帝国軍を望む
夕刻、山から戻った翔達一行は依頼の報告を済ませて酒場でアキトと合流する。
「お疲れさん。息抜きになったか?」
「何が息抜きよ!とんでもなく疲れたわよ!」
黒鴉よりも後ろの翔達の方が疲れた顔をしていて色々察するアキト。
「まぁ、なんだ?無事ならそれでいいからさ」
「あぁ何か腹立つ!その余裕な澄まし顔!」
アキトは八つ当たりに近い黒鴉の言動に苦笑いしつつ話を進める。
「レオンと会って話をしてきた。兵器は確認されてないが帝国軍に動きがあるようだ」
「動きねぇ…兵器の確認がされない以上は私達が動く必要ないんじゃないかしら?」
黒鴉の言葉にアキトは念の為だとお願いするようにウインクする。翔達は顔を見合わせて気色悪いとツッコミを入れつつ承諾するのであった。
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翌朝、翔達は朝早くから街を出て駐屯地へと出向く。
「朝早くに出る必要ありますか?」
翔が一応疑問を口にする。アキトはこれも念の為と何事も動くなら早い方がいいと説明する。
「まあそうですよね。帝国軍がいつ動くか分かりませんし」
黒姫は一定の理解を示して同意する。
「こちらから攻めるって手もあるのよ?兵器さえ確認出来ればね」
「特性も掴めてないのに好戦的だな…」
翔は黒鴉の喧嘩っ早い性格に苦い顔をする。
四人はそんな雑談をしながら連合軍駐屯地に入る。
「やあアキト殿、各地での戦果。その報告を聞いて驚きましたよ」
レオンがにこやかに出迎えてくれる。
「俺一人の成果じゃないですよ。それよりも帝国軍に動きは?」
「帝国軍は平野に陣を展開、こちらを牽制するように兵団を巡回させている。我々も斥候を出して調査しているが…今の所他所で話に出ていた兵器のようなものは確認出来ていないです」
兵器は確認出来なくても帝国軍は相当な量動いているとして助力を求められて翔達はモンスター退治なら可能だがと返答に困る。
兵器が確認出来ないなら介入は難しいのではないかと翔はアキトに尋ねるが規模が大きいなら兵器も出てくるはずだと見て承諾するのであった。
一行は小高い丘から帝国軍の一部を望む。
「ワラワラと居るわね…」
「そうですね…モンスターの使役もされているようでそっちは相手をせざるおえないと思います」
陣容の外側にはモンスターが配置されていてそこなら自分達の出番になるのではないかと考えるも翔とアキトはモンスターだけで済めばいいなと危惧するのだった。
「最前線の陣容はわざと見せつけてきている。後詰めは倍以上居ると見た方がいい」
レオンの忠告に敵の規模に黒鴉は頭を抱える。
「後詰め合わせたら…おおよそ一万規模の兵を?!どんだけよ?!」
「敵も本気と言う訳だ」
人数差は倍以上とレオンは苦々しい顔をする。
「地の利を生かしても包囲戦まで行かれたら勝てない…力を貸してほしい」
「将軍に頭下げられちゃあ迷ってられねぇな」
アキトは翔と黒鴉の肩を叩いてやるぞと促す。黒姫は真正面からやっても勝ち目はないと無茶は辞めるように進言する。
「そりゃ真正面からやったらな…作戦ならある」
親指立ててアキトは自信をアピールする。流石に不安になった黒鴉が具体案を尋ねる。
「具体的にはどうするつもり?」
「地の利を生かして勝つ。丁度良く相手は山道を通らないといけない…そこを攻める」
「付け焼き刃ねぇ…まぁそれしかなさそうだけど」
駐屯地までの山道、そこが決戦の舞台だとアキトは説明し安直と思いつつもそれに乗る一行、挟撃の心配もなく高い位置も取れる山道による迎撃戦に連合軍も乗っかり作戦が練られるのだった。
とはいえ敵が動くのを待ち続ける事になる為精神的疲弊は免れないと斥候と遊撃隊は忙しなくなる。
「モンスター部隊をつつくだけでもしてないと敵もどっしり構えていやがるからな」
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待ち構えること二日、兵糧の問題もあってそろそろ動くだろうと算段していると帝国軍に動きがあったと報告が入る。
「来たか、向こうも万全な体制だろう。気を抜くな」
「言われなくても!」
翔と黒鴉そしてアキトと少数の兵士が前線の守りを行い連合軍と黒姫はバックアップの用意を整えて帝国軍を迎え撃つ。
早速先行してきたモンスター部隊との戦闘が開始され前線の三人は余裕のある戦いを繰り広げる。
ゴブリンやコボルトなど亜人系モンスターの軍勢を押し退ける翔達、帝国軍もモンスターだけでは勝負にならないとすぐに兵団が動き始める。
「我々帝国軍も舐められたものだ、少数の手勢に苦戦させられるなどとは」
弓兵部隊を引き連れて向かってくる。アキトは氷壁を展開、分断を試みる。
「おのれ小癪な!小国の集まりの分際でぇ!クソッ引け!引けー!」
分断され弓矢が阻まれ帝国軍の戦線は一時崩壊、撤退していくのであった。
「一網打尽とは行かなかったが数にモノを言わせる戦はできないと相手も悟っただろうな」
アキトはやれやれ顔をする。翔はハッとする。
「兵器を出させる為の作戦だったんですか!?」
「そらそうよ、圧倒的勝利を収めるにはここは手狭すぎる。敵を撤退させるのが限度だよ」
アキトの飄々とした受け答えに一同呆れるしかなかった。




