パシリ
翔の当番の日になって早起きしてしまった翔はラウンジで落ち着かない様子で休息を取っていた。
(あー、嫌だなぁ…緊張してきた…)
サンドイッチと紅茶で朝食をとっていた所にアキトがやって来てカレーを持ってくる。
「おはようさん」
「朝からまたカレーですか?俺も好きですが朝からは…ちょっと…」
「別にいいだろ?ほら、ニンニク臭い訳じゃないし?」
カレーの臭いはするだろと翔は苦笑いする。
「…そんなに臭うか?ちょっとショック」
袖をスンスンと嗅いでアキトは切なそうな目をする。
「い、今はそんなに臭くはないですよ?」
翔はフォローを入れてアキトを励ます。
黒鴉もやってきてジト目になりながら何をやってるんだとツッコミを入れるのであった。
ーーーーー
エリスがやって来て翔は仕事に向かう。
「本日の研究対象はなんですか?」
翔の質問にエリスはクスッと笑って答える。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。今日は危険は少ない人物との面会です」
「面会…?」
どんな人物なのかと翔は更に確認するがエリスはすぐ分かると研究室の手前で足を止めてカードキーを使って部屋の扉を開ける。中には取調室のような椅子と机と観察室があり二人は観察室に入る。翔はエリスに頼まれて取調室正面の扉の先からその人物を連れてくるように言われて鍵を渡される。
渡された鍵を使い奥の部屋に入ると髭面のみすぼらしい服を着た男が座っていて翔を見て微笑む。
「君は…これは興味深いな…」
「エリスさんが呼んでます。移動をお願いします」
少し不気味に感じた翔はさっさと終わらせようと指示を出して男を取調室に移動させて座らせる。
「管理番号20、おはようございます」
『おはようエリス君』
翔が観察室に戻ると既に会話を始めていた。
『エリス君、今日はアレだ、魚が食べたいかな』
「分かりました。ご用意致します」
エリスは目配せして翔にラウンジから食事を持ってくるように依頼して翔は急ぎ足でラウンジへ向かう。
ラウンジでまったりしていたアキトと黒鴉は戻ってきた翔に「早いな」とゲラゲラ笑う。
「アノマリーのご飯を取りに来たの!…えーっと魚料理は…」
「人の食べるものよ?」
「人型アノマリーなんだよ、髭面のおっさん」
おっさんと聞いてまた二人はゲラゲラ笑う。翔は溜め息混じりにさっさと仕事を終わらせようと料理を受け取り研究室へと戻る。
「戻りました。ご注文の魚料理です」
翔は管理番号20に食事を提供すると男はにこやかに笑い翔に感謝する。安全なのは理解したがやはり何か不気味だと翔は感じ取る。
「エリスさん、彼はどんなアノマリーなんですか?」
「彼は管理番号20、神と呼ばれし者。です」
「え?何?神…?」
観察室から食事をしている男を見て翔は身震いする。
「どんな能力が…?」
自分の知る神にロクなものが居ないと翔は苦笑いして尋ねる。
「水をワインに石をパンに…」
「ええ?!それって…ジーザス!?」
「はい、その通りです」
翔は「いやいやいや」と否定しながらも観察室の男を見て何となくイメージするキリストと似ているようなと冷や汗を垂らす。
「もしそうなら…いや、似た非なるものでしょ?!」
「ふふっ、翔さんは面白いですね。我々が名言しないのですからその可能性は考えています」
「彼は何て言ってるんです?」
翔は更に質問をする。エリスは少し考えて答える。
「彼自身は何とも、奇跡の力を目にして人々がジーザスの再来だとしたことからアノマリー認定されてここに居ます」
「収容は彼も望んで?」
「手狭ですが彼が望むものは提供する事になっています。協力的ですからね」
それにしては自分達とは大分扱いが違うなと翔は食事を終えた男を観察する。
『エリス君、今日のエージェントは不思議な人だね。この世界の理とは違う存在のようだ』
「…はい、理の外の存在です」
『アノマリーだろう?そんな扱いでいいのかい?』
そんな扱いとは?と翔はエリスの方を見る。エリスは真面目な顔をして問題無いと返答する。
『そうか、彼はそこにまだいるかな?気をつけたまえ、世界はそんなに優しくないぞ?』
警告のような発言をされた翔はショックを受けつつも毅然とした表情をする。
(どういう意味だろう…優しくない…か)
翔が思い悩む中で話は進む。
「管理番号20、何か欲しいものはありますか?」
『そうだね、新聞が欲しいかな。収容室は退屈だ』
「分かりました。幾つか持ってきましょう」
翔はラウンジから新聞を取ってくるように言われてまた走らされるのであった。
ーーーーー
仕事を終えて情報共有する。
「神様か、それに気を付けろねぇ…」
アキトはニヤニヤして黒鴉は凄いのを収容してるのねと驚く。
「監視してくる位の組織だし?気を付けてはいるわよ?アンタと違って」
「翔が一番この組織に対して緊張感持ってないからな」
二人から散々に言われる翔は口を尖らせる。
「冗談じゃないよ、大トカゲといい神様といい人に興味を持って忠告してくる感じ…嫌な予感がヒシヒシと来る感じ…」
まあ頑張れと翔の肩を叩くアキトに無責任な人だと思う翔なのであった。




