仕事は真面目に
帝国軍が撤退した後にタウロス達がやってくる。
「アスケラを破壊した上で帝国軍を打破するとは…兵団は相手しないのではなかったのか?」
「事情が変わった。あんな兵器使うならこっちも力を使う事にする」
「それは頼もしい限りだ」
タウロスは四人で帝国の一陣を打ち破ったとアキト達を受け入れて正解だったと笑みを浮かべる。
「兵器の鹵獲が出来なかったのが残念だな」
「ありゃ鹵獲出来る代物じゃねえ…生物兵器の類いだ。もっとも俺達の知覚する生物なんかじゃないのも事実だな…」
間近で確認し倒したアキトは例えが難しいと呟き頭を掻く。
タウロスは兵器の詳しい情報が得られないことが残念だと口にしつつも功労者の翔達を労い戦後の処理は任せて今回の報酬を酒場で受け取ってくれと手紙をアキトに手渡すのだった。
夕刻、都市の酒場へ戻った一同は手紙を渡して報酬を受け取り食事を楽しむ事にする。
「しかしアスケラ…なんだったのかしらアレは…」
「この世界の理の外の存在、としか言えないな」
黒鴉の疑問にアキトが答える。理の外と言われて翔と黒姫がその言葉の意味を問う。
「それってどういう意味なんですか…」
「そのままの意味だ。この世界には本来存在しない力を有している実体の事だ」
アキトの言葉に黒鴉は噛み付く。
「なんでそんな物があるのよ!?」
「呼び出した者がいるか…あるいは侵略か…どちらにしても俺達が打倒すべき存在って事だ」
「アレで終わりじゃないと?」
アキトは経過観察が必要だと答える。
「嫌になるわね…」
「あんなのがもう出ないことを祈るよ」
お通夜ムードな翔達をアキトは笑って励まし何とかなるで通すのだった。
黒鴉はふと疑問に思ったことを呟く。
「で、帝国軍は潰すの?今回はアキトが何とかしたけどさ?」
「どうするかねぇ…兵器を呼び出す存在が向こう側にいるのならとっちめる必要があるんだけども…」
「とっちめる…柔らかい言い方ね、ぶっ潰すじゃないの?」
アキトはゲラゲラと笑って黒鴉をイイ感じに暴力的だと褒める。
「馬鹿にしてる?」
「してないしてない、力強くて大いに結構」
黒鴉はムスッとした表情でサラダを頬張る。それを尻目に翔が疑問を口にする。
「どうして兵器の名前を連合軍が知ってたんだろう」
「あ?んなもんコッチが勝手に名付けたか帝国軍側に諜報員が居て名前だけ伝わったんだろうよ」
黒姫がポンと手を打つ。
「成る程。もし諜報員がいるなら他の兵器の情報も得られますね」
「そう簡単に行けば苦労しないんだがな。ま、タウロスに聞いてみるとするよ」
アキトは「他には何か質問あるか?」とパンをスープに浸しながら尋ねる。
「何だったんでしょうね、アスケラ…空の上に砲台とそれの制御装置…無機質な…でいて生物的な」
「さあな、モンスターとも違う異質な感じ、外宇宙の…いや、分からない以上は気にしても仕方ないな」
アキトは何か心当たりがあるのか口に出しかけるが言葉をすぐに飲み込んでしまうのであった。
ーーーーー
翌日、タウロス達が戻っているか確認をする翔達。
「隊長達は陣を作っていてまだ戻ってきていませんね」
タウロスは事後処理で帝国軍跡地に陣を張っていると聞かされて一行は肩を落とす。
「仕方ねぇな…戻るまで待つかー」
アキトは今日一日暇になるだろうからと酒場で依頼でも受けるかと言い出す。
「お金には余裕あるわ、無理して仕事しなくても良くない?」
「街の危機、人の危機、世界の危機。規模は違えど意味は同じだ。頑張るぞー」
アキトの言葉を黒鴉はそれは詭弁じゃないかと疑いつつも頷くのであった。
早速街近くのモンスター討伐を受けて一同は都市の外へ出る。
「昨日の大物に比べたら簡単な仕事で欠伸が出そうよ」
剣を振るいモンスター退治をする黒鴉はアキトへの文句を言う。
「精神鍛錬の一つだ、簡単な仕事でもちゃんと誠心誠意向けること」
「分かってるわよ!こちとら社会人で仕事人で責任者よ!?舐めないでよね」
真面目に仕事はこなしてやるんだからと若干のムキになるのであった。
そんな黒鴉を元気だなと思いつつ翔と黒姫が平静にモンスター退治を行う。
「弱いなんて侮って怪我してたら元も子もないからな、ちゃんと落ち着いて戦わないと」
「そうですね。姉さんはそういう所の詰めが甘いですから」
黒姫の言葉に地獄耳な黒鴉は「聞こえてるわよ!」と怒る。
「やれやれ、ヒドく地獄耳だな」
「そういう陰口はよく聞こえるのよね!」
フンと鼻を鳴らして敵を怒りに任せて斬り裂く黒鴉。四人でさっさとモンスター退治を進めて一日を消費するのであった。
日暮れ近くにタウロスの帰還報告を聞いてアキトは一人で動き状況の確認をしに行く。
「む、傭兵団の…えーっと…」
名前までは覚えられていないようでアキトは自己紹介をする。
「アキトです。帝国軍の動向が気になって…」
「まだ密偵から報告は無いがアスケラを倒された情報は届いているだろう…すぐに次の兵器が来てもおかしくない」
兵器について言及されアキトは険しい顔をする。
「まだ兵器が…?」
タウロスは静かに頷くのだった。




