好奇心は
魔王と加賀美のやり取りの中に出てくる危険とされる管理番号とアノマリー名、その収容方法などの話を聞いていて翔は頭を痛める。
救世主として覚えるべきなのかなと思いつつ一生懸命記憶しようとしていると魔王から翔がお呼ばれする。
『まだ救世主君はいるかな?』
マイクを借りて翔は返事をする。
「あ、はい。居ます」
『君達の敵はまた別に居る。一生懸命この組織に尽くす必要はないぞ?』
何を知っているのか『君達』と言われて翔は驚き加賀美の方を見る。加賀美は組織の者として微妙な顔をして頬を掻く。
「それでも俺達はこの組織に協力したいと思います」
『それも救世主の定めか…』
魔王はフッと笑って翔は加賀美にマイクを返すのであった。
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アキトと黒鴉は翔が対峙した魔王とやらに興味を示す。
「魔王…お前が出会ったドゥーマーとやらも深い知識を持っていたな。中立な奴なのかね?名前は何ていうかアレだが」
「力を誇示しない魔王ねぇ…それ本当に魔王なのかしら?」
二人の意見に翔もそんなに怖い雰囲気ではなかったと語り「可哀想」というイメージで話す。アキトはそれを聞いてクスッと笑う。
「可哀想か、お前に同情されるなんて王と言っても御飾りだったり没落したやつなんだろうな」
「ちょっと!何で今チラッと私を見たの!?」
黒鴉は憤慨して腕組しそっぽを向くのであった。
夕刻になってエリスが夕食の場に姿を現す。
「皆さんお疲れ様です」
「エリスさんこそお疲れじゃないですか?」
翔が心配してエリスを気遣う。
「しっかり寝たので大丈夫です!」
強がりを振る舞うエリスを見てアキトが軽くツッコミを入れる。
「おいおい寝ただけで回復するものか?」
「特製のエナジードリンクありますから!」
ラウンジのドリンクの中から栄養ドリンクを手にして笑うエリスに三人はそれは元気の前借りではないかと呆れて内心でツッコむのであった。
ーーーーー
翌日、翔はエリスが頼んでいたエナジードリンクに若干の興味を示して注文してみていた。
「コレが特製エナジードリンク…」
「何?アンタ頼んだの?疲れてないでしょ?」
「いやぁ、エリスさんが美味しそうに飲んでたからつい…」
ゴクゴクと飲んでいる姿を思い出して味も良いのかなと翔は言い訳をするが黒鴉はジト目をしてエナドリを飲むのは疲れた時と翔の体調の良さを理由に注意をする。
「と、取り敢えず味を…」
一口飲んで翔は目を見開きフルーティーで美味いと喜ぶ。黒鴉は相変わらず微妙な顔をする。
「疲れたら飲みなさい、身体に悪いわよ?」
「うっ…気を付けます」
二人のコントを見ていたアキトはエナドリを頼むのをやめていつものコークにするのであった。
朝食を終えた頃エリスが仕事の為にアキトを迎えに来る。
「おはようございます。本日はアキトさんですね。よろしくお願いします」
「また動物系かなぁ…」
「あはは…、偶然なんですけどね」
偶然も三回続いているなら必然なんじゃないかとアキトは目を細めるのであった。
二人移動し研究棟に入り早速研究室へと向かう。
「管理番号96、不幸の黒猫」
「また猫か!」
「気を付けてください。危険な代物です」
代物と言われてアキトは小首を傾げる。
「猫じゃないのか?」
「見れば分かりますよ」
研究室に入り観察室から中を覗くと一冊の本が置かれていた。
「…本?それも…絵本か?」
「はい、絵本になります。P5632、準備は良いですか?」
中に居る囚人に声を掛けて準備を整える。
エリスの指示により囚人は絵本の前に座り表紙をマジマジと眺める。
「表紙に猫は居ますか?」
『いや、居ない。『幸せの黒猫』ってタイトルと…』
作者の名前は伏せられてエリスは本のページを捲るように指示を出す。
「猫は居ますか?」
『いや、えーっと内容を読み上げる必要はあるか?』
「お願いします」
囚人は絵本の内容を読み上げていく。ストーリーは野良猫の黒猫が家猫となり幸せな一生を過ごすというものであった。
しかし変な事にどのページにも黒猫の姿はなく囚人も怪訝な顔をして内容を読み上げていた。
エリスは緊張した面持ちで本の中に猫は居るかどうかを逐一確認していた。
物語はクライマックス、幸せな猫の最期の時が近付いてくる。
唐突にエリスが囚人にストップを掛けて作業を止めさせる。
「そこまで、猫はここまで居ませんでした」
『はい、居ませんでした。次のページが最後です』
「…観測は終わりです」
アキトは最後のページに何があるのかと囚人と同じ疑問を持つがエリスの緊張した顔色から辞めたほうがいい事を察する。
(危険な代物か…最後のページにそれがあるんだろうな…)
しかし囚人は止まらなかった好奇心に負けてページを捲ってしまう。
『…猫が居る』
彼はそういうと急に胸を押さえて苦しみだす。
エリスは溜め息をついてドローンを使い絵本を閉じると「観測終了…」と話して研究資料を書き留めて机に置く。
「すみませんアキトさん。彼を片付けるの手伝って下さい」
「何が起きた…?」
「猫と同じ、心不全により亡くなりました」
アキトは小さく頷き囚人の遺体を片付けるのであった。




