再収容
翔の番が回ってきてエリスに連れられて緊張した面持ちで研究室に入る。
中にはドラゴンと見紛う程の大きさのトカゲがいた。
「デカい…ですね」
「はい、それなりに危険ですので気を付けてください」
「は、はい」
壁越しにマイクでエリスがトカゲに話し掛ける。
「おはようございます。管理番号143、ドゥーマー」
『その声は…エリスか』
ドゥーマーと呼ばれたトカゲは口を開いて渋い声で喋り出して翔は面食らう。
「ドゥーマー、そろそろ我々に協力してくれませんか?」
『断る、我が知恵は人には早すぎる』
エリスはやれやれと肩を竦める。
「取り敢えず食事を用意しました。それを食べてください」
『ふむ、捧げ物か。いただこう』
エリスは翔に目配せして準備するように伝えて研究室の奥から牛一頭運ぶ様に指示を出す。
「う、重い…」
「あの、台車使ってください」
無理やり運ぼうとする翔にエリスは軽くツッコミを入れるのだった。
食事を運ぶ翔はドゥーマーと直接相見える。
「新人か?いや、違うな…何者だ?」
「えっと浜松翔、いや名前じゃないか…異世界からの救世主です」
「救世主…?ほう、興味深い」
ドゥーマーはバクンと牛を丸呑みにして舌をペロリと出して翔をマジマジと見つめる。
「確かに強いな…」
「…そう言ってもらえると誇らしいです」
「だが青い、まだ未熟である」
翔はうぐっと軽くショックを受けつつ未熟な事を認める。
「しかし救世主か…、エリス。彼等を見出したのは君か?」
『偶々です。外の任務で偶然出会って…』
「偶々か、それも定めというものか…」
何やら悟ったような事を言うドゥーマーに翔もエリスも若干驚く。
「少しだけ、少しだけ知恵を貸そうエリス」
『ほ、本当ですか!』
「気が変わったのだ。救世主か、必要になる時が来るだろう」
翔は一礼して部屋を出る。エリスは翔に先に戻るように伝えて翔は小さく頷き研究室を後にするのであった。
ーーーーー
ラウンジに集まった三人。報告を聞いたアキトが最初に口を開く。
「ドゥーマーか、俺達を見て異世界人と認識したんだよな?」
「異物として見られた訳で異世界人を見抜いた訳では…」
「同じようなもんだろ?興味深いか…」
アキトは腕組してドゥーマーの持つ知識に興味を示す。
「何を知ってるんだろうな?」
「エリスに追い出されちゃって何を聞いたのかは…分からない」
「そこは残れよ、まあ無理は出来ないか?」
当たり前だと翔は苦笑いするのだった。
黒鴉はエリス達は怪しいと疑いの目を向ける。
「この組織、正直信用できるか怪しいわ…人の命を粗末にしてるし…」
「アノマリーが危険何だから仕方ないだろ。俺らだって危険に身を置いているがベクトルが違うしな」
三人で話し合いをしていると警報が鳴り響く。今回は三人共に動けるとスッと立ち上がり戦う準備を進める。
エリスが走って現れて三人に声を掛ける。
「お手伝いお願いします!アノマリーの脱走です!」
「脱走…よし、やるぞ!」
アキトが前に立って研究棟へ進んでいくのだった。
血塗られた廊下の先、三人の前に両手がチェンソーに改造されてる怪人が現れる。
「ゲハハ!獲物がいたぜぇ!」
「止まりなさい管理番号87!」
「エリスちゃーん、バラバラにして芸術品にしてやるぜぇ!ゲハハ」
ゲスい笑い声を上げながら爆音のエンジン音を鳴らしながら突進してくる。
アキトは氷雨を手にしてエリスに確認する。
「切っていいのか?」
「生け捕りでお願いします!多少なら強引でも問題無いです」
「了解、任せとけ」
アキトは先制攻撃と氷の礫を放ち管理番号87を撃ち抜く。
呆気ない幕切れかと思ったがすぐに傷が塞がりノーダメージだとアピールしてくる。
「治癒能力…!?」
「無駄だぜぇ?俺は不死身だぁ!」
壁をチェンソーで傷付けながら振り回して突進を再開する。
「こりゃ本腰いれる必要あるな…」
「任せなさい!ウォーターカッター!」
黒鴉が水流を放ち片腕を切り裂く。
「ゲハッ!?」
千切れ飛んだ腕から触手が出て来て腕はくっつく様に再生する。
「何よそれ!捕まえるの無理じゃない?!」
「ゲハハ!満足するまで切り刻ませろぉ!」
大暴れする管理番号87、今度は翔が雷怨の電撃で攻撃する。
「痺れろ!」
バリバリっと感電する敵だったが大笑いが止まらず一歩ずつ近付いてくる。
翔は冷や汗を垂らしてその敵の動きに不気味さを感じる。
「流石に筋肉が焼き切れるだろ…!」
痺れながら叫ぶ管理番号87。
「死なねぇ…!この程度じゃあ死ねねぇんだ!」
しかし歩みは遅くなっている。アキトはそれを見て狙いを定めて管理番号87を氷に封じ込める。
「頑丈なら氷漬けでも復活するだろう」
エリスは敵の動きが完全に沈黙したのを確認して無線で他のエージェント達を招集するのであった。
「三人共にご協力ありがとうございました。再収容完了です」
「あんな怪物もいるのね…」
黒鴉は辟易とした顔をして溜め息をつく。
「すみません。アノマリーにはああいうのも居るんです」
三人は今後の事を考えて疲れを感じて肩を落とすのであった。




