第7話:ミュータントの襲来
面白いと思っていただけたら、ぜひブックマークや評価をお願いします!
キロたちは家でくつろぎ、水を飲みながら話していた。セバスチャンがテレビをつけると、ちょうどニュースが流れていた。その内容は、彼らにとって現実離れしたものだった。
「速報です。ミュータントを名乗る者たちが突如出現しました。彼らは『主』の命を受け、ボスたちを次々と倒しているグループを抹殺しに来たと発言しています。念のため、外出は控えてください」
そう伝えると、リポーターは別の話題に移った。
セバスチャンは、ボスたちを従える「主」とは何者なのか、気になって仕方がなかった。そのとき、家が激しく揺れた。
外に出て前方を見ると、人間のような姿をした何者かと鉢合わせた。だが、普通の人間ではない。すぐにそう分かった。
「やあ、こんにちは。『主』が遣わすボスたちを倒してきたお前たちを、始末しに来た。ほかのミュータントも後から来るが、まずはお前をバラバラにしてやる」
「ミュータント? コミックの中だけの存在だと思ってたよ。でも、倒しに来たっていうなら、最初の相手になってあげる」
ミュータントは地面を蹴って跳びかかり、拳を構えた。セバスチャンは目を閉じ、ゆっくりと開く。今度は「喜び」の感情が、彼の体を支配していた。
ミュータントの拳がセバスチャンの胸に炸裂する。だが、セバスチャンは無傷だった。
「待て……なぜ俺の一撃に耐えられる!?」
「理由は簡単さ。こっちのほうがずっと強いから。殴られても、痛くもなんともないよ」
セバスチャンが拳を振るうと、ミュータントは後方へ吹き飛んだ。光に迫る速度で追いつき、連続で拳を叩き込む。数発のうちに、ミュータントは息絶えた。
「弱すぎるね。みんなに知らせてこなきゃ」
だが、一歩踏み出すより早く、別のミュータントが虚空から現れ、腹に蹴りを入れた。しかし、セバスチャンはほとんど動かなかった。
「不意打ちのつもり?」
セバスチャンはミュータントの首をつかみ、もう片方の手で腹を貫いた。ミュータントは即死した。
「哀れだね」
セバスチャンは踵を返し、仲間たちにメッセージで知らせた。
◇
最初にメッセージに気づいたのはキロだった。家を出て街へ向かう。レストランやカフェ、民家を見て回ったが、ミュータントは一人も見つからなかった。
(本当にミュータントなんているのか? それとも、セバスチャンの思い過ごしか?)
ふと振り返ると、一人の人間が立っていた。だが、その手には炎が揺らめいている。よく見れば、ミュータントだった。
ミュータントが手を掲げ、炎の弾を放つ。キロは即座に反応し、身をかわした。
「セバスチャンの言ったとおりだったな。覚悟しろ、ミュータント。お前を倒す」
「それはどうかな。まず名乗っておこう。俺はディランだ」
「キロだ。俺の名前を覚えておけ」
キロは素早く動き、ディランへ向かって駆けた。拳を放つが、ディランはかわす。キロはすぐさま次の拳を繰り出し、今度はディランを捉えた。ディランは血を吐く。それでも終わらせず、キロはさらにもう一発叩き込んだ。
「シリアス・ブロー」
一撃を受けた瞬間、ディランの目は白目を剥き、体は数キロ先まで吹き飛ばされた。ディランは最後の力を振り絞り、巨大な炎の弾を放つ。その衝撃で建物が揺れ、地震が起きた。近くのビルは次々と炎に包まれていく。
「建物を燃やす攻撃か? 結局いつも、建物は壊れる運命らしいな」
そのとき、炎の弾が爆発した。爆発はキロを呑み込み、二十キロと三メートル先にまで及んだ。キロの体が燃え始める。
「くそっ! この炎、体が焼ける!」
他に手はなかった。キロは、ある感情を表に出すしかなかった。笑顔だった。
キロが笑った瞬間、凄まじい突風が巻き起こり、炎は散らされていった。瓦礫がすべて吹き飛び、火は消えた。キロは笑うのをやめ、いつもの真顔に戻った。
「表情や感情を出すと、強烈な突風が起きる。しかも、とんでもない衝撃波つきでな。だから俺は、いつも真顔で、同じ口調で話しているんだ」
◇
その頃、ウォーフはある街を歩いていた。穏やかな通りで、手をつないだカップルの姿もちらほらと見える。
一人のミュータントが、カフェに入っていくウォーフを見つけ、あとを追った。店内に入ると、窓際に近い席に座る。ウォーフがコーヒーとパンを注文するのが見えた。すると、ウォーフがちらりとこちらに視線を向け、その視線に気づいた。
ウォーフは拳を握りしめて席を立ち、ミュータントのほうへ歩み寄る。ミュータントは目をそらしたが、ウォーフは低く囁いた。
「外に出ろ。話をつけよう」
「いいだろう。行こうか」
二人はカフェを出た。ミュータントは距離を取り、二人は向かい合う。
「まず名乗らせてもらうわ。私はレスリー。『主』の命令で、あなたを殺しに来たの」
「女だったのか。だが、普通の人間じゃないな」
「そうね。でも、あなたを殺さなきゃいけないの。苦しませずに、楽に殺してあげる」
「楽に殺す、か。俺が誰かも知らないらしいな」
レスリーが飛びかかった。ウォーフは後ろへ跳んでかわし、地面に拳を叩きつける。地面の一部が砕け、レスリーはバランスを崩した。ウォーフはその隙を逃さず、腹に拳を叩き込む。レスリーは血を吐いたが、すぐに立て直し、ウォーフへと駆け出した。
そして、ミュータントとしての能力を使った。植物を生やし、ウォーフの手足に絡みつかせたのだ。ウォーフは動こうとしたが、動けない。近づいてきたレスリーが殴りかかる。レスリーが殴るたび、空気が重くなっていく。
だが、ウォーフにほとんどダメージが入っていないことに気づき、レスリーは呼吸を整え、一撃に意識を集中させた。ウォーフはいつもの真顔のまま、あくびをした。レスリーは目を見開き、両手から紫色のエネルギーを放って、両拳を叩き込む。
ウォーフはそのエネルギーに気づいて身構えたが、遅かった。両拳が直撃する。
その一撃で、国全体が揺れた。建物はすべて崩れ落ち、人々は死んだ。数分後、すべてが壊滅していた。フランスという国そのものが、である。
ウォーフは重傷を負い、視界も奪われていた。片足は深く傷つき、両腕はひどい火傷を負い、両脚も同様だった。血を吐き、かろうじて動ける程度。ようやく片目を開け、周囲を見回して、すべてが破壊し尽くされ、人々が死に絶えていることを悟った。
レスリーは気を失って地面に倒れていた。ウォーフはその体を見ると、傷だらけの体で立ち上がり、歩み寄った。近くにあった瓦礫を持ち上げ、レスリーの体に投げつける。体は押し潰された。ウォーフは何も考えず、さらに瓦礫をつかんで投げ続けた。そして背を向け、重い足取りで去っていく。
レスリーの体は、積み重なった瓦礫の重みで潰れていった。目を覚ましたレスリーは状況に気づき、動こうとしたが、疲れ果てて動けなかった。
ウォーフは、レスリーの体が動く気配を感じて引き返した。拳を放ち、瓦礫を粉砕する。上を見たレスリーの目の前にいたのは、ボロボロになったウォーフだった。
「フランスを丸ごと破壊してまで、俺を殺そうとしたのか? やりすぎだ。お前は、俺が殺す」
レスリーはその言葉を聞くと、反対方向へ這って逃げようとした。だが、ウォーフはすぐに追いつき、首をつかんだ。
「死ね!!」
ウォーフが首を握りつぶそうとした、その直前だった。黒い影が彼を突き飛ばし、レスリーを腕に抱きかかえた。ウォーフが瞬きをすると、それは白い鎧をまとった騎士だった。
「いずれ、また会おう。お前が仲間とともに、もっと強くなったときにな」
そう言い残し、騎士は瞬きの間に消えた。ウォーフは周囲を見回したが、あの謎の人物の姿はどこにもなかった。誰なのかと考え込むうちに、ある思いが頭をよぎる。
(ボスの一人か? それとも、ただ並外れた速さを持つ男なのか?)
ウォーフはすぐにその考えを振り払い、その場を去った。
◇
別の場所では、ソネがビン・ネーというミュータントと戦っていた。日頃の修行のおかげで、いくらか余裕を持って優勢に進めている。
ソネは高く跳び上がると球体に変身し、そのままミュータントの体を貫いた。着地して球体の姿を解くと、ミュータントの体には大きな風穴が開いていた。ソネは息を吸い込み、音速の三十倍もの速度で駆け去った。速度の修行の成果だった。
◇
ウォーフは病院に運ばれ、回復のために数週間入院することになった。キロ、セバスチャン、ソネは家で待っていた。
ウォーフはこれで、自分も修行しなければならないと悟った。キロはセバスチャンに、明日一緒に修行しようと誘った。セバスチャンは承諾する。ソネにも声をかけると、ソネも一緒に行くと答えた。
フランスでは、建設業者たちが建物の再建を始めていた。クレーンが派遣され、瓦礫が撤去されていく。ほかの国々も、一日も早い復興を目指して支援を送った。




