調書作成
比較的安全な仕事を終えたアキトの報告を聞いて黒鴉は一言「ズルい」と呟く。
「簡単なお仕事っていいわよね、精神汚染って言っても治るなら楽よ?」
「ハハハ、確かに、俺も肉体労働系とか予測してたんだがな」
ヘラヘラしているアキトに対して舌打ちする黒鴉、翔は「まぁまぁ」と宥めつつ次はどんなモノがお出しされるのかと不安になるのであった。
エリスが同日にまたやってくる。
「あら?もうお仕事かしら?」
「いえ、コミュニケーションのお仕事です」
質問票のようなものを見せて自分達が研究対象なんだと理解して三人席につく。
「えーっと…それではお話出来る範囲で構いませんので皆さんの世界についてお話を伺いたいと思います」
「おっと、じゃあ俺は別枠だな」
アキトがそう口にしてエリスは小首を傾げる。
翔が説明しようと口を開く。
「えっとアキトさんは異世界の中な異世界の住人として生活していますので…」
「はぁ…ではお先に翔さんと黒鴉さんの住む世界について教えてください」
「はい、地球っていいまして…」
翔は身振り手振りで地球の日本について一生懸命説明をする。
「資本主義の民主主義国家で…えっとこの世界のように近代的な文明で…そのー」
黒鴉が頭を抱えて下手な説明に苛立った様子で首を横に振る。
「浜松、少しは言葉の意味が伝わっているか確認なさいよ」
エリスが問題ありませんと頷く。
「資本主義、民主主義、近代的文明。全て伝わります。それよりも地球…日本…ですか」
「何か引っかかる事が?」
「いえ、私のいるこの地も地球で日本なんですよ」
翔と黒鴉、そしてアキトまでもが驚き顔を見合わせる。
「って事はほとんど同じな鏡映しな世界って事になるな」
アキトがやれやれと肩を竦める。
「逆に違うところというとアノマリーが存在するって感じかねー」
「なる程ですね。となるとアキトさんの話を詳しく聞くのが正しい事になりそうですね異世界のなかの異世界…データとして記録しやすそうです」
「そうだな、じゃあ説明するか」
アキトは肩を回して準備運動のような動作をして気合いを入れる。
「俺の住んでる世界は…そうだな、剣と魔法のファンタジー世界だなそこの永世中立国の魔法学院に住んでる」
「ほうほう、永世中立国があるんですね」
「魔法には食い付かないんだな」
エリスは小さく頷いて既にそれっぽいものを見たと答える。
「見た。か…それは精霊術で本当の魔法は別にあってだな…まぁ俺達は使えないんだけど」
アキトはヘラヘラ笑い刀を呼び出して氷雨を呼び出す。氷雨は用事もないのに呼び出されて若干ご立腹のようだった。
「それが精霊…ですか」
「そうだ。俺達の力…みたいなものかな」
「力、コントロールとかは?問題無いのでしょうか?」
アキトは問題無いと大笑いして氷雨を仕舞う。
「暴走なんてことは無い、精霊とは契約関係だからな」
エリスはうんうんと頷きつつ情報をまとめていく。
「ちなみにですが異世界のなかの異世界、というのはどのくらいあるのですか?」
三人は顔を見合わせて幾つあったっけと指折り数える。
「神螺、神威、神斎、神楽先生で四つ…だよな?あ、竜司さんが行ってる世界で五つか」
「え?他の今まで行った異世界は含めないの?」
「あれは異世界のなかの異世界じゃなくないか?」
翔と黒鴉が話し合いをする。アキトは一応それは別カウントだと語りエリスはそんなにたくさんの異世界があるのかと目を丸くする。
「そんな沢山の異世界が…?!」
「ああ、沢山あるぞ。まぁそっちから観測できる物じゃないからな。気にする必要はない」
「…そ、そうですか」
異世界の数々を見てきたアキトは笑って気にするなと話すがエリスは納得いっていない表情をする。
「全てを知ろうなんて烏滸がましいと思わないか?」
「そ、そんな事は…!いえ、確かに無数に異世界があるなんてことを言われたら…全てを知るなんて無理なんでしょう…」
「探求心旺盛なのは感心するが無理に異世界へ干渉しようとする必要はない」
アキトは言葉を濁すが敵対する可能性もあると翔達は理解してエリスを見る。
「こちらが干渉しようと考えていなくても向こうから接触してくるということもあり得るわけですよね?皆さんのように…」
アキトはそれはそうだと頭を掻いてそれは事実だと認める。
「異世界から異世界への干渉を防ぎ世界を救うのが俺達の目的であって…まぁなんだ?他の異世界については秘匿させてもらうわ」
「そうですね、きっとそれが正しいんだと思います」
エリスは追求することをやめて微笑みながら調書を書き終える。
「ふぅ、私もお茶にしますか」
「コーヒーじゃないのね?」
「私は緑茶派です」
黒鴉は残念そうに肩を落とすのであった。
ラウンジで暫く談笑していると加賀美がエリスを呼びに来る。
「エリス君、報告を先に…」
「あ!すみません。お茶を飲んでから報告しようかと…」
「コミュニケーションも大事だがやる事はやってくれよ?」
エリスは申し訳無さそうに頭を何度も下げるのであった。




