初仕事
黒鴉の願いで夜にはインターネットに繋がるノートパソコンが配布されて三人はじっくり調査する。
翌朝、コーヒーブレイクしながら黒鴉は優雅にノートパソコンを操作していた。翔も朝ごはんを食べにラウンジにやってくる。
「あれ、部屋から持ち出していいのか?」
「許可は貰ってるわ。WiFiも聞いたし」
「周到だな…いや、俺が確認してなかっただけか…」
翔は思いもつかなかったと反省しサンドイッチを食べる。
「そういう確認しない所が甘いのよねーふふん、アンタの悔しさがコーヒーを美味くしてくれるわ」
嫌味を言いつつカタカタとキーボードを操作してニヤリとする。
「ふふふ、ここの組織について調べさせてもらったわ」
「こんな裏組織みたいなのの情報あるのか?」
「あるわよ、表向き用のだけど」
黒鴉は画面を見せてくる。
「えーっとエクシズムコーポレーション?」
「総合商社が表向きのお仕事みたいね、海外にも支社があって全世界でこんな裏稼業しているらしいわね」
その説明をアキトが小耳に挟んで「なるほどな」と頷きつつ昨日とは別でキーマカレーを持ってくる。
「アンタまたカレーなのね、しかも朝から」
「美味いんだからいいんだよ。それよりもだ」
アキトは翔の横に座り腕組して世間の情勢を調べた方が有意義だと語る。
「情勢ねぇ…ニュースとかなら調べたけど…」
「あはは、俺なんて娯楽の動画サイトくらいしか見てなかった…」
翔は情報収集なんて考えてもいなかったと苦笑いして二人から微妙な顔をされる。
「まぁ動画サイトも一種の情報収集よね…」
「フォロー入れるなんて珍しいな」
アキトが茶化す。黒鴉は溜め息をついて余りにも翔が哀れに思えただけだと呟く。翔は少ししょんぼりした顔をしてお茶をグイッと飲み干すのだった。
暫くしてエリスが現れて三人へ挨拶してくる。
「皆さんお揃いで良かった。皆さんにお知らせです」
吉報を持ってきたと言いたげな表情をするエリスに三人はやっと信用されたかと思う。
「エクソシストのサポート…エージェントのお仕事受けれる許可を頂けました」
「戦闘員か、丁度いいな」
アキトが軽く伸びをしてニヤリとする。
「あらやる気満々ね、三人揃ったら戦力過剰よ?」
「では早速アキトさんにお仕事をお願いしますね」
エリスはニコッと微笑みアキトは今からかと目を丸くする。
「はい、朝からです。宜しくお願いしますね」
ーーーーー
同ビル内の地下施設に連れてこられたアキトは周囲をキョロキョロと見渡しながらとある研究室の一室に入る。
部屋の中には何かの装置と研究対象の見てくれは普通の大型犬がいた。
「犬ぅ?」
「はい、管理番号196地獄の番犬です」
「ケルベロスの事か?頭一つじゃないか」
アキトはツッコミを入れつつ研究員が装置を操作し始める。
何が起こるのかと思ったらエリスはドッグフードを受け取りシャカシャカと振ってケルベロスの興味を引く。
「はーい、ケロちゃんご飯ですよー」
「ワン!」
アキトは唖然としながらその光景を見つめるがハッとして警戒するのを忘れていたと思い直す。
(仮にも地獄の番犬だ、何か危険があるかもしれないし…気を引き締めろ)
カリカリご飯をバクバク食べるケルベロスをエリスがジッと見つめて研究員も機械から出てくる数値をメモしていた。
アキトはじんわりと嫌な予感を感じ戦闘員としての仕事に備える。
「よーしよしよし」
笑顔のエリスはスキンシップを図っていてケルベロスは舌を出して尻尾をブンブン振っていた。
研究員がエリスにアイコンタクトを送るとエリスはアキトを呼び付ける。
「お散歩の作業です」
エリスはランニングマシンを指さしてアキトにケルベロスと並走するように言われてアキトは渋い顔をしつつ仕方なさそうにランニングマシンに乗り込む。
「ケロちゃんは並走しないと走ってくれないんですよね…」
「外には出せないのか?」
「それは危険なので…」
何が危険なのかと思いつつリードを付けて一緒にランニングマシン二つで並走する事になるのであった。
速度は時速10kmから始めて軽いジョギングから始める。
暫くして…
「ハッハッ!」
ケルベロスは嬉しそうに走り出してペースが急に上がりアキトは面食らいつつ時速20km、30kmと上がっていく。
(なんだこの犬、どんどん加速していくぞ…!)
人間の限界に近い40kmまで上がりアキトは舌打ちしつつ走る。
時の加速も入れて限界を超えた速度にも追い付いてランニングマシンの限界点を走る。
エリスも研究員もアキトの力に目を見張りつつお散歩タイムが終了してアキト達は徐々にスピードを下げる。
「こんなハードなお散歩…」
「お疲れ様です。ケロちゃんも大満足してると思います」
尻尾をブンブン振ってハッハッと喜んでそうでアキトは苦笑いする。
「で、ケロちゃんの特異性ってなんなんだ?」
「怒らせたり不満が溜まると地獄の火炎を吐き出します」
「サラッと怖い事言うなぁ…」
やっぱり普通の犬じゃないと分からされてアキトはカラ笑いするのであった。




