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転生する時に選んだ【記憶】スキルが自重を忘れてきた  作者: ゆらゆら


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僕、束の間の休息を堪能する

定時に投稿することの難しさェ……。なんとか不定時毎日更新頑張るますっ

 ネメアを生き埋めにして討伐した事で、僕……では無くグロックとジュリア、エレアがとっても称賛された。


 グロックは瞬時に大穴を開け、生き埋めにした。

 ジュリアは膨大な水を生み出し即座に穴を水で満たした。

 エレアは片目を奪い、大きな隙を作り出した。


 僕はね、やったことがプラマイゼロらしい。


 魔物達の戦闘力を奪って自分もぶっ倒れ、勝手に戦場に出て死んだフリを続ける魔物を殺して殺されかけ、ネメアを吹き飛ばし作戦を立てたけれど全体的に無茶をした、とまあ大人達を振り回しすぎた様だ。


 一応褒められたけど同じくらい怒られたんだよね〜。

 …………でも怒ってもらえて良かった。

 だってみんなが生きているから、怒る元気があるから、僕が生きているから怒ってもらえるんだ。

 その事が嬉しくて笑ってたらもっと怒られたんだけどね。



 生き埋めにしたネメアは、確実に息を引き取るまで一時間程様子を見てから魔法使い達が掘り起こした。


 ネメアは確実に死んでいたが、やはり外傷と呼べる様な傷は無かった。

 ミルのお母さんことエルさんの一撃で内出血や肋骨がバキボキに折れてたりはしたらしいけど……こわっ。


 ただ切り裂く事が出来ない皮を解体するのに難儀していたようで、そこは神話通りネメアの爪やら牙やらでどうかとアドバイスしてみたら上手くいったらしい。


 ネメアの皮は有用なので、鞣し終えたら功労者や村の防衛の為の戦力となる人に革鎧を作って贈るそうだ。

 そのほかの牙や爪、鬣、なども様々な物に有効活用していくらしい。

 ネメアレベルの魔物となると滅多に現れず、しかも討伐もされ難い。更にはほぼ無傷となれば市場価値は凄まじいのだが、この村は金銭を求めていないのでほぼ全てが武具に行った。


 この村のそういうところが好きなんだ。



 他の魔物の死骸も、村の人総出で解体作業が行われた。

 多少の魔物は体が定着しておらず一部位を残して消えたのだが、半分以上は全身を残して平原に倒れている。


 しかもほとんどの魔物は首が落とされたり、首の血管を斬られての失血死なので、全身余す事なく剥ぎ取るんだと大人達が血眼で掻っ捌いていた。

 子どもたちにも解体の手解きをしながら行われたのだが、やはり刺激は強かった。



 終わりの見えない解体も日が暮れれば一旦中断。

 夜には焚き火や篝火が焚かれちょっとした宴会が行われた。

 そこでは真っ先に解体されたネメアの肉が振る舞われたのだがそれはもう絶品で、村の皆んなでお腹いっぱい食べたよ。

 なんでも強い魔物は毒が無ければ大抵美味いそうだ。


 僕も解体作業で参っていたのが嘘の様に食べてしまった。

 エレアがとっても大事そうに、でもバクバクと食べていたのが印象深い。



 東西の魔物の氾濫に関してはどうやら数日の猶予が見込める様だ。

 エルフの斥候によれば、ヒュドラとステュムは同族以外を殺してしまっているのだとか。

 なので全体的な数が減って、南よりは幾分マシな戦いになるだろうとの事。


 ついでに僕のテラホンは東西どちらでも開幕を告げる狼煙にしたい様だ。

 大人達からは「止めるだけ無駄」、「ここまで来たら」、「折角だからやっていけ」と言った具合で半強制だった。


 いや良いんですけどね? なんか田舎のおじちゃん達に背中叩かれながら催促されてるみたいで……縁日かな? 縁起なんて全く無いのに……。



 後そうだ、クーア。お姉ちゃんが面倒を見て居た筈のクーアは村長に預けられていた。

 村長の背中は落ち着くのか、とても穏やかに眠っていたそうだ。

 夜はぐずぐずになるまで解したネメアの肉をちょっと食べたよ。


 その時の目と言ったら、それはもうキラキラで可愛かった。幼くても美味しいものは美味しいらしい。




 そして南の氾濫を鎮圧した翌日。


 朝早くに目が覚めた僕は、お姉ちゃんの拘束を優しく解いてから庭の隅に向かう。


 そこに深めの穴を魔法で作って、僕は吐いた。


 昨日の戦いで僕が殺した魔物の死に様と殺した時の感触を思い出しながら何度も吐いた。


 何度も何度も吐いて、ネメアの肉は消化されていて胃液しか出なかったけれど、それでも吐いた。


 涙と鼻水を垂らしながら黙祷を捧げた。

 未だ手に残る感触と命が消えていくあの目を僕は忘れない。

 骨を砕き肉を潰す感触。目から光が消え、体がぴくりともしなくなる瞬間。どちらも忘れない。



 何かが違えば、ああなっていたのは僕や家族や村人の誰かだった。本当に奇跡的だった。無茶を通して良かった…………。


 そう言えば、ネメアに喰われそうになったあの瞬間。何故か僕は微塵も恐怖が無かった。

 今思い出しても、恐ろしくはあっても怯える事はない。どうしてなんだろう。


「……僕はあの瞬間……満足していたのかな……」


 僕は何処かで死にたいと思っているのだろうか。生きるべきでは無いと思っているのだろうか。

 あるいは、どうでも————


「————アッシュ」


 その声に咄嗟に振り返ると、エレアが居た。


「エレア……おはよう。どうしたの?」

「アッシュ、居なくならないよね……?」

「ここ以外に行くとこないよ?」

「死んじゃいそうな感じがした。どこか行っちゃいそうな気がしたの……」

「…………」


 僕は……僕は何がしたいんだろう……。


 生きて死にたいとは思った。胸張って死んで、色んな話を前世の両親や友人に誇ってやろうと。


 じゃあどんな死が胸を張って死んだことになるんだろう。大切な誰かを守れたら? 大切な誰かの代わりに死ねたら?


 ネメアに喰われていたら?


 …………劇的な死は胸を張れるのか? いや違う。それなら交通事故だって一緒だ。

 唐突で避けようが無い死。ネメアはただのトラックだ。


 あんなの僕が後悔した死に方と一緒だ。

 後悔する暇もなく、特別な感慨も無くあっさりと死ぬ…………一番望まない死だ。


 ……そうだ、老衰しよう。

 ひたすら健康に生きて

 沢山の家族に囲まれて

 死を惜しまれて

 僕も生を惜しんで

 もっと生きたい、死にたく無いと悔やみながら死のう。


 更新しよう。生きて死ぬんじゃない。

 『生き切って死のう』

 もう生きれない程に生きて、みんなに見届けて貰いながら死のう。


「お姉ちゃん……大丈夫。もう何処にも行かないよ。僕はもう死なない。僕は生き続けるよ」

「……うん。なんか今ホッとした。アッシュ、もう寂しそうじゃないね?」

「寂しそう……? 僕が?」

「うん。私ね、一緒に居たかったのもあるけど、一緒に居てあげたかったんだ。アッシュと手を繋いでないと一人でどこかに行ってしまいそうな気がしたから」


 なんだよ、それ。僕より僕の事知ってるじゃん……。この人には一生敵わないんだろうなぁ。


 ……ずっと手を繋いでいてくれてありがとうね。


「でも……」

「でも?」

「ちょっと臭い……お口濯ぐんだよ? ばっちぃからね? 穴もちゃんと埋めるんだよ!」

「…………はい」


 なんだろう、今世で一番傷ついたかもしれない。

 ちょっと臭い……か。ネメアよりもきつい一言だ。


 僕は自分を全力で浄化した。



 昼、今日も昨日に引き続き魔物の解体を総出で行う。


 夏になる前の今の時期は気温も上がり始めて、肉や素材が傷んでしまう。

 なので出来るだけ大きい魔物や、貴重な素材や希少な部位を優先して解体を行うのだ。



 僕の魔力は一晩で通常時の全快にまで戻った。若さ故か体力も戻った。気力は今朝回復したと思ったら臭いで半分消し飛んだ。


 今も気力は回復しきっていない。姉であり、大切な人でもある人に臭いと言われるのは想像以上に辛かった。


 デオドラント大事って思ったら浄化をやり過ぎって怒られて僕は泣いた。アッシュ成分を消してはいけないらしいです。



 とまあ、心はともかく身体は万全なので僕も解体のお手伝いに向かう訳だ。

 今は平原にエレアと手を繋ぎながら向かっている。父さんは先んじて向かっており、母さんはクーアの面倒を見ている。


 正直に言うなら僕がクーアの面倒を見たかった。解体は必須技能ではあるんだけど、内臓とか結構きついんだよね。

 今朝吐くほど【記憶】を見返したしもう吐く事は無いと思うんだけど……はぁ、気が重い。


「あっしゅ〜あっしゅっしゅ〜」

「その歌やめない? 恥ずかしいよ、僕が」

「これはね、無意識なの」

「無意識なの!?」


 重症だ。僕が死にかけた後遺症が残ってるんだ……くそっ僕が咄嗟に退避行動を取れていたらこんな事には……!!


「今日もいっぱい解体してお肉を食べよ〜!」

「……当分は美味しいお肉が食べれそうだね?」

「お姉ちゃんが……ううん。将来のお嫁さんがいっぱい食べさせてあげるよっ?」

「ぐぼぁっ……!? そんな言い方誰に教わったの!?」

「ミルちゃん!」


 ミルちゃーん!! なんでそう言う事するんだありがとうございます!


 エレアはとっても機嫌が良い。今もあっしゅっしゅの歌が口ずさまれている。


 そんな楽しそうな顔でお嫁さんですって……ネメアよりきつい一撃だわ。

 ネメアって大した事無いのかもしれない。


「今日はご機嫌ですねエレア。アッシュ頭領もこんにちは」

「あっしゅっしゅぅ〜こんにちは二人ともぉ〜」

「あれ? 流行りかなにかかな……こんにちは」

「ジュリアちゃんとジェイナちゃん! 二人も機嫌良さそうだね?」

「お婿さんが元気に生きているのをこの目で見たら機嫌も良くなります」

「ほんとそれだよぉ〜。あっしゅっしゅはあんまり無茶ばっかりしちゃダメだよ?」


 お婿さんは照れるだけだけど、あっしゅっしゅはやめて欲しいかもしれない。

 でも心配をかけた身である僕に出来ることは甘んじて受け入れる事だけ。


 とりあえずもう怒ってなさそうで良かった。

 昨日は泣きながら怒って、僕が生きてて嬉し泣きして、僕が死にかけて悲し泣きして、笑顔なんて微塵も見れなかったからね。


「以後気を付けます……」

「ふむ……なんだか」

「あれだよねぇ……」


 ジュリアとジェイナが神妙な顔で僕の顔をまじまじと見てくるが、何かついてるだろうか。怒られるぐらい【浄化】をかけまくったんだけどな。


「カッコよくなったぁ!」

「精悍になりましたね!」

「あれかな、命懸けの戦いしちゃったからかな?」

「私は! 私は変わった!?」

「エレアはいつも通りですね」

「変化無しぃ〜」

「今日もすごく可愛いと思う……よ?」


 機嫌が良かったのに不貞腐れてしまった。手は繋いだままなのでそのうち戻るとは思う。


 にしても僕の顔つきが変わったのは果たしてどっちのせいなのか……命の危機を感じたからか、老衰を決意したからか……どっちでも良いか。


 僕の手は繋がれている。

 死ぬ事なんて許されないし望まれない。僕自身も許さないし望まない。

 今は繋がれたこの手を僕からも握り返そう。



 その後も何気無いいつも通りの会話とちょっとだけイチャつきながら僕らは平原へと向かった。



 南の平原では既に多くの人が集まって解体作業を始めて居た。

 そこにはお馬鹿三人組の姿もあった。


「……何やってんだお前ら?」

「新しい遊びですか?」

「アッシュって実はすごく馬鹿だよね〜」

「僕がしてるのは罰ゲームだ。やりたくてやってる訳じゃない」


 そう、今僕は罰ゲームをやらされている。昨日無茶をした罰ゲーム。


 その内容は、エレアを肩車して、ジェイナとジュリアを両腕に乗せて、そのまま三人を運ぶ事。


 二倍に圧縮した精密強化で筋力を補い、武術の重心操作でバランスを保ち、上下の揺れを抑えて快適にお運びしているのだ。


 僕が悪いんじゃない。僕は罰を受けているだけだ。


「そろそろぉ降ろしてくれるとうれしぃかもぉ……」

「流石に恥ずかしいですね……もう良いですよ?」

「私はこのままで行くよ! アッシュ! 発進!」


 エレアの操縦に従い発進する。父さんの姿が見えたのでそこまで向かって指示を仰ごうと思う。

 ジェイナとジュリアはささやかな仕返しをそこで堪能していただいてもろて。


「おとうさ〜ん。私達何したら良い?」

「とりあえず降りる事かな?」

「アッシュ! 降下!」

「カシコマリマシタ!」


 ゆっくりと三人を降ろす。


 横から「よっ大馬鹿頭領」と囃し立ててくるので水鉄砲をぶっかけておく。

 風の魔法で撃ち落とされたので、更に水鉄砲を撃ち込む!


「くそっ! 小賢しいぞおいちゃん!」

「子どもに負けるほど耄碌しちゃいねえのよ!!」


 カル父さんに拳骨を落とされるまで撃ち合いは続いた。


「まったくもう……元気が有り余ってるね? そんなアッシュには頭だけが破裂しているこの熊、名前はティラノスアルクトスの解体を手伝って貰おうかな!」

「あぁ、こいつ倒した所でネメアに喰われかけたんだっけ……分かったよ。僕が殺した個体なら尚更手伝う」

「三人はエルさんの方で指示を仰いでもらってくれ。小型の魔物は劣化が早いから手が欲しいんだ」

「「「はーい」」ぃ」


 ティラノスアルクトス……そんな立派な名前を持っていたのかお前。

 ティラノスは確か暴君とかそんな意味。アルクトスは多分熊のことかな?


 かっこいい名前してる癖に死んだ振りとかするから頭が水溜りになるんだぞ……おえっ。やったの僕だけど。


「頭が潰れてて血抜きは出来ているから、後は毛皮を剥いでお肉を取って、貴重な胆嚢を回収しないとね」

「はーい」

「俺も手伝って良いっすか?」

「コルハ君! 力持ちが居てくれると助かるよ!」


 コルハに続いてゼガンとグロックも申し出て来た。


 解体をスムーズに手伝いながら、三人は自分達の活躍を見たかとそれはもう自慢してきた。


 正直全部この目で見てたから褒めるしかないのが悔しい。


「そうだゼガン。虎の首を切ったのはゼガン? それともジュリア?」

「それは姉さんですね。やり方を聞いてみても教えてくれないんですよ……アッシュ君知ってます?」


 って事は、前に言った魔法に意思を乗せる事に成功したのがあの結果って事か。

 風で真空を作って切り裂くのでは無く、風そのもので首を斬り落としたんだもんな。


 ……ははっ。ジュリア凄すぎ。


 ジェイナも猪の頭かち割ってたっけ。今思えばあんな重そうな武器を持って来て間に合うはずが無い。

 つまりその場で作った。土魔法での造形が進化してる上に強度やしなりまで再現出来ているなら……そんなあり得ない事、魔法に意思や願いを乗せてるとしか思えない。


 僕の魔法がファンタジーで行う物理だとしたら、二人はファンタジーでファンタジーを行ってる。

 正しく魔法。


 いやそれで言えばグロックの土の拘束もそうだ。


 逆なのか……僕が理論に囚われ過ぎているだけでもっと魔法は自由。

 想像を形にする為に前世の知識で強固なイメージを作っていたけど、それが足枷になってるんだ。


 やっちゃったなぁ……。


「ゼガン、多分やってたら出来るよそれ。僕にもまだ出来ないけど、あの魔法を間近で見たゼガンなら絶対出来るようになるよ」

「出来ない人が言う言葉じゃないですけど……謎の説得力。鍛錬あるのみですか」

「僕の土魔法はね〜まだまだ色々出来るんだよー? アッシュ知りたいでしょ〜」

「教えろ下さい!」

「お前! 俺の光魔法見なかったのか! 俺も出来るようになったんだぞ!」

「あれね、正直びっくりしたよ。精密身体強化も使ってたし……僕ももっと何かやんないと追いつかれそう……」



 この時間が楽しい。この時間が好きだ。

 みんなと笑って過ごす時間を守る為にも、残る東西の氾濫も全力で片付けよう!

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