逆転勝利
城内をツシムが先導して玉座に迫る。しかしそこには皇帝は不在でツシムは舌打ちをする。
「逃がしたか…いや、まだだ」
窓から見える港の船を見てツシムは迷わず「アレだ」と指差す。
「傭兵、まだ戦う意思はあるか?」
「勿論、皇帝にはちゃんと物申さないとな」
二人は急ぎ港へ向かい出港の準備を進めていた船に乗り込む。
アキトは迷わず船を選んだツシムに疑問をぶつける。
「本当にこの船に皇帝が?」
「帝国軍の旗印があったしな…」
「それってつまり…あー、やっぱり」
ザッと帝国兵が現れてアキトは面倒臭いなと頭を掻いて武器を構える。ツシムは調子良さそうに新しい武器を手にする。
「それ、どこから…」
「城から拝借した。兵士の武器よりマシだ」
迫る帝国兵を二人は無双の力でフルボッコにして船の奥へと進んでいく。すぐに新しい将軍が現れてアキト達の前に立ちはだかる。
「ツシム、ここは俺に任せて行け」
「わかった。皇帝は任せておけ」
ツシムが先へと進んで行き残された将軍とアキトは一騎討ちを行う。
「我がギフトの前に散れ!」
「ギフトを過信してないか?そう上手く行くかな?」
船の上で馬鹿力を発揮すれば壊れて沈むとアキトは多少の制限を感じながら戦いに挑む。将軍は槍を手にして不敵に笑う。
「疾風突き!」
高速の突きにアキトは紙一重に躱す。
「ッチ、躱したか…」
「速いだけなら俺だって負けてないぜ?」
アキトは得意気に笑うが敵はギフトは速さではないと笑いトンと槍の石突きで船をコツンと叩く。ザーッと水音が背後から聞こえてきてアキトはギョッとする。
「海の上なら我が力は無敵なり!」
「水の操作か!こりゃたまげた」
アキトは驚く顔とは別に内心余裕を持って氷雨の力を使う。降り注ごうとした水はカチコチに氷漬けになる。船の周囲も凍り付いて動けなくなっていた。
「なにィ!全部…凍って…!?」
「悪いな俺の方が強かったみたいだな」
イキって相手の心を折ろうとするが将軍は技量ならまだ負けてないと戦いを挑んでくる。槍を構える敵にアキトはやれやれと刀を持ち替えて構える。
「ゆくぞ!」
「来い!」
一瞬の間、勝負は一撃で決まると互いに覚悟を決め渾身の一撃を繰り出す。
素早い突きに対してアキトは軽く弾き槍の軌道をずらし踏み込み斬撃を放つ。
「っぐ、かはっ!」
将軍は袈裟斬りを食らい膝を突きゆっくりと倒れるのだった。アキトは残心しながら一息入れてツシムを追うのであった。
皇帝とツシムは一騎討ちをしていて圧倒的なパワーでツシムの刃が皇帝の首元に突き立てられていた。
アキトが到着した時にはトドメの一撃が入りそうになっていて慌てて止めようとする。
「ちょっ!ちょっと待て!」
「待てん!この男の所業、許す訳にはイカン!」
ズバッと首を切られて皇帝は力無く倒れる。
「あちゃー、これじゃあこの先、異世界流刑をとめる手段が無くなっちまう」
「もうそんな事にはならない。皇帝の首は我が手に落ちた。形はどうあれ帝国軍は滅んだ…執念の勝利だ」
ツシムは皇帝の死を確認して首を取る。それを見ながらアキトはこの先を憂う。
「帝国の後釜が異世界への放流をしないとは言い切れないだろう?」
「俺がそれを許さない、新たな時代はこの俺が切り開く!」
威風堂々と宣言するツシムに王の風格を感じアキトは委ねてもいいのかもしれないと思うのであった。
ーーーーー
ツシムは皇帝の首を掲げて帝国軍を完全に降伏させて大逆転、帝国を完全に制圧してしまうのであった。
翌日アキトは簡単にひっくり返った情勢に無情なものだなと思う。
「ここら一帯を鶴の一声で制圧しちまうんだもんな…驚きだ」
「まだ帝国の残党はいる。ひっくり返すには時間が必要だ」
ツシムは地図を眺めて答える。役目を終えたアキトは帰りたいと呟く。
「傭兵、仕事をするなら国庫から金を出そう」
「使わない金よりも生活基盤だな。俺は異世界人だぞ?」
異世界人と言われて思い出したかのように手を叩くツシム。
「そうか、美味い飯が良かったか?取り敢えず各地を平定する必要がある。手伝ってくれるか?」
アキトは微妙な顔をしつつ国の運営が軌道に乗るまでと約束してツシムの下で暫く活動することとなるのであった。
と言っても残党の処理は楽に話が進む。どこの帝国軍残党も兵が出てきたと見るやすぐに降伏してしまい呆気なく元帝国領の平定が完了する。
「たった三日で終わっちまった。移動するだけだったな」
アキトの言葉にツシムは大笑いする。
「あっさり過ぎてつまらなかったか?」
「いや、うーん、まぁこれで俺も安心して帰れるってもんだ」
アキトはほっと胸を撫で下ろすがツシムから嫌なことを告げられる。
「異界送りについてだが帝国以外にも術は伝わってる…無責任じゃない事を祈ってはいるが絶対にやらない訳じゃない」
「はぁーそうなったら最悪だ…」
ゲンナリした顔をするアキトを見てツシムは胸を張って任せておけと語る。
「安心しろ無責任な下法は俺が取っ払う!」
「頼もしいね、最初からアンタに付いてれば良かったと思うよ」
今更な事を言いつつアキトはツシムに別れを告げて地球へと帰還するのであった。




