魔王
夜、翔は今朝の亀裂に関しての情報を軽く調べてみる。
(流石にあの規模の事件、何かしら情報があるだろう…)
カバーストーリーとして地震の影響と出ている。そんな中で翔は自分が相対したグリフォンの爪跡などについて調べてみる。
(流石に地震では説明の付かない事例があるはず…)
しかし情報統制は完璧で画像も文言も出てこない。
翔はこの組織の裏の力を垣間見てこんなにも情報統制が厳しいものなのかと大きく伸びをして悔しがる。
(もう少し早く調べれば消される前に残せるのかなぁ…いや、情報統制はした方がいいのか?うーむ)
世界の秩序を守る為には必要な事なのかもしれないと思って今日はもう寝ようと大きな欠伸をするのであった。
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朝になってラウンジにてカフェオレを飲む事にした翔は黒鴉に鼻で笑われる。
「大人になったならブラックを頼みなさいな」
「別にいいだろ?同じカフェインなんだからさ」
「あの苦味が脳に来るのよ、分かってないわね」
甘さで苦味を誤魔化すなんて子供っぽいと黒鴉はもう一度翔を笑うのであった。
遅れてアキトがやって来てカレーパンとコークを注文する。
「…アキトに比べたらまだ大人ね」
アキトは話が見えなかったが馬鹿にされていると分かって不機嫌そうな顔をする。
「ん?勝手に人を比較に使うなよ」
「何よ?コーラとカレーパンなんてお子様の頼み方よ」
「うっせぇ、好きな物を頼んで何が悪いんだよ?他に何食えって言うんだ」
この世界に来てもう何度目か数えるのが面倒なやり取りに翔は微妙な顔をして苦笑いするのであった。
そこへ加賀美がやって来てアキトと同じカレーパンとコークの組み合わせを持ってきて相席してくる。
「翔君、今日はエリス君に代わって私が仕事のパートナーだ」
「エリスさんに何かあったんですか?」
「いや、彼女は昨日の仕事の報告書作成で残業した分休んでいるだけだ」
亀裂の話なのか黒鴉とのコンビ組んだ仕事についてなのかは語らなかったがどの道多忙であったとのことである。
加賀美の食べ合わせを見てアキトはふふんと腕組して正解の組み合わせだと笑う。
「炭酸の刺激とカフェイン、そして甘さがガツンと脳に来る!そして万能栄養のカレーだ」
「何有識者ぶってるのよ、好きな物頼んでるだけでしょ?」
サラダをつつきながら黒鴉はアキトの伸びた鼻っ柱をへし折る。
加賀美は自分の食べ合わせが何か悪いのかと苦笑いする。
「何か問題あったかな?」
「コイツの理論だと子供っぽいだそうだ」
黒鴉に全部押し付けるアキト、黒鴉は加賀美には悪いけどと自分の理論をペラペラと語り出して感心される。
「そういう好みもあるね、コーヒーは微糖派だけど」
「…カフェインと糖分補給かしら?」
「いや、単純に好みの話だ。栄養なんて突き詰めたらサプリでいいしね」
黒鴉はうぐっとサラダをじっと見つめてちょっと背伸びしている事を見透かされているような気がしたのだった。
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研究棟に移動した加賀美と翔。
「今日の研究対象は管理番号198、マオウだ」
「魔王…?そんな恐ろしそうな…」
「話は通じる、だが油断はしてはいけない」
加賀美に注意を受けて翔は生唾を飲み込むのであった。
研究室に入り観察室から中の様子を覗うと頭に牛の角のようなものが生えて鎧を纏った女性が椅子に座って待機していた。
「やぁ魔王君、担当の加賀美だよろしく頼む」
フランクに話し掛ける加賀美だったが魔王は小さな溜め息をついて淡々とした声色で『要件はなんだ?』と聞き返してくる。
「君が統治していた世界について教えてほしい」
『またその話か、ワタシは既に全て答えている。偶には違う質問をして欲しいものだ』
やれやれと加賀美は呆れるポーズを取り翔を見てニヤリとする。
「翔君、君が質問してくれ。私は嫌われているようだ」
「ええ!?…どんな質問でも?」
「ああ、私は記録を取ることに集中するよ」
マイクの前に立たされて翔は「えーっと…」と考えてから質問を始める。
「ご家族は?」
『なんだ?その質問は…両親は既に他界していてワタシ一人だ』
「ご両親も魔王だったのですか?」
翔の下らない質問に魔王は鼻で笑って『その通りだ』と答える。
世襲制の魔王に対して翔は少し同情する。
「配偶者もいないとなると今魔王さんの世界は大変なことになっているでしょう?」
『どうだろうな、ワタシが居なくてもどうにかなってるかもな。所詮は御飾りの王さ』
新情報なのか加賀美はサラサラとペンを走らせていた。
「やっぱり魔王となると対になる勇者とか居るんですか?」
『勇者…?そんなモノはいない。ワタシはただの王だ』
魔王とはこちらの人が付けた名前なのだと気づいて翔は話を続ける。
暫くの無意味そうな問答のあと魔王は翔に逆に質問をしてくる。
『キミこそ何者だ?この組織の人間とは違うな?』
「異世界の…救世主です」
魔王は救世主かと手を叩いて大笑いして加賀美に対して質問を許す。
『気が変わった。加賀美、質問を許可する』
加賀美は翔の肩を叩きよくやったと微笑み業務に必要な質問を開始する。よく分からない単語が飛び交っていて翔は頭を痛めるのであった。




