情報収集の仕方
翌日、警報が無い時は施設のラウンジを出歩く許可を貰った三人は窮屈な個室を抜け出すのであった。
「監視されてると思うと急に部屋の中が狭く感じられるのよね」
「あー、分かる。何でだろうな?」
黒鴉の話に翔が相槌打ちながら答えラウンジの食事を楽しむ。
そんな二人にエリスに似た制服を着た男性が近付く。
「その格好…君達がエリス君の担当する監視対象201号か」
「何そのケッタイな呼び方、失礼しちゃうわ。研究資料あるなら名前も書いてあるでしょう?読みなさいよ」
黒鴉がジト目になって言葉で噛み付くと男性職員は申し訳無いと素直に頭を下げる。
「これは失礼した、僕の名前は加賀美雷太。エリス君と同じエクソシストだ」
「ふーん、エクソシストは制服なのね。他にはどんな役職があるのかしら?」
「僕が話せる範囲でなら…研究員のドクター、上級研究員のオフィサー、戦闘員のエージェント、僕達対アブノーマリティ部隊エクソシスト」
説明を受け黒鴉はふむふむと興味深そうに聞く。丁度カレーを持ったアキトが現れて話に混ぜろとドカッと相席する。
「なるほどな、アンタ大変な仕事してるんだな」
アキトは聞きかじった話から推察して労いの言葉を投げ掛ける。
「ハハ僕らはまだマシな方だよ。大変なのは…おっと…」
何かいけない事を言いかけたのか加賀美は口に手を当てて黙ってしまう。アキトはニヤニヤしながらカレーを食べる。
「ふーん、話すのはマズい所がある訳だ…ん、このカレー美味いな!野菜がしっかり煮込まれてて!」
「話すか食べるかどっちかになさいよ」
行儀が悪いと黒鴉に指摘されてアキトはムスッとしながら黙々とカレーを食べ進める。
翔は加賀美に対していつ協力関係を築けるのかと疑問をぶつける。
「協力関係か…君達はこの…世界?だっけかに来て何をしたいのかな」
アキトがアイコンタクトして言ってやれと暗に伝えてくる。
「俺達は救世の旅をしていて…世界の危機を防ぐ為に…」
「世界の危機…か、あり過ぎて思いつかないな」
ケラケラと笑う加賀美に三人は若干引き気味になる。
「何それ?あり過ぎて…?」
「そうそう、世界に対する危険なんてたくさんあるさ」
アキトはやれやれと首を振って仕方なさそうに補足説明する。
「世界の危機っつってもどの程度かは俺達にも分からないが基本的に異世界の力由来だったりする」
「ふむ、異世界か…難しいな。そういう物もに数多あってな」
「あー、多分俺の言う異世界とは括りが違うな。ホワイトボードあるか?」
アキトは近くにある衝立代わりのホワイトボードに全員を呼びつけて抗議を始める。
「この世界の認識での異世界は…こうだ」
丸を一つ描いて中に色々な図形を描いていく。
「そして俺が言っている異世界はこう」
丸の隣に四角を描いて自分達の異世界だとアピールする。加賀美は少し考えてイメージは伝わったと頷く。
「つまり理の外…」
「ほう、分かるか?俺達はこの世界の理の外からやって来た。つまりそちらが認知している異世界の更に外側だ。そして俺達の言う危機は理の外からやって来る」
新たな図形を描いて矢印を丸の世界へと向ける。
「よく分かったよ。しかしこの説明をエリス君にもして欲しいな。彼女が君達の監視員なわけだし」
アキトは面倒臭そうに頭を掻いて仕方ないなぁと呟く。
「で、その肝心な三堂エリス君はどこ行ってるのかな?」
「彼女は別件でエクソシストのお仕事さ、優しい任務だから無事だとは思うけれど」
無事と言い切れない所にこの世界の世知辛さを感じずにはいられない三人であった。
ーーーーー
夕刻、エリスが無事帰還して三人に会いに来る。
「皆さんラウンジに居ましたか」
「部屋の中って退屈なのよね。インターネットとかないの?新聞紙でもいいわ」
「そ、そうですね…時間を潰す方法考えておきます」
歳下の黒鴉の言葉にたじたじになるエリスに同情する翔とアキト。
「あ、アキトさんに話を聞くように加賀美さんに言われてまして…」
「あー、分かった。ちょっと来てくれ」
アキトとエリスはホワイトボードのある端っこに移動する。黒鴉はコーヒーを飲みつつニヤリとする。
「インターネット、否定しなかったわね」
「まぁ現代的な世界だしあるんじゃないか?」
「ちょっとずつでも情報を得ていくモノでしょ?憶測で考えない!」
ピシャリと注意を受けて黒鴉の異世界での情報収集適性の高さに翔は自信を失くす。
「後継者としての自信を失うよ、黒鴉はやっぱ勉強熱心だな」
「ふふん、当たり前よ。もう少し私を見習いなさい」
おだてられて天狗になる所は見習いたくないなと思う翔なのであった。
異世界の説明を受けたエリスは寝耳に水の様子でふむふむとアキトの前で頷いていた。
「理の外ですか…本当にそうならどの様な危機が…?」
アキトは少し考えてから今までの自分の経験を語る。
「全てを飲み込む外神、俺達のような人型実体の破壊者、巨大な戦闘破壊兵器、それに…ああ、殺戮ゲームをしてくる異世界の住人もいるな」
この世界のアブノーマリティと遜色ないとエリスは難しい顔をしてアキトはこの世界の険しさに頭を痛めるのであった。




