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神の下僕は世界を救いたい  作者: D沖信


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消耗品

「ププッ、犬のお世話ぁ?!あっはっは!」


アキトの初仕事の報告を受けて黒鴉は爆笑していた。


「笑えねぇよ機嫌次第でモンスター並みの危険生物を管理してるんだぞ?地獄の番犬ってな」


「じごくのばんけんー?あっはっは!」


一語一句噛み締めるように言って大笑いする黒鴉に散歩が苦しかったと肩を落とすアキトに翔は大袈裟なと苦笑いする。


「全速力だ、犬の本気の疾走だぞ!」


「そ、そんなに?…あ、いや犬かぁ…」


飼ったこと無いから分からないがイメージして大変そうだと考え直す。


「だが聞きた話だと今回のケロちゃんはまだ安全な方だと言われた…」


「あ、安全…、不安になる話だ」


「だろう?不安になる。というか話からすると世界崩壊させるレベルの物もあるんだろう…」


アキトはやれやれと肩を竦(すく)める。

黒鴉は笑い疲れたと腹を押さえながら「ケロちゃん、ふひひ」と笑い続けていた。


「黒鴉、お前真面目に考えないと危険だぞ」


「ゴメンナサイね、ハハハ。でも面白いんですもの!」


そんな黒鴉だったが翌日次にエリスに指名されて少し緊張した面持ちになる。


「気を付けろよ?」


「わ、わかってるわよ!」


翔から声を掛けられて黒鴉は強がるのであった。


ーーーーー


「今日は安全な物なので大丈夫だと思います」


エリスは緊張した顔の黒鴉に気を使った言葉を投げ掛ける。


「そ、そう…で?今日は何?地獄の番犬?それとも世界を終わらせるもの?」


「あはは…そんな大層な物じゃないですよ。トランプです」


「トランプ?トランプゥ?!あのカードよね?」


ババ抜きしたり神経衰弱したり七並べするトランプがアノマリーとして扱われるのかと黒鴉は目を丸くする。


「はい、管理番号39使えないトランプです」


「使えない…?どういう意味?」


黒鴉は嫌な予感を感じつつエリスと共に研究室に入る。

監視室のような部屋の中から研究室を覗く窓の前に立つ。


「えーっと…私は何をすれば?」


「何かあった時の対処をお願いします」


なんだか中途半端な使命を受けて黒鴉は研究室を眺める。

浅葱色のつなぎ服を着た男がテーブルの前に座っていて指示を待っていた。


『では目の前のトランプを開封して下さい』


エリスが指示を出すと男は黙ってトランプの入った箱を開ける。


『カードの並びを確認して下さい』


「えーっと、スペードのエースから2、3、4…順番に並んでるよ」


『ではシャッフルして下さい』


男は黙ってカードを裏向きにして適当にカードをシャッフルし始める。


「いつまでやればいいんだ?」


『もう大丈夫です。では並び順を確認して下さい』


「えーっと…スペードのエース…って切れてないじゃないか!」


黒鴉はここで使えないトランプの意味を理解する。


(カードがシャッフルされないなんて使えないトランプね…なるほど)


黒鴉は近くの資料を確認して苦笑いする。

そこにはトランプの売り文句が書かれていた。


『片付け簡単!全自動並び替え機能付き!』


(絶対製品テストしてないバグが発生してるじゃない!)


黒鴉は内心ツッコミながら一つの疑問を口にする。


「ねぇ、表にしながらシャッフルすれば混ざるんじゃない?」


「ダメです。それは決してやってはいけません」


エリスは厳しい表情で黒鴉の提案を否定する。


「なんでよ…?」


エリスの剣幕に驚きつつ黒鴉は理由を尋ねる。


研究室の男は指示を待っている間、黒鴉と同じ疑問を持ったのかカードに勝手に手を伸ばす。


『待ちなさいP5372!勝手に触れては…!』


男は見てはいけない物を見てしまったのか急にカードをばら撒いてゲラゲラと大笑いする。


「アヒャヒャヒャヒャ!」


突如として発狂した男を見て黒鴉はドン引きする。


「な、なによ…これ」


「観測してはいけない物もこの世にはあるんです…」


「処理を致します。片付けをしましょう」


エリスは溜め息混じりに実験は失敗だと呟く。


「実験って…それよりも散らばったカードは大丈夫なの?」


「…そうでした。ドローンを使います」


散らばったカードを見るのもダメなのかと黒鴉は部屋の中を見ないように心掛けて片付けとは何かと確認する。


「P5372の処分です」


「処…分?」


「彼は死刑囚、その処理を今から行うのです」


黒鴉は口に手を当てて残酷な事をしているのだと実感してうッと吐き気を感じるのであった。


ーーーーー


黒鴉から作業の報告を受けた翔達は険しい顔をする。


「あー、やっぱりあの時加賀美が言葉を濁したのはそれについてだったか」


アキトが全てを察して苦笑いする。


「死刑囚…か、研究の為の消耗品か…なんか思い出すなぁ」


翔はぼんやりと昔のこと、神鳴達、神様の研究を思い出して消耗品について考えるのであった。


「で、無事に作業は終わったのか?ドローン使ったとか聞いたが」


「ええ、無事にドローンが適当にかき集めたら自動並び替え機能が発動したわ。下手したら全人類発狂の世界の終わりを感じるわよ」


「それは…怖いな…」


黒鴉の災難を聞いて翔は次は自分の番だろうと察して震え上がるのであった。

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