴉は納得する。
翔達はそんなくだらない雑談をしながら山を登ると中腹に廃寺のような場所を見つける。
「住み着くにはちょうど良さそうな廃屋ね」
アキトは冗談めいて仲間達に尋ねる。
「呼び掛けてみるか?」
「先制攻撃とかじゃないの?」
「おいおい、建物ごと壊すってか?相変わらず豪快だな」
黒鴉の言葉にアキトは苦笑いする。そうこうしていると外の騒がしさに気付いた緑の肌の鬼が廃寺から出てくる。
「騒がしい贄だな…女だけじゃなく要らん男まで付いて…どうせなら酒にしろ」
「贄じゃないわよ!アンタを退治しに来たのよ!」
生贄扱いされて黒鴉と玉藻前は憤慨する。
「退治ィ?舐められてるなァ…この森童子様を!」
「森だか林だか知らないけど都落ちした奴のくせにえらい自信ね」
「テメェ!」
黒鴉の挑発に乗って森童子は素早く拳を振りかざし突進してくる。四人は身構えて攻撃をサッと回避する。
「チィ!死んどけや!」
ブチギレてる森童子を見て翔が黒鴉にツッコミを入れる。
「黒鴉、怒らせてどうするんだよ」
「どうせ倒すんだから同じよ同じ」
武器を抜く四人を見て森童子は一番小柄な玉藻前に狙いを定めて攻めてくる。
「オラァ!」
「狐火!」
ボッと火を放ち敵を牽制する。森童子は炎に恐れる事なく突っ込んでいく。
攻撃は空を切るが何故か森童子は同じ所を殴り空を切り続ける。
「何してんだ…?」
アキトが呆れたように見つめると玉藻前は余裕な表情で化かしてやったと指で狐を作っておちゃらける。
「ウチの精霊ドリスで幻覚を見せとるのよ、コンコン」
玉藻前はリスを呼び出してニヤリと笑う。
森童子は玉藻前をボコボコにする幻覚を見せられ一人倒したと勘違いさせられる。
「ハッハッハ!どうだ!」
「残念やったな。それは幻覚やでー」
まさに狐に化かされた森童子は驚きと怒りで顔を歪める。
「貴様らァ!」
完全に手玉に取られている森童子、今回は玉藻前一人で倒せると三人は既に傍観モードになっていて玉藻前が「仕方ないなぁ」と小刀を構える。
「ウチ一人でやったるわ。ほれほれ、次は当たるとええなぁ」
「うるせぇ!黙りやがれ!」
踊るように立ち回る玉藻前に翻弄される森童子、玉藻前の成長っぷりに翔は面食らう。
「玉藻のやつだいぶ強くなってるな」
「そりゃそうだろう。戰の花形選手の一人だぞ」
超実戦的、現代のコロッセオとも言える戰の異世界代表選手でもある玉藻前は以前にも増して強く逞しくなっていた。
「浜松も戰の選手したくなった?」
「いや、それとこれは話は別だ…」
「アンタ裏選手としての人気高いんだけどね…」
普段は出てこない裏の世界の存在扱いされて翔は少し複雑な顔をするのであった。
森童子は完全に弄ばれるように狐火に踊らされる。
「そろそろ終わらせたる」
「うるせぇ!死ぬのはテメェだ!」
鬼としてのプライドで抵抗する森童子だったが首を晒して突進してしまい玉藻前は軽くカウンターで首を切り落として森童子を倒してしまうのであった。
「鬼退治これにて終い…なーんてな」
「強くなったな」
翔が玉藻前を激励する。
「ホンマか?向こうのウチに比べたらまだまだやし…アッキーの子供の伯理はこんなもんちゃうし…」
色々と比較してまだまだ足りないとグッと拳を握り締める玉藻前だった。
森童子の死体をどうするかとアキトと黒鴉が相談していると陰陽師のような服を着た一団がやって来る。
「お前達何者だ?ここで…」
陰陽師達は森童子の死体を見て翔達がやったのかとざわつく。
「景明様、どうやらこの者たちが森童子を仕留めたようです」
景明と呼ばれた烏帽子に陰陽服を纏ったリーダー格の男は小さく頷く。
「そのようだな。見事だ」
この集団は都から逃げてきた悪鬼を追ってきたようであった。
「スマンなぁ。先に退治させてもろたわ」
玉藻前がドヤ顔をしながら陰陽師達に自分がやったとアピールする。
「こんな小娘が…!」
景明と呼ばれた者以外がざわざわする。しかし景明はフッと笑い玉藻前の正体を軽々と見破る。
「子狐の妖魔…いやそちらの者たちの式神か?」
子狐の式神等と言われて玉藻前は憤慨する。
「子狐ちゃうわ!これでも大妖怪!…の名前を模した仙狐や!」
「ほう、仙狐…まぁ森童子を討伐する実力は持ち合わせているようだな」
玉藻前は小馬鹿にしてきた景明にムカッとするがアキトがまあまあと宥めつつ陰陽師一団に後処理を任せる事にする。
「鬼の処理、任せちゃってもいいですか?俺らそういう事には疎くって」
景明はチラッと部下を見た後「分かりました」と請け負ってくれるのであった。
ラッキーだったと翔達は村に朗報を持ち帰る事にするのであった。




