反故
反乱軍の首謀者を捕らえた事で帝国軍の勝利で収められる。
普通なら処刑と言う所だがこの世界のルールに従うなら異世界に流刑になると考えるととんでもない事になったとアキトは囚われたツシム王を見て微妙な表情になる。
(…この場合は例の流刑になるのか?そうなったら俺が困るんだが?)
内心焦るアキトを置いて話は進む。帝国首都ホーベムへ戻る一行、道中は帝国兵もツシムもとても静かであった。
二日掛けてホーベムまで帰還し異世界流刑についてアキトは文句をスライダー将軍経由で皇帝に訴える予定なのだがこのままだとマズいのではないかと考える。
「あのースライダー将軍?もしかしてツシムは流刑ですか?」
「…どうだろうな…私には分からない」
はぐらかしではなく真面目に分からないと言われてしまいアキトは頬を掻くのだった。
首都に入った一行、皇帝は思考する時間も無くただ一言ツシム王の異世界への流刑を命じるのだった。
「ちょ、ちょっとタンマ!」
即日の刑執行の前にアキトが慌てて待ったを掛ける。
「なんだお前は!」
皇帝がアキトの登場に怪訝な顔をする。スライダー将軍から話が通っていないのかとアキトは何とか異世界流刑を止めようとする。
「異世界への流刑は他の世界の迷惑になる。それを理解しているんですか?!」
「そんなもの我々の知ったことでは無いな」
何ということを言うのかとアキトは呆れてしまう。仕方なくハッキリ迷惑だと異世界を代表して物申す。
「俺はアンタラのせいで迷惑被った世界から来たんだ。こんな馬鹿げた事はやめろ!」
「…貴様は異世界人だと?将軍。どういう事だ?」
スライダー将軍はアキトの目的は分かっているが皇帝には逆らえないと白を切るのであった。
「ふん、貴様も流刑に処してくれる!」
「はぁ…こうなるなら反乱軍に加担するんだったな」
「なんだとっ!?」
アキトはツシムの捕縛縄を一瞬で斬って解放する。ツシムは縄を投げ捨てながらアキトを睨みつける。
「貴様、何を考えている?」
「さっさとどっか行け、こっちは約束を反故にされて頭来てるんだ」
帝国軍は慌ててアキトとツシムを捕まえるように刑場に殺到する。
「既に逃げ場は無いな…」
ツシムは拳を構えて次は皇帝を睨みつける。
「皇帝、逃げるなよ?」
「愚かな、大人しく刑を待てば良いものを…死ぬがいい!やれ!」
帝国軍が一斉にアキト達に襲い掛かる。
アキトは素早く一人目を切り捨てて武器を奪ってツシムへとパスする。
「使え!」
「フン、礼は言わんぞ」
アキトとツシム、二人の無双が始まる。帝国兵達はフルボッコにされていき遂にギフト持ちが現れる。炎を操るギフトの将がアキトの氷の壁を切り裂いて登場する。
「氷使いなど切って捨ててくれる!」
「別に俺が使えるのは氷だけじゃないんだよなぁ…」
剣に炎を宿しアキトに迫ってくる敵にアキトは武器を持ち替えて羅刹の力に切り替える。
(崩打、かーらーの砕撃)
姿勢崩しからの武器破壊を放って敵の動きを制限する。
「ぐぬっ、ならば!」
折れた刀身を炎で再現し戦闘続行してくる。
アキトは溜め息をついて実体のない剣ごと相手を叩き斬る。
「がぁ!鎧ごと…」
ギフト持ちの帝国兵はドサッと倒れ一般兵達はアキトとツシムには敵わないと逃げ腰になる。
スライダー将軍は負けじと号令を放ち兵士達を鼓舞する。
「たった二人に恐れるな!帝国軍として戦うのだ!」
背後を取れば戦えるはずだと囲む様に展開する。
アキトとツシムはゆっくりと背中を合わせる。
「最初から反乱軍に加担すれば良かったものを…」
「そう言うなって、俺にも色々あるんだよ」
二人を討伐しようと弓隊も現れていよいよ数の力で抑え込まれるのかというところでアキトの前に旅行鞄が出て来て使えとアピールしてくる。
「いいのか?サービスか?…使ってやるか」
アキトは旅行鞄を前に指を鳴らす。
「死にたくなきゃ逃げる事だ。こっからは本気だぜ?」
旅行鞄がガバッと開いて中から武器が次々に飛び出してくる。帝国兵は何事かと後退りする。
飛び出した武器が空中で静止してズラリと並びアキトの合図と共に帝国兵へと襲い掛かる。
ツシムはアキトの隠し球に舌打ちする。
「そんな大技があるなら最初からやって欲しいものだな」
「これやると誓約があるんだよなぁ…ま、今は気にしない事にする」
帝国兵は襲い掛かってくる武器相手に必死に抵抗するが相手にならずある者は武装を破壊されある者は蹂躙され武器達は十色の倒し方をする。
「っく、おのれ!こんな強いなどとは…!」
スライダー将軍も必死に抗うが大剣により武器を弾かれて袈裟斬りにされる。
「ば、馬鹿な!この私がっ!」
「将軍がやられた!?引け!引けー!」
首都内で何処に引き上げるというのか生き残ってボロボロになった兵士達は逃げ出してしまいツシムは覚悟を決めた顔をする。
「俺は皇帝を殺す。お前はどうする?」
「付いていこう。俺も一言物申さないと気が済まない」
二人は城内に堂々と侵入し皇帝を探すのであった。




