雷を纏う獅子 ネメア 決着
ネメアが大きく口を開けて僕を喰らおうとする。
そういえば、魔物は高濃度の魔力を好むんだっけ。
今の僕は浄化された魔力を四倍の密度で全身に行き渡らせ、外側にも纏っている。
要は格好の餌。
しかも僕は生き返った配下を殺す厄介な存在。
ゲームみたいにヘイト値があるとするなら、きっと僕に対するヘイトは上限を突破してるんじゃないだろうか。
更には、四倍強化状態の僕の知覚を超えた速度で現れたネメア。今になって雷音が聞こえてくる。獅子だけにね。
にしてもこいつ、魔法ですら無い癖に瞬間的に雷速で動くって事? 音を置き去りにする速さだよ? 音速越えるなよ。
詰まる所、避け切れない。ほぼ死ぬ。最善でも腕一本かな。
どうしよう、怒られるだろうな……みんなの顔が過ぎる……走馬灯か……明るい思い出ばっかりだ。幸せな時間ばっかり出てくる。
思考だけが流れていく。
身体が動かない。
強化状態で体感時間も伸びているのに指がぴくりともしない。
ネメアの口がゆっくりと迫る、僕の足がジリジリと動き出すが、雷速に迫れる訳がない。
飛び出したい、倒れ込みたい、今の思考スピードならなんだって出来るのにな……身体が追いつけないや……。
享年八歳ってのが一番悔しいなぁ……。
ネメアの口が眼前に迫ったその時、僕の髪を掠めながら何かが横を通り抜ける。
そしてネメアの口内へと入り込み喉奥へと突き立った。
これにはネメアも大きく怯み、後退を余儀無くされる。
でも今の……木剣……? それに見覚えしか無いあの木剣は、お姉ちゃんの……!
死が遠のき、思考スピードが戻ってくると、僕は即座にその場を飛び退こうとするが、その前に僕の身体が横から掻っ攫われた。
四倍圧縮で精密強化した状態で僕と同じ速度で動いてる人がいる!? そんなのって…………まさか!
目に優しいクリーム色の金髪を後ろに靡かせながら、物凄いスピードで僕を抱えて走る馬の獣人。
「……ポーラ」
「エレアの直感に従って来て正解だった!! アッシュ……アッシュ! アッシュ!! 何やってんだ馬鹿!! 私より先に死ぬ気か!!」
ポーラの涙が後ろへと流れて行くが、すぐに新たな涙が目に溜まる。
いつも元気で笑顔が良く似合う顔をくしゃくしゃにしながら走り続けるポーラに感謝と罪悪感と怒りが沸く。
助けてくれてありがとう……無茶をしてごめん……どうしてここに居るんだ……感情が溢れて言葉に出来ない。
でも今は逃げる時じゃ無いんだ。まだ二匹大物がいる、あいつらを仕留めないとっ……!
「ポーラ……降ろして。まだやる事がある。殺しておかないといけないんだ!!」
「仲間を……私たちを頼れよ!!」
「僕ですら気配を絶って一撃で殺してる奴を皆んなに殺せると思えない!! あの虎と猪はネメアに近いんだ!! 内部を破壊しないと殺せない! 半端な武器では歯が立たないんだ! 強い弱いの話じゃ無いんだよ!!」
「では、私と母がお相手してきます」
この声……!
「ミル!? なんで君まで! 死ぬぞ!?」
「それはこっちのセリフです!! アッシュくんはついさっき死にかけたのですよ!? 求婚した癖に!! 私達を置いて死ぬなど許しません!」
何も言い返せない……言い返せないけれど……あああああ!!
みんなに死なれる方が僕は辛い……でもそれはみんなも同じで……それでも戦いに向かうと言うなら……!!
「とにかく降ろしてポーラ!! 仮にミルが行くのだとしても僕も戦う!」
無理矢理ポーラの腕から降りる。
さっきの異常な速度に、僕では対応出来ない……それでも……それでも!! ネメアとの戦闘を邪魔させない為に!! 誰も死なせない為に!!
残り二体が起き上がってしまう前に僕が駆除するんだ!
存在霧散で気配を絶っての一撃必殺で直ぐに離脱する! 技を打った後の残心を狙われたが、次はそんな隙は与えない……!!
【韋駄天】でも無い限り僕には追いつけないんだ。ミルより先に僕が辿り着いて駆除する!
ネメアを父さん達が抑えている今のうちに……!!
「よいっしょぉ〜!!」
声のする方へと目を向けると、ジェイナが猪の頭部に大槌を振り下ろしていた。
猪の頭は頭部が粉砕され、脳髄が漏れており、命も消え、確実に死んだのが分かる。
その猪の体は土が雁字搦めに拘束していた。
あの巨体を封じ切る土の強度に雁字搦めだけれどどこか模様の様な細部にこだわりを感じるあの魔法はグロックの!
虎の方はと目を向けると、そこでは起き上がった虎の牙を二本の剣で抑えながら、光魔法を破裂させて虎の目を眩ませたコルハ。
その隙を突いて烈風が上から吹き下ろし、虎の体を地に縫い付ける。
無防備な首を晒した虎に更に一陣の風が吹いたかと思うと首が落ちた。
これは……ゼガンとジュリアの魔法?
「嘘でしょ……」
「私の獲物が無くなってしまいましたね」
「なーにが皆んなに殺せるとは思えないだ! しっかり仕留めてんぜ? 一人で抱え込み過ぎなんだよアッシュは……」
皆んなこんなに強くなってたのか……一人では無理でも連携して倒してる。
っ! そうだエレアお姉ちゃんは!? ……ネメアの所にいる!?
「お姉ちゃん!!!!」
エレアお姉ちゃんは木剣をネメアの目に突き刺していた。
しかもその木剣って僕が昔使ってたもの!?
よく見ると、腰に何本もの木剣を刺して牽制に使ったり、投げ飛ばしたり、突き刺して捻ったりと、自由自在に戦っている。
そもそも斬れない木剣だからこその戦い方はネメアの注意を引くには十分らしく、エレアお姉ちゃんが標的になってしまった。
そしてその隙を見逃すフェーグさんでは無い。
フェーグさんに背を向けたネメアの後ろ足の関節を特別でかい大剣で思い切りぶっ叩く!
当然ネメアは体勢を崩す。
だがその瞬間、ネメアの全身に雷が迸り、咆哮と共に雷が周囲一体を埋め尽くす。
エレアお姉ちゃんは、直感で察知していたのか、父さんのマントに隠れて居た。
「はあ……心臓に悪い……」
「「こっちのセリフだ」です」
「うっ……ごめん」
返す言葉も無い。でもじっとしても居られない。
残存魔力は三割が良い所。四倍強化するならもって数分。
今の勢いのまま倒せるならそれで良い。でもそう上手くいかなかったら……。
「私たちでも戦闘の補助や周囲の死骸を転がして足場を広げることは出来ます。行きましょう!」
「【韋駄天】……力を貸してくれ! 私は戦闘に参加してあの猫の気を散らす!」
僕は……僕は……。
魔力が無い僕に出来ることはなく。
魔力を圧縮してしまえば餌になる。
僕に出来るのは…………。
◇ ◇ ◇ ◇
私の【超直感】が木剣をアッシュの顔の横目掛けて思いっきり投げろってガンガン鳴ってる。
何でか分からない。けど! 私は私の力を信じる!
アッシュの顔の横を目掛けて思いっきり投げた木剣は、次の瞬間には獅子の口の中にあった。
訳が分からなかった。分からなかったけどアッシュが死ぬ寸前だった事だけは分かった。
雷の音がしたと思ったら、木剣が喉に突き立って獅子は咄嗟にアッシュの前から飛び退いた。
…………馬鹿……馬鹿! 馬鹿アッシュ!!
死にそうだった! 食べられそうだった! 許さない、アッシュもこいつも!
「エレア!? どうしてここにいるんだ!? こいつはただの魔物じゃ無い! 早く下がりなさい!」
「嫌だ! こいつはアッシュを食べようとした!! だからこいつは殺して、食べる!」
「くははははは!!! そいつぁ良いな!! ピリピリ痺れて美味そうだ!!」
「私も賛成しよう! 骨の髄までしゃぶってやる!」
「皆さん……うちの子に釣られて野蛮になって……ちゃんと煮込んで食べますよ! ゼフィアさん! 骨をしゃぶるのは下品です!」
さすがお母さん! お肉はスープが一番美味しいんだから! そしてみんなで食べるともっと美味しい!
こいつは殺したいほど憎いけど、お肉に罪は無い。死んだら残さず頂くんだ。
蛇の牙は今も首から下げている。命の重さは知っている。だからこそ食べるんだよ!
「GRRUUAAAAAAA!!!!」
ネメア……だっけ? こいつが吠えると雷がいっぱい鳴って落ちてくる。
この時だけは近くの人のマントに入らないとダメっぽい。
でもアッシュを食べようとした時の異常な速さは全然出さない。
あれはそれだけ負担が大きいのか、アッシュがそれだけ強かったのか……どっちにしてもアッシュは凄い!
負けてられない! ……けど、私じゃこいつは倒せない。
見てた感じ、警戒されているのはフェーグさんとミルちゃんのお母さん、そしてアッシュ。
共通点は打撃。刃物は通らないけど、衝撃は通るんだ。だから殴られない様に中々あの三人を視界から外さない。
私に出来るのは撹乱してあいつの注意を引く事。そして常にマントを持ってる誰かの近くに居る事。
アッシュを助けに来たのに私たちが倒れる訳には行かないんだから!
「フェーグさんとミルちゃんのお母さんは出来れば対角線上に居て! 打撃や衝撃を警戒してる!」
「よく見てんじゃねえかエレア!! それが難しいから困ってんだぜ!」
「うちは未だ一撃も加えられていません! どうかほんの数秒隙を作っていただければ……!」
こんな時アッシュなら……相手は四足、体が大きい。首の毛で後ろは見え難い……雷……うぅん……分かんない。
分かんないけど木剣で刺して捻じられるのは嫌みたいだし、今はこれをやって嫌がらせする!
ミルちゃんのお母さんの武術を当てるのが今の目標だ!
◇ ◇ ◇ ◇
おうおう。いつの間にかガキども戦場で立派に戦ってんじゃねえか。
その若さで飛び込む様なレベルの戦さ場じゃねえぞここは!
それなのに……それなのによぉ……しっかり戦力になって助けて貰っちまって…………。
「不甲斐無いったらありゃしねえぜえええ!!」
エレアが目に突き立てた木剣のお陰であいつの死角は増えた。
俺を死角に置くのは許してもミルんとこの母ちゃん——エルだけはきっちり視界に留めてやがる。
獣の癖によく分かってんなあ!? あいつの軽い一撃は俺でも吐く。あれを殺す為に撃つならどれほどの衝撃が飛ぶのか……考えただけで肝が冷える。
そしてそれを本能で感じ取っているが故の俺と言う損切り。
癪だが精々タコ殴りにしてやるぜ。とりあえずもう一発同じ場所に叩き込めば脚の一本は奪えるだろう。
勢いをつける為に必要な後ろ脚が潰れれば、アッシュを狙った時のあの神速は出せ無くなるはずだ。
現状あの攻撃だけは誰にも止められねえ。唯一エレアが勘でどうにかしやがったが、勘が何度も当たる保証は無え。その前提で行動する必要がある。
「オラオラオラオラ!! 脚一本!? いーや二本は貰ってやるから寄越せやネメアァァアア!!」
「GYAAA!?」
俺と言う損切りは高くつくぜッ! そして俺に意識が向けばエルがフリーだ……オラかませよ。
「崩掌っ!」
くはっ! 聞いた事ねえ技が出た! しかも横っ腹にがっつり一撃!
ネメアが吹き飛んだりはしなかったが、動きを止めて体を折る。効果抜群だな。
「ガキどものお陰ってのが癪だがな!」
畳み掛け————
「GRRRRAAAAAAAAAAA!!!!」
雷は飛んで来ねえ……だがヤツの全身が青白く発光してやがる……まだ奥の手隠してやがったか……!
しかも……あいつ笑ってやがる!!
牙を剥き出しにして、目を光らせて笑って……!
くっそ……エルがもっと叩き込める様に動けて居たら……奥の手なんぞ使わせずに殺せたかもしれねえのに!!
全員が警戒して動きを止めた。
ネメアは折った体を戻し、一歩踏み出そうと脚を上げたその瞬間——
——奴の体が宙を舞った。
全員が惚けた。全く訳が分からない。いつ誰がそんな攻撃を加えた……?
誰が奴を打ち上げるほどの衝撃を真下から加えたんだ……。
宙を舞うネメアから視線を地上へと戻すと、そこには両手を天に突き上げるアッシュの姿があった。
◇ ◇ ◇ ◇
僕に出来るのは……身体強化もせず気配を消して、不意を突く一瞬だけ強化する事。
では不意を突くとして、どう攻撃する。やつはどうやったら死ぬ。
ヘラクレスは窒息させたが、あの巨体を窒息させる程の巨体も首を絞めるための頑丈な紐も無い。
しかも雷を纏うんだぞ、触れたら感電する。
感電……あいつ自身も感電するのだろうか……いや、しなかったとしても窒息ならさせられる!
グロックもいる、エレアお姉ちゃんもいる、弾幕魔法を張れるジュリアもいる。
なら僕がすべきは作戦を伝えて、ネメアを打ち上げる事。
僕は【存在霧散】を発動させ、身体強化せずに走り、グロックとジュリアにネメアが打ち上がった後の事を伝えるだけ伝えて去る。
問答をする時間も余裕も無い。
エレアお姉ちゃんはきっと勝手に気付いてくれる。【超直感】と【超感覚】を持ってるんだ。絶対に大丈夫。
みんなが激戦を繰り広げる中を僕は歩いて突き進む。ネメアが動きを止める一瞬を狙い澄ます。
エレアお姉ちゃんが目を潰したことで死角が広がり、フェーグさんが痛打を叩き込んだ。
そして意識がミルのお母さんから離れた瞬間に特大の一撃をミルのお母さんが放つ。
崩掌……掌で衝撃を伝える事だけに特化しているのか。なるほど。今なら何と無く術理が分かる。
僕がやりたい事に打ってつけだ。崩掌は内部に衝撃を留めているけど、僕がやりたいのは衝撃で持って吹き飛ばす。衝拳の掌バージョン。衝掌とでも名づけよう。
僕がイメージを固めた瞬間、ネメアが咆哮と共に発光し立ち上がると何故か動きを止める。
何をしているんだこいつは。速く殺しに動かないと殺されるぞ。やれる時にやるんだよ。何上から見下ろしてるんだ。
見下ろしたいなら……もっと上に打ち上げてやるよ。
僕は歩いた。
歩いて腹の下まで入って地を踏み締めた瞬間、四倍圧縮強化発動。
吹き飛ばす意思を魔力に込めて両の手の平を腹に添えて打ち出す。
「衝掌っ……」
出来るだけ真上に打ち上げた。
僕はすぐに飛び退いて後はグロックを信じる。
僕が退いた瞬間、奴の落下地点一帯に大穴が出来ていく。深い深い穴。二十メートルは空いてるかな。
穴が出来たなら次はジュリアとエレアお姉ちゃんを信じる。
すぐさま穴に膨大な量の水が注がれる。穴の半分くらいで水は止まった。
最後に、あいつが着水した瞬間に上から落石でもしてくれたら完璧。
落ちてくるネメアは空中で醜くもがいている。やっぱり水はダメなのかな? 良かった。どうか自分の雷で感電死してくれ。それが出来ないなら溺死してくれ。
穴に入った瞬間、僕はなけなしの魔力を振り絞って周囲の地面から土を持ち上げ固める。
だが、いつまで経っても水に落ちた音がしない。
どういう事だ…………?
恐るべき生への執念と言うべきか……奴は穴の縁に前足を掛けていた。
唸り声を上げながら、憎しみの炎を目に宿し、僕を見上げていた。
「流石に打つ手無いや。僕の魔力はもうすっからかんだよ……」
「では私が貴方の手となります。衝拳っ!」
ミルさんの一撃が地面に当たり、ネメアの掴む地面ごと崩して落下させる。
落下を始めた瞬間に固めた土を勢い良く穴へと落とす。
グロックもそれを見て沢山の岩を作り落としてくれる。
「ありがとうミル。どうかこれで終わってくれ……」
僕は今度は後ろ向きに倒れる。空が青い。死臭が漂ってて匂いは最悪。
…………とても静かだ。ようやく、死んだのかな。
「GRRUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOGAAAAAAAAAAAAAAGYAAAAAAAAAA!!!!」
悍ましいほどの絶叫をあげて、その後二度と声が聞こえてくる事は無かった。
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「終わった。また一歩も動けない。魔力も気力も体力も限界だ」
「では、私が貴方を支えます、よろしいですか?」
「うん。求婚したからね。是非これからも支えて下さい、ミルさん」
「呼び捨て、ですよ? エレアさんの事もお姉ちゃんと呼んでいましたよね?」
「あっ、それは……つい……」
僕はミルに肩を担がれながら歩く。
多少揶揄われるが仕方ない。それだけの事はしたし、気付いたらやっていた。
魔力が戻ったらネメアの死体も掘り返さないとな……勿体無い。
確か神話では、ネメアの爪で毛皮を割いてヘラクレスは身に纏って居たはず。是非とも回収して手に入れたい毛皮だ。
取れぬ獅子の皮算用をしていると、エレアお姉ちゃ——エレアが駆け寄って抱き付いてくる。
「あ゛っじゅゔゔうううぅぅ!!」
「助けてくれてありがとうね……エレア……お姉ちゃん。正直死んだと思ったし……ほんとにありがと」
「うああああああああん! あああああああ! あっしゅのばがああああ!!」
鼻水と涙で綺麗な顔がぐちゃぐちゃだ。でも嫌じゃ無い。僕は担がれていない方の腕でエレアお姉ちゃんの頭を撫でる。
あぁ、何でだろう。今エレアって呼べない……お姉ちゃんって呼びたい……きっと甘えたいんだろうな〜……まだまだ子どもなんだな僕は。
でも今は、お姉ちゃんが泣き止むまでは頭を撫でてあげよう。あとで交代してほしいなあ。
「水没の後は生き埋めにすっとはなぁ。お前えぐいな、戦い方がよお」
「フェーグさん。すみません、勝手にこっち出てきちゃって」
「全くだ。だが、お前が居なきゃ不意を突かれて誰か一人はやられてたかもしれねえ。結果良ければ全て良し! ……と俺は言ってやりてぇが。そうもいかねえ奴のが多いって事で……達者でな?」
「えっちょっと、フェーグさん!?」
フェーグさんの視線の先には、とても良い笑顔の父さんと母さんとゼフィア先生が居た。
そのさらに後ろには、ジェイナとジュリア、コルハとゼガンとグロックまで控えてる。
死ねるね、これは。
「アッシュ。私もっと強くなりてえ。今度体術とか武術とかも教えてくれ! ミルも教えてくれな!」
「私で良ければ喜んで」
「あの、ポーラ。教えるからさ、僕を運んでもらえたりしない……?」
「それは……死んでもごめんだな」
さっきはあんなに颯爽と運んでくれたのに!! どうして? どうして今はダメなんだ!?
「でも、アッシュが生きてて良かった……私はそれだけで幸せだ!」
僕の顔を持ち上げたポーラが額を擦り合わせて喜びを伝えてくる。
うん、僕も嬉しい。だから助けて……!
顔を離す一瞬キスをしていってくれたけど……それは冥土の土産? 嬉しいよ? 顔赤いポーラ可愛いよ? でも僕今から……死ぬよ?
「あらあら。積極的ですねっ。私も後で口付けの一つや二つは貰いたいものです」
何でそんな事を言いながら僕を死地へと連行するんだミルーー!!
お姉ちゃんはまだ泣いてるし、一緒に引きづられてる!?
「お説教は嫌だああああああああ…………」
◇ ◇ ◇ ◇
南の魔物の氾濫、鎮圧成功。
負傷者少数。死者無し。
大規模な魔物の氾濫に置いて奇跡と言って差し支えない犠牲者ゼロ。
この後村では音撃のアッシュとか震撃のアッシュとか異名をつけられそうになったが、どっちも微妙に前世の物と被るので大馬鹿頭領に落ち着けたのだった。




