プリマ・トゥ・アルサディエル
「なんで早朝なわけ?」
黒鴉はアキトの早朝奇襲作戦に対して疑問を口にする。
「夜襲は既にやってるし、人が一番油断する時間帯は夜明けだったりする」
「本当かしら…テキトーな事言って煙に巻いてない?」
アキトはそんな事はないぞと黒鴉の言葉を否定する。
「軍人なら確かに二十四時間しっかり気を引き締めるものだが長い期間相手はこちらが攻めない姿勢でいるのを見て油断が生まれているはずだ」
「希望的観測!?」
「後は夜明けという精神的余裕が生まれる瞬間を狙うのは間違ってないだろう?」
アキトの理屈は理解出来るが納得や共感は難しいと黒鴉は口を尖らせるが他に案が出ないのでアキトの作戦に付き従うのであった。
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日の出前、翔達は行軍を開始する。
少数精鋭で山道を進み下山し平野を素早く移動する。帝国軍が気付かない内に闇夜に紛れて大接近し日が昇ると同時に奇襲を仕掛ける事に成功する。
「て、敵襲ぅー!」
アキトの想定通り来るはずのないという油断から奇襲攻撃に帝国軍は対応が遅れる。
しかし数だけは多い帝国軍の立て直しは早いだろうとアキトは翔達に兵器だけを狙うように指示を出す。その巨大兵器は帝国軍の陣に鎮座していた。
「で、デカい…!」
全高十メートルはあるレンガ調の要塞のような件の兵器『プリマ・トゥ・アルサディエル』に翔達は圧倒される。
どうやって破壊するのか、どの様に攻撃してくるのか分からず困惑していると連合軍兵士達が弓矢を放ち兵器を攻撃する。
矢が兵器に命中した直後兵器から反撃のビームが放たれて帝国軍兵ごと連合軍兵を吹き飛ばす。
「的確に反撃してきやがった!…いや、全部巻き込んでるな…」
アキトが冷静に分析していて翔は焦りつつツッコミを入れる。
「冷静に分析してる場合ですか!?どうするんですか!」
「意地でも破壊する!こんなもんが攻め込んできたら連合軍は壊滅する!」
どうやって突破するのかと翔達は唖然とするがアキトは刀を抜いて氷雨を呼び出す。色んな角度から氷柱を飛ばしアキト自身に反撃が飛ばない様にする。
反撃のビームが飛び交い帝国軍が逆に被害を被る。アキトの攻撃を見て翔達も攻撃に参加する。
「要は直線的に攻撃しなければいいわけよね!」
黒鴉はそう言ってバハムートを呼び出し曲射で水を敵におっ被せる。ずぶ濡れになる兵器を見てアキトは一気に凍結させる。
「どうだ!これで身動きは取れないはずだ!大技叩き込め!」
翔の焰鬼が氷を砕き炎の拳を兵器に叩き込む。反撃のビームが放たれるが翔は反撃より早く精霊を入れ替えて雷怨を呼び出す。
「黒鴉!もう一度水を!」
「分かってるわよ!巻き込まれないでよね!」
もう一度水をおっ被せ今度は翔が雷撃を放つ。その攻撃に角度など存在せず反撃のビームは放たれず兵器は大きく揺らぐ。
「効いてる!しかも反撃が来ないぞ!」
攻略の糸口を掴んだ翔達は同様の技で攻め立てる。帝国軍は兵器が攻略されつつあると知り虎の子を発動させる。兵器は大きく揺らぐと同時に変形が始まる。
レンガのようなパーツが反転していきレンガ調だった表面が均一化されデコボコのないツルツルしたものになる。
「様子が変わった!気をつけろ!」
アキトの声に翔達は気を引き締めて警戒しながら攻撃を放つ。兵器は反撃のビームではなくバリアを展開し攻撃を寄せ付けない。
「攻撃が通らない!」
「ちょっと何よそれ!ズルくない!?」
徹底的な守りを敷く兵器に翔達は困惑する。
「マズいなこりゃあ…」
せっかく帝国軍が引け腰だったのに兵器が破壊出来ないとなると一気にピンチになるとアキトは必死に攻略方法を考える。
「兎に角まずは何でも試さねぇと!」
抜刀して斬り込みつつ精霊魔法を放つ。当然バリアに弾かれるも生身はバリアをすり抜けて刀が兵器に命中する。
「バリアの内側に入れるなら!」
キンッと音を立てて硬い外殻に弾かれるも物理攻撃なら通せると分かる。
翔達三人も物理攻撃に移り精霊を呼び出して突進する。バハムートの体当たりと焰鬼の拳が兵器にヒットし大きくグラつく。
「届いた!ヨシッこのまま攻め続ける!」
第二形態でも止められないかと帝国軍は翔達にビビるがまだ次があると第三形態に変化させる。今度は穴が幾つも均等に開き砲台化する。
「くたばれ連合軍共!」
一瞬の間を置いてアキトはチャンスだと声を上げる。帝国軍の思惑とは別にバリアが無くなったのならやりたい放題だと翔達はコンビネーション技で一気に砲台の穴を氷漬けにして埋めてしまう。
「バリアがないならコッチのもんよ!バハムート!」
「よし!氷雨!敵を氷漬けにしちまえ!」
完全に機能を封じられた兵器は翔達の手によってボコボコにされ破壊されてしまうのであった。
帝国軍はまさか少数の部隊に最後の兵器が破壊されるとは夢にも思わず敗走、陣を後退させていくのであった。
早朝の戦闘は連合軍にも被害を出したが兵器を破壊し帝国軍を撤退させる事に成功するという大金星を上げたのであった。




