夜襲戦
帝国陣地へ夜襲する為に進軍する翔達と連合軍の精鋭部隊。
黒鴉は再三に渡りアキトに確認を取る。
「いい?倒すのはモンスターだけ、対人は連合軍任せよ?」
「分かってる、お前も深追いするなよ?」
アキトと黒鴉はバチバチに火花を散らす。翔と黒姫はそんな二人を心配する。
「姉さんもアキトさんも戦争なんですよ?もっと深刻に考えてください」
「分かってるわよ。やるって決めちゃったからにはやるわよ」
黒姫は溜め息が止まらない様子だった。
夕刻に山の入り口に到着した翔達、夜襲するには丁度いい時刻まで身を潜めることにする。
翔は緊張した面持ちで道の先を見つめる。
「本当にモンスターが使役されているのだろうか…人しか居なかったら…大体武力介入するしないの話は…いやもう遅いんだけど…」
翔の独り言を聞いてアキトは大丈夫だと笑う。
「ちょっとぐらいなら大丈夫だ。力を使ってドッカーンとかしなけりゃな」
「蟻の一穴と言うことも…」
「お前と黒姫は心配し過ぎだ。体の言い訳だろうが飛び込まなきゃ分からないこともある。やれるうちにやっとけ」
アキトのいい加減な匙加減に翔も溜め息を出してしまうのであった。
日も落ちて一斉に進軍を開始する一同。
その頃敵陣では士気を上げるために酒盛りをしていた。
「本隊が到着するまでこの陣の維持…」
「この地形、楽勝ですな!ハッハッハ」
「モンスターの手綱を握るのが面倒なだけで敵も攻めあぐねているだろう」
このまま何も起こらないと高を括っている帝国将校達、しかしそんな帝国将校達に部下から報告が入る。
「モンスター達が何か騒がしいのですが…」
「ムチを入れろ、大人しくさせておけ!すぐに本隊が到着して戦闘になるだろうからな、暫しの我慢だ」
「普段と違うと言いますか妙に殺気立って…」
クドいぞと将校達は酒盛りに夢中になっていた。
やれやれとテントを出る兵士は他の兵士と話し合いをする。
「どうだった…?」
「ムチでも入れとけってさ…」
「ううむ、嫌な予感がする…獣に近い奴らの勘、馬鹿にできないからな…」
警戒を厳にしろと兵士長が檄を飛ばす。兵士達はハッと敬礼し将校達とは真逆に警戒態勢に入る。
翔達が敵陣に近付いた所でアキトが待ったを掛ける。
「殺気に満ちてる、勘付かれたか…」
ひりついた空気に翔も何か感じ取る。
「これが殺気…ってやつですか」
「モンスター特有な獣の殺気に混じって人の殺気もする、警戒されてるぜ」
そこまでは分からないと翔は苦笑いする。
後ろで詰まっている黒鴉はさっさと行こうとアキトを急かす。
「ここまで来て引くつもりはないでしょ?」
「まぁ、そうだな…飛び出すぞ。俺に続け!」
アキトは後ろに合図を送り静かに夜襲を開始するのだった。
放し飼いにされているモンスター達が一斉に勘付いて吠える。見張りの兵士達が遅れて夜襲に気付いて警鐘を鳴らしに走る。
「敵襲ー!」
警鐘が鳴らされ始めるまでの間アキトを先頭にモンスターを的確に処理する翔達。
ゴブリン種やウルフ種といった小物をバッタバッタと斬り倒して進むと兵士達が立ちはだかって来る。
「これ以上は進ませんぞ!」
「っち」
アキトは舌打ちして投擲で足止めする。その兵士をそのまま連合軍兵が討ち取る。
「ぐぁ…!」
「…俺は殺してないからセーフだよな」
開き直りつつ進軍するアキトであった。
モンスターのいる幕舎を襲撃する黒鴉と黒姫は二人で無双していた。
「モンスターを使役してるのは本当だったみたいね!冒険者の血が騒ぐわ!」
「姉さんは経営者でしょう?!変な血に目覚めないでください!」
「いいのよ、今は!」
剣を振り回しどんどんモンスターを討ち取っていく黒鴉の勢いに黒姫は精一杯ついて行くのだった。
三人とは別のルートを進む翔、見えている範囲のモンスターは討伐し終えて他のメンバーと合流しようと考えている所に大柄の兵士が現れる。
「逃さねぇぞガキぃ!」
「うわっ、人は斬るなって言われてるんだけどな…」
「何舐めたこと言ってやがる!ここは戦場だッ!」
大剣を振り回し暴れる男に翔は仕方なく刃を向ける。
「甘ったれた事は…言えないな…!」
大男と戦いを開始する翔、大男の一撃目を回避して返し刃で鎧の隙間を通して浅い一撃入れる。
「ぐっ!やりやがったな!」
(浅い!覚悟が足りないからか!?)
色々と思考してしまい攻撃が浅くなってしまったと反省する。その間も大男は攻撃を繰り出し翔はひらりと躱す。
(やらなきゃやられる!言い訳は後だ!)
ちゃんと向き合い戦う覚悟を決めて翔は炎を纏った斬撃を放ち大男の胴に斬り込む。
「ぐ、がぁ!」
大男は胴を斬られて地に伏す。翔はやっちまったと滝汗を流しつつ納刀して深呼吸するのであった。
大男は隊長格であったようで兵士達は撤退を始めて陣容が後退していく。
勢いに乗った連合軍はそのまま将校達のいたテントを襲撃するが撤退を開始した様で既にも抜けの殻であった。
将校の首は取れなかったが陣を潰すことに成功し作戦は成功で終わるのだった。




