信用と収容
監視される生活を送りながら一日経過する。
三人はそれぞれ個室でまったりしていると警報が聞こえてきて身構える。
バタバタと外が騒がしくなるが翔達は扉を閉め切られて外へは出れなかった。
「あ、開かない!?…出番じゃないって事か?信用無いなぁ」
翔は愚痴りつつ大人しく部屋の中に戻るのだった。
アキトも軽く扉を確認してやれやれと首を横に振る。
(異世界からの人間なんて信用されてないに等しいか…これじゃ囚人だな…いや、その通りか)
隠しカメラをチェックしてアキトは「見てるー?」と手を振って不満を肩を竦める仕草でアピールする。
黒鴉も同じく扉が開かず口を尖らせていた。
「なによもう!変な警報鳴らしちゃって!出番じゃないの?!」
軽く扉を蹴って愚痴を言いながらベッドに戻り監視カメラに向けてあっかんべーと舌を出して不満をアピールするのであった。
三人が部屋を出る許可が降りたのはそれから数時間後、エリスが迎えに来て部屋の扉が開かれる。
「えーっと三堂さん?さっきの警報はなんだったんですか?」
翔が疑問を口にするとエリスは申し訳無さそうに頭を下げる。
「時空の裂け目とは別件でして…」
「別件…厄介な事が沢山あるんですか?!」
「大丈夫です。ちゃんと問題の収容は完了しましたので…」
翔は何か手伝えることは無いのかと楽観的な思考をするがアキトと黒鴉は腕組して怪訝な顔をする。
「収容?何を収容してるんだ?『問題』の収容って…」
「それはお答えできません…」
エリスは申し訳無さそうにペコペコ頭を下げる。
「私達もその『問題』なのかしら?」
「そ、それもお答えできません…すみません」
一人だけ鈍い翔はポカンとした「はぇ?」と三人のやり取りに思考を巡らせる。
「ど、どういう事?俺達が何か…」
「鈍いわね浜松、私達監視されてるのよ?」
「ええ?!そうだったのか?!」
まだまだ甘いわねと黒鴉に鼻で笑われて翔はうぐっと気不味そうにする。
アキトはコークを飲みながらエリスに核心に迫る事を尋ねる。
「要は厄介で危ない物を収容や収束させるのがお仕事なわけだ」
「一応危ない物以外もあります。世間一般にとってアブノーマルな物を…あっ…」
言ってはいけない事を話してしまったようにエリスは口に手を当てる。アキトは大体察していると余裕の顔をしていた。
「気にするな、そういうのにも慣れてる」
翔が目を丸くして驚く。
「そうなの?!」
「当たり前だ、今まで幾つの世界を渡ってきたと思ってる?勿論こういう世界にも精通している」
黒鴉はコーヒーを嗜みつつ心強いわねとほくそ笑む。
「私達まだ三つ目だからね、アキトに任せていいわね」
エリスは異世界からの放浪者の余裕っぷりに目を丸くする。
「実力は認めます。しかし協力関係としてエクソシストとして参加を許可する事は…」
「ああ、気にしなくていい。本当にヤバい時が来るまで俺達は休むとするさ」
本来の救世の話になるまで別に力を貸す必要は無さそうだとアキトはケラケラ笑う。翔はそれでも力は貸したいと優しいことを言う。それを黒鴉は甘いとピシャリと注意する。
「甘いわ、彼等にとっては私達も収容する必要のあるアブノーマリティ、放っておきなさい」
「そ、それでも犠牲が出ないようにするのが…」
「偽善ね、ま、アンタらしいわ」
翔を笑っていた黒鴉は思い出したかのようにエリスを睨む。
「ちょっと、プライベートくらいは守ってほしいわね!お風呂もマトモに入れないわ」
「そ、それは…考慮します」
翔は今のやり取りを聞いてハッとしてまさかと言う顔をする。
「えっ!何?!裸見られてたの?!」
「すみません、監視も仕事ですので」
翔は唖然としてアキトはゲラゲラ笑い出す。
「気付いてなかったのはある種幸せだったな」
「幸せ…幸せだったのかな?」
翔はショックを受けつつもボケるのだが誰も答えることは無かった。
エリスは取り敢えず翔の前向きな姿勢に感謝しつつももう少し親睦や信頼を重ねてからしっかり協力したいと頭を下げてくる。そんなもんだろうなとアキトは溜め息をつく。
「取り敢えずそういう事で話を進めよう。もう少し上と仲良くしないと信用を得られないだろうしな」
「そうよね、上と掛け合って頂戴、プライベートくらいは守ってほしいって」
黒鴉も意見を出す。エリスは難しい顔をして渋々了承する。
「わ、分かりました」
「別に暴れたりしないから宜しく」
兎にも角にも信頼関係こそ大事であると相互認識として打ち合わせを行うのであった。
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部屋に戻った翔は部屋の中を物色してカメラを探してみる。
「あ、本当にあった…」
暫く探し回った結果、造花の観葉植物に取り付けられたカメラを見つけてやっぱり裸を見られたのかと肩を落とす。
「恥ずっ!俺普通に無警戒だった!…アキトさんは遠いにしても黒鴉にも警戒心で負けたのか…」
警戒心ゼロで簡単にエクソシストの組織を受け入れた事に急に恥ずかしくなってくるのだった。
溜め息を付きながらベッドに腰掛けて今後どうやって信用を得ればいいんだろうと考えるのであった。




