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ミッション達成率120%越えの暗殺者は、灰かぶりの悪逆王女(優しい)を、今日も殺せない  作者: 初美陽一


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20/22

第20話 ゆめゆめ、忘れることなかれ

 歴史ある女王制国家たる、このマギア国において、()()()()たる男は深夜、自室を苛立たしそうに練り歩いていた。


「おのれ、おのれ……失敗、失敗しただと!? あの無能大臣め、()()()()()()()()恩すら返せぬとは、犬以下だな!」


 犬に失礼で、かつ口走る者も品格は怪しいが――室内に一人だけという油断からか、その口は軽々しく走る。


「クソっ、あの目障りな第一王女さえ消えれば、他の王女は現在、存在せず……王位継承権は確実に余のものだったというのに! クソ、クソッ……一体、なぜ国一番の暗殺者が……一体なぜ、あの忌々しい王女の傍にいて、しかも助けたと!? まさか第一王女が雇ったのか……おのれ、あの女狐めぎつねめ――」


「ああ。俺に依頼したのが貴様でないことだって、俺には分かっていたさ。ましてや王女が初めから、俺を雇っていたわけがない(最後はともかく)」


「は。……――ヘェァッ――!?」


 ()()――

 聞くに堪えない下卑げびた声を止めさせるため、背後から第一王子の喉に短刀の刃を添え、行動の余地をも〝殺し〟た。

 別に叫ぼうと、騒ごうと、その音が外へ届く前に〝殺せる〟のだが、あまりにも耳障りで、聞くに堪えない。


 そも、聞く必要もない――俺はただ、用件を伝えに来ただけだ。


「醜悪大臣を操り、聖女たる王女のありもしない醜聞を広め、いわれなき処刑まで強行しようとしたのは……第一王子たる貴様だろう。無論、言い訳は不要。貴様らのような讒言ざんげんで人をおとしめるクソカスの言葉は、信じるに値しないからな。が、真の悪逆への報いは、理解しているか?」


「っ! ……く、くく……良いのか? 貴様がアレをどのように思っているのか知らんが、我はいわば王女の身内……殺しでもすれば、王女は悲しみ――」


「ほざくな、その程度は調べるまでもない話。第一王女は、現・女王の()()()だ。貴様は腹違いですらない、ただ王家に連なる血筋というだけで、今のところは他にいないからと仕方なく、次の王位継承権にえられただけだろう。そんな赤の他人のどうでも良い者を殺した程度で、王女が悲しむとでも言うのか?」


「グッ! ……グッ、グヌヌヌッ……!」


 今の俺の言葉には、ほんの少しだけ嘘が混じっている。こんなクズでも殺してしまえば、悪逆なまでの心優しさの王女は、きっと悲しむのだろう。


「……まあこうして直接に見た限り、本当に王家の者なのか怪しいくらい、下賤げせんいやしい人品じんぴんに思えるが……」


「っ! き、貴様ッ……無礼であるぞ――」


「ほう。醜悪大臣といい、貴様らはジョークのセンスだけはあるな。今、俺を無礼と言ったのか? 国一番の暗殺者である俺に……貴様のような、王女にいわれなき罪をかぶせようとした、無礼以下の塵芥ちりあくたが?」


「ぁ。……ぁ、ぁ、ぅぅ……ゃ……やめっ」


 グッ、とつい力を籠めてしまい――だが、目的は()()ではない、と戒める。

 俺は一思いに〝野心を殺してやる〟ような、そんな()()()()()()など、与えない。


 悪逆などと不当に揶揄やゆされていた、王女に対してとは違う。

 真に恐るべき()()()()()()、この胸糞悪い男に――永遠の刃を刺すべく、告げた。




「忘れるな、いついかなる時も、眠る時も、夢の中ですらも。

 国一番の暗殺者は、貴様の心の臓を、背後から狙っている。


 もしまた王女の命を狙うことあらば、その時は。

 貴様の五体を生きたまま寸刻みにし、国中に撒いてみせる。

 それだけは、必ず、絶対に――間違いなく、約束しよう。


 ミッション達成率120%の暗殺者の、慈悲なき刃から。

 逃げられるなどとは――ゆめゆめ、思いはせぬことだ」




 それだけ告げ終えた俺は、自分の〝気配〟を完全に〝殺し〟て、コツコツと刃で壁を叩く音だけ響かせて、存在を強調してやる。


「……ヒッ、ヒヒヒッ……ヒハッ、ハッ……ハヒッ……

 ヒィーッヒヒヒッ……ァ、エヘアヒャヒャァッ……!」


 心が壊れたような不気味な笑い声をあげ、その場にへたりこみ、失禁までしてしまう、今回の件の黒幕に――最後まで〝心を殺してやる〟安穏など、与えない。


 そうして俺は今度こそ、背を向け、音を〝殺して〟立ち去った。


最終2話は明日「3月30日」の、

「18時10分頃」と「19時20分頃」に特別2話投稿する予定です。

最後までお付き合い頂ければ嬉しいです……!

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