第二の世界
新たな旅が始まり翔達はぶっきらぼうに異世界に放流される。
慣れているアキトに比べて初めての玉藻前は耳をピコピコさせながら何もない街道に放り出されたことにツッコミを入れる。
「何もあらへんやん!」
「落ち着けいつもの事だ」
「なんで落ち着いてられんねん!ウチら朝メシ抜いてきたんやで!?」
翔と黒鴉もそれを思い出してお腹を押さえる。
「しまった…そうだった」
「文字通り道草食えばいい。ある程度食えるもん選定してやる」
ワイルド過ぎると黒鴉と玉藻前にサクッとツッコミを入れられてアキトは口を尖らせる。
「とは言ってもなぁ都市に入っても金はねぇぞ?」
三人は一気に渋い顔になってどうするんだよと若干のパニックになる。
「全く、俺が居ないと何も出来ないな…?」
「うっ、否定できません…」
翔は素直に認めるが女性陣はアキトを傲慢だと責める。翔は苦笑いして女性陣を宥めながら移動を提案する。
「と、取り敢えず移動しようか、どんな世界かも分からないしな」
「そうね、口論してても仕方ないわね。こういう時に物の持ち込み出来てれば売ってお金に出来るのに」
黒鴉は商売人っぽい事を言って何か持ってないかポケットをチェックする。しかし空っぽで肩を落とす。
玉藻前も真似してゴソゴソと漁ると飴玉が出て来てラッキーと口に含む。
「キャンディなんて子供ね…」
「何や?羨ましいんか?」
「誰がっ!もっとマシなもの入れときなさいよ!」
整備されている街道を進む一行、アキトは地面を確認してフムと早速何か分析を始める。翔は何を考えているのかと質問する。
「文化レベルを推測してるのさ、古代、中世、近代…道一つからでも推測できるもんだぜ?」
「ちなみにこの世界の文化レベルは…?」
「中世よりも少し古いかもな…石畳ですらないし…まぁ気楽に行こう」
アキトは所詮は分析だからと笑って次に周囲の様子を探る。
「モンスターは闊歩してない…か」
その後もアキトは色々と情報を収集しながら先頭を歩き一行は木の柵で囲われた村に辿り着く。藁葺き屋根の古民家が並んでいてアキトは玉藻前に耳と尻尾は隠すように伝える。
「取り敢えず人に化けとけ、騒ぎになっても困る」
「ほいよ」
変化するが一行の服装の方が目立つんじゃないかとツッコミを受けるがアキトは任せとけと黒コートをピシッと決めて村に堂々と入る。
古い布の服を着た村の人々は異邦人に警戒した様子でジロジロと一行を見てくる。
「ジロジロ見られて感じ悪いわね…」
「仕方無いだろ実際異邦人だしな」
お腹が空いてイライラしている黒鴉は軽く舌打ちして現地民にガン飛ばししそうになって翔に止められる。
「さて、翔。お前ならこれからどうする?」
「え、えーっと酒場で情報収集?」
「時代が違けりゃそれでいいんだがな」
じゃあどうするのかと黒鴉はもったいぶるアキトに突っかかる。
「この場合は旅人として村の有力者に接触する。が正解だ」
勿論例外はあるがこのパターンが活きるだろうとアキトは一番大きな小屋を目指す。渋々一同アキトに続く。
飄々とした雰囲気を纏ってアキトは村長宅の門戸を叩いてまるで顔見知りかのようにフランクに挨拶する。
「どうもこんにちは旅の者なんですけれどお話よろしいですか?」
言語は伝わり村長は異様な服装の旅人を警戒しつつアキトの言葉に答える。
「何の用だね…?」
「単刀直入に、食事と寝床が欲しい。勿論対価として困り事を解決したりする。路銀は切らしてて…」
「食事?寝床?…ふむ。困り事か…」
どうやら話は聞いてもらえそうな雰囲気で翔達は門前払いじゃなくて良かったとホッとする。
「南の山に鬼が住み着いとる。それを退治して欲しい」
「鬼か、引き受けた。でも食事は前払いでイイっすか?朝メシ抜いてて…」
村長は空腹そうな後ろの三人を見て軽く溜め息をついて食事を提供しようと家の中に招き入れる。
質素なスープとおにぎりが出て来て翔達はがっつくように食べる。その間アキトは村長から鬼の情報を尋ねる。
「どんな鬼が住み着いているんですか?」
「最近都から逃げてきた悪鬼よ…村の娘を喰い物にしようと脅しを掛けてきていて丁度困っておったのよ…」
少しズレた返答にアキトは頬を掻くが玉藻前が想像で答える。
「悪鬼言うたら腕っぷしが強くて野蛮で粗暴なイメージしやすい鬼やろうな、能力なんかは知らんけど」
「ええ、その通りです。我々も脅しを掛けられただけでその実力までは…」
退治すればいいのは一体だけだと言われてアキトは余裕だろうと頷いて刀をチラッと見せる。
「お侍さまでしたか!」
「そんな所だ。しかし都か…行く価値はあるな」
アキトは討伐した後の事を既に視野に入れてウンウンと頷いていた。
食事を済ませた翔達も準備万端だとアキトに伝える。
「目標は南の山、南は…あっちでいいんだよな?」
外に出たアキトは天を見て勘で指差す。村長は微妙な顔をしてあっちだと少し違う方角を指差す。
「よーし、そうと分かれば早速行くぞー」
本当に大丈夫なのかと村長は不安そうに翔達を見送るのであった。




