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転生する時に選んだ【記憶】スキルが自重を忘れてきた  作者: ゆらゆら


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僕、スパアッシュ閉店します

 サフィー母さんとエレアお姉ちゃんへの施術が終わったタイミングで、予定していた三人プラスゼフィア先生とあと一人が同時に到着したらしい。気配で分かった。


 僕らは小走りで対応に向かう。


 ドアを開けた先に居たのはポーラ、ジェイナ、ジュリア、ゼフィア先生、そしてミルさんだった。


 見事に知り合いばっかり。やり易くて良いんだけどね?


「あら、最後の一人はミルちゃんだったのね。とりあえずみんな入って入って〜!」


 母さんの声で我が家の人口密度が上がる。


 いつもの三人は時々この家で女子力を鍛えているので勝手知ったる何とやらだが、ゼフィア先生とミルさんの来訪はおそらく初めてだろうか。


「なんだか大人数で押しかけてしまった様ですまないな、サフィー殿」

「気にしないで下さい。呼んだのは私達なんですから〜」

「にしても……その、随分と雰囲気が……髪も恐ろしい程に綺麗で。それがアッシュの技なのか? 凄まじいな……!」

「私も初めてやってもらいましたけど凄いですよ? やってもらってた記憶が無いんだもの……!」

「記憶が飛ぶのか!? それは……安全なのだろうか?」

「気持ち良くって寝ちゃっただけです♪」


 ゼフィア先生が手玉に取られて遊ばれている。


 うちの母がすみません!


 いつもの三人とミルさんはお姉ちゃんと五人で和気藹々と会話が弾んでいるようだ。

 ミルさんが輪に入れなかったら話し相手になる積もりだったけど心配はいらなかった。


 むしろ僕が取り残された!

 手持ち無沙汰で落ち着かない!


 所在なくうろうろしている僕を母さんが手招きして呼んでいる。

 一も二もなく駆けつけます。


「何でございましょう、母上!」

「また変な言葉遣いして……あっちはあっちで楽しそうだから早速ゼフィアさんにやってあげて欲しいのよ」

「私が先で良いのかは分からないが、サフィー殿もこう言ってくれているし……アッシュ、君さえ良ければお願いしよう」

「あぁ……なるほど。僕はもちろん大丈夫ですので早速庭に行きましょうか?」


 女子五人はマシンガントークを繰り広げているので等速の現実に戻ってくるまで放置一択だ。


 女子の会話は世界にアクセルが掛かってる。僕が四倍強化しても追いつくかどうか……くっ!

 あれについていけるミルさんもやはり女の子なんだな……おそろしい子っ!



 キャッキャしない落ち着きのあるゼフィア先生を庭の快適スパ椅子へと案内する。


「今の季節で外でするのかとは思ったが、どうやら想像以上に完成されたものが出来ているらしい……君の仕業だな?」

「僕の仕業ですけど……まあ良いです。あの手この手で気持ち良くしてやりますよっ! へへっ!」

「君は本当に六歳か……??」

「うちの子はいつもこんな感じですよ〜。昨日は子どもらしくいっぱい泣いてましたけど」

「母さん!?!? 何言ってんの!? 泣いたけど言わなくて良いよね!?」

「やはりアッシュは泣き虫だな。初めてのフェーグとの模擬戦の後も私の腕で泣いていたものな?」

「……こちらにどうぞお掛け下さい」


 これ以上の無駄話は僕のダメージがでかい。

 後ろで大人二人がフフフと笑っているのが腹立たしい……!


 ゼフィア先生は空気の読める大人なので必要以上に弄りを長引かせない事だけが救いだ。

 僕の呼びかけにすぐに反応して座ってくれる。


「おぉっ! 凄いなこれは……一体どうなっているんだ?」

「椅子の形状は僕が整えましたけど、敷いてある物は両親が昔狩った寒い地方のワイバーンの皮だとか。夏にはぴったりですよね!」

「サフィー殿、この皮はこの様に使うべきでは……」

「ゼフィアさん、倉庫で埃を被っていたコレをこんな形で使えるんです。別に良いではないですか。何よりも、私はもう手放せません。夏にこれ無しは耐えられません。冬は暑い地方のワイバーンの皮を出します……ふふふっ」


 えっ? 冬にもやるの? 土で小屋作るの僕? 豆腐ハウス必至だな。


 ……よし。

 未来の話は未来の僕に任せて、今はゼフィア先生の施術に集中しよう。


「さあ、力抜いて身体を預けちゃって下さいねー。靴脱がせますよ〜」

「あっ! いや、靴は自分で脱ごう。君に触られるのは少し恥ずかしい……」

「……ふっ。後で手足のマッサージもしますからね!」

「今笑ったな? 今ちょっと笑ったよな? 変な事をしたら承知しないからな!?」

「変な事……??」

「うぅ、もういい! 好きにしろ!」


 ピュアな六歳児に変な事なんて分かるわけないんだよなー! マッサージしかしませんけどもね?


 靴を脱いで貰ったら、温かいおしぼりを顔に乗せる。


「温かい……これは気持ち良いな……」

「ふふっ、よかった。それじゃ髪洗って行きますよ」


 ゼフィア先生は肩口で切り揃えているから母さんやお姉ちゃんに比べてすっごい短くて超楽だ!


「ゼフィア先生、髪短くて素敵です。洗いやすいし、櫛通しやすいし、楽だし……ゼフィア先生ならいつでもやってあげますよ……」

「それは喜んで良いのか……?」


 【浄化】を馴染ませた水で髪の汚れを落としたら、少しだけ髪を絞ってから頭部のマッサージに移る。


「今から頭を揉みますけど、痛かったら手を挙げてくださいね。返事はしにくいと思うので喋らなくて大丈夫です」


 遠回しに喋るなと言われたと思ったのか、手を挙げようとした後、口を開いて閉じて、頷いた。


 痛くないのに手を挙げるのは違うと思って喋ろうとしたけど、喋らなくても良い様に気を遣ってもらって喋るのも違うと思った結果、頷いたのかな?


「んふっ……ゼフィ先生、そう言うところ可愛いんですよね……ああ! 動かないでっ! 揶揄ってないですから!」


 笑っちゃったけど、こんなの笑っちゃうでしょ。

 あー和む。ゼフィア先生は本当に良い人なんだよな……。


 【浄化】を指に纏わせて髪の生え際をマッサージする。

 エルフは耳が長いので特別にあったかいおしぼりで優しくお耳をにぎにぎしておこう。


「ふあっ……んんっ……」


 耳が弱いのだろうか?

 人の耳にはツボが数十個有るとか無いとか言うけど、エルフ耳は何十個有るんだろうね?


 耳の内側もソフトタッチでさすっていく。

 さするたびにちょっと声が漏れている。


 いかがわしくないですからねー!


 頭部とお耳のマッサージを終えたら髪に軽く布を巻いて、手足のマッサージだ。


 やり方も二人にやった時と一緒、指先から丹念に腕へ肩へと血流を流していく。足も同様。

 ただ、恥ずかしいと言っていたので、足は浄化多めの水で一度洗ってあげてから布で水気拭き取って、ようやくマッサージに入る。


 足のマッサージは股関節まで出来たら理想的だけど、流石にそこまでやったら変な事になってしまう。それも外で。アブノーマル過ぎるよ。僕六歳だよ、自重する。


 一度手を洗ってから、髪をぬるい風でゆっくり乾かしておしまい!


「はーい、終わりましたよ」


 声をかけながら顔のおしぼりを取る。


「どうでした……か……寝てる?」

「あら、寝てるわね?」


 隣の椅子に腰掛けながら見ていた母さんも覗き込んで驚いている。


 んーどうしよう。


「なんかぐっすり眠ってるし、起こすのも悪いね……」

「あの子達も待ってるし……アッシュ運べる?」

「背負う形なら行けるかな」


 寝ているゼフィア先生を起こさない様にそっと背負って寝室の母さんのベッドに寝かせる。

 夏とは言えお腹を冷やすと風邪をひいてしまうのでお腹にだけ布団をかけてあげる。


「ゆっくり休んで下さいね、ゼフィア先生……」


 ベッドの下にゼフィア先生の靴を置き、部屋の窓近くに氷を置いて涼しい風が入る様にして部屋を出る。


 ふぅ……また一人、気持ち良くしてやったぜ!


 それはそれとして、ゼフィア先生みたいなキリッとした人の穏やかな寝顔はギャップ萌えが過ぎる。

 前世の僕のままだったらイチコロだったな。


 ……イチコロって死語か?



 リビングに戻ると世界が通常速度に戻っていた。


 よかった僕でも聞き取れる。


「順番決めてたら居なくなってるんだもんびっくりしたよぉ〜」

「ホストが声も掛けずに去るのはマナー違反ですよ?」

「エレアを見た感じ、あの時よりやばいのか?」

「アッシュくんってなんでも出来るんですね〜すごいです!」


 マシンガンでは無くハンドガン程度にはなったけど、四丁の銃口が全部こっち向くとそれは最早マシンガンなんだよ…………。


「今回は椅子を二つ用意しておりますので、最初のお方と次のお方は僕について来てください。後のお二方はもうしばらくお待ち下さい……」


 僕は店員。向こうはお客様。

 返事では無く、行動で返す。


 付いてきたのはエルフ姉妹。


 ゼフィア先生で耳の具合は分かったからね、しっかり癒してほぐしてやるぜ〜〜。


「ではお客様方、こちらにお掛け下さい。靴は私が脱がせましょうか、それともご自分で脱がれますか?」

「えぇー脱がせてもらうなんて悪いしぃ、流石にねぇ〜」

「私は脱がせて貰います。お願いしますね?」

「ええぇ! ずるいー! 私もお願いしますぅ!」


 ではお姉さんのジェイナから。

 ブーツの靴紐を緩めてから片足づつ脱がせていく。


 こう言うのは言葉に出すと恥ずかしがるから言わないが、うちまで歩いてくるだけでも汗で蒸れている。

 靴や靴下の方にも【浄化】をしておこう。足も【浄化】〜。


 次いでジュリアも脱がせていく。

 此方も蒸れている。同じ手順で【浄化】だ!


「うぅっ、臭くないですか?」

「慣れておりますので……」

「やっぱり臭いんですか!?」

「あっはは! 臭くないよ! ちょっと汗で蒸れてるから【浄化】で綺麗にしておいたけどね?」

「頼むんじゃありませんでした……恥ずかしい」

「あんなに堂々と脱がせてって言ってたのにねぇ。ジュリアちゃんかわいぃ〜」

「姉さんは恥ずかしく無いんですか!?」

「それは、ちょっとは恥ずかしいよぉ? でもアッシュ君なら大丈夫かなぁって」


 靴脱がせるだけでも一騒ぎだな。

 二人が話している間に手を洗って、温かいおしぼり作りに入る。


「ジェイナもジュリアもゆっくりしなよ? リラックスしてもらう為にここを作ったんだから」

「そうだねぇ。はふぅ〜ひんやりしててすべすべで気持ち良いぃ〜」

「もうっ……わかりました……確かに気持ち良いですね。椅子もすごくゆっくり出来ます……」


 二人がようやく落ち着いたところでおしぼりを乗せて、何かあったら手を挙げる旨を伝えて髪を洗っていく。


 櫛で頭皮を優しく刺激したり、髪を梳かしていく度に二人ともが吐息を漏らす。

 双子なだけあってツボも似ているかもしれない。


 髪が終わったら、頭部のマッサージ。

 二人は後頭部を指で揉まれるのがお気に召した様だ。


 そして耳。暖かいおしぼりを追加で作って両耳を優しく包んでぎゅ〜っと掴んで離してを繰り返し、耳の内側も軽くさすっていく。


 エルフはみんな耳が弱いのかもしれない。

 悩ましい吐息が右から左から漏れてくる。


 耳のマッサージも終えたら次は手足。

 四度目五度目ともなれば要領も掴んで慣れた物。


 最後に髪を優しく乾かして顔のおしぼりを取ったら終了。


「お客様、終わりましたよ〜」

「「…………」」


 寝てるわ、これ。


 エレアお姉ちゃんを呼んできて、二人で運んでお姉ちゃんのベッドに二人一緒に寝かせる。


 僕、これで一山当てられそうなんですけど……!



 最後は獣人の二人。

 この二人は耳が顔の横と頭の上についているのが難しいポイントだな。


 おしぼりでケモ耳だけ揉んで拭いておこうかな?


「うぉー! すげえ、ここ涼しい!」

「本当ですね……あそこの氷と日陰のお陰ですか? 少し風も吹いて……もしかしてこれ全部アッシュくんの魔法!?」

「椅子の敷物以外は僕が用意しましたよ。さっ、どうぞお掛け下さいな」


 ポーラは座ると冷たい、気持ちいい、ってわかりやすくテンションが高い。

 ミルさんは耳をピンと立ててほわぁ〜と言いながら椅子に溶けていきそうだ。


「次は靴を脱ぎましょうか。自分で脱がれます? 僕が脱がしますか?」

「わっ私は今日はワンピースなので、自分で……」

「じゃあ私は脱がせてもらうぜー!」

「はいはいーっと」


 ポーラのブーツと靴下もホイホイ脱がせて【浄化】〜。

 毎日の鍛錬の成果の賜物、これだけ【浄化】を使っても魔力はまだまだ残っている。


 ミルさんの方も浄化しておこうと思って振り返ると、まだ脱いでおらず、僕をチラチラと見ている。


 しゃー無し。いっちょ人肌脱ぎましょう。


「ミルさんのも脱がせちゃいますね?」


 返事を待たずに、手際よく脱がせていく。

 足を曲げた時にワンピースが持ち上がるが紳士な僕は目をやらない。

 歯を食いしばって血の涙を流しそうなほど堪えて目を向けない。


「あっ……」


 ミルさんの声に反応して目が無意識に顔の方を向いてしまう、すると必然的にワンピースの下が視界に入る……ズロースってやつだ。


 ドロワーズに比べてシュッとしておりワンピースが広がらないからスマートに見える。


 とてもお似合いで良いと思います。

 でも下着事情だけは前世の方が良いと思う。だって見えてもスンってしちゃうんだ。

 何ならエレアお姉ちゃんの下着なんて飽きる程見てるしね……。


 ちょうどよくスンとしたのでここは見えなかった体で行こう、そうしよう。


「どうしましたかっ? 何か痛かったですか?」

「あっいえ、裾が持ち上がってしまって……見えてませんでしたか?」

「ああ、大丈夫です。見えてませんし、見ませんよ」

「そうですか…………」


 乗り切れたらしい。よかったよかった。


 足と靴を手早く【浄化】しましたら、おしぼり作って……あっ尻尾どうしよう。施術で寝ちゃったら困るし先にやっておくか!


「二人は尻尾もあるから、先に尻尾やっちゃうね? 椅子の形少し変えるからうつ伏せになって〜」


 僕とエレアお姉ちゃんが使っている枕を取ってきて【浄化】してから二人に渡す。


 椅子は中央を身体の形よりも少し広めに窪ませておく。


「それじゃあ尻尾を水で包んでいきまーす。冷たかったら少し温めるので言ってくださいね?」


 ゆっくりと尻尾の先から【浄化】を馴染ませた水球で覆っていく。


「ちょっと冷たいかも、です……」

「私はこのままでも良いかもー」

「うけたまわりましたー!」


 ミルさんの水を温いくらいまで温める。ポーラの方も少しだけ温めにしておく。


「……お前のそう言うとこ好きだけど嫌いだ」

「温いくらいで良いって事で良い?」

「……うん」


 かもーって言った時点で悩んでるだもん。

 温めて不評なら戻せばいいしね? 魔法のお手軽さ故の気遣いだ。


 服に水がつかない所で水で覆うのを止めて櫛を通していく。


 ポーラの馬尻尾は砂が入り込んでいて櫛を何度も通さないとだな。

 ミルさんのふっくら狐尻尾はほぼ全く砂や汚れが無い。櫛が引っかからない、すごい!


 だがここで尻尾を片方だけ褒める様な事はしない。褒めるなら二人とも褒めないと角が立つ。

 なのでここは無言で作業に没頭する。


 汚れが出なくなって、櫛通りも良くなったら終了。

 温い風で乾かしていく。


 なぜ温い風で乾かすのかと言えば、髪はタンパク質で出来ているからだ。

 タンパク質は熱に弱い、なので手で温く感じる程度の風なら髪や毛を傷つけずに済むと言う訳だ。その代わり乾くのに時間がかかるけど。


 途中で尻尾に魔力を這わせて水に干渉して水気を一気に減らし、最後に温風を当てる形にした。

 髪や毛には乾燥も大敵らしいので。


 お母さんの雑誌に書いてあったんだよ。


「ほい、二人とも尻尾終わったよ」

「尻尾だけでも気持ち良すぎです……」

「毎日やってもらいてー……」

「毎日はあれだね、大きくなったら……かもね。さっさと仰向けになってくださいねー!」


 あーなんか恥ずかし。ミルさん居るのに何言ってんだか。


「お二人って……そう言う関係、でしたか? それならその、外します……よ?」

「あれ? ミルってまだ聞いてないのか? 対アッシュ同盟のこと」

「「対アッシュ同盟……??」」


 もしかしてジュリアが前に言ってた協定が形を変えたのか?


「アッシュを取り合わず、アッシュに押し付けず、アッシュの望む人だけくっ付けば良いってやつ。ついでに愛の加護を一緒に貰いに行こーって」

「いえ、初耳です!」

「それ……僕が聞いても良い話なのかな? しかも凄い僕優位の条件だし…………」

「あっ。……まあいっか!」

「良くないよね!?!?」


 口軽すぎない!? 大丈夫この同盟。維持できる?


「なんせお前の事だからな、きっとライバルは増える。お前おっきくなったらもっと格好良くなりそうだし。もっと強くなって優しくなって……そんなやつほっとく女いる訳無いだろ?」

「はわわわ…………」


 奥手っぽいミルさんが顔真っ赤にしてるからやめよ!? 僕も顔熱いからその話やめよ!?


 二人はすでに仰向けなのですぐに椅子の形を整えておしぼりをミルさんに優しく、ポーラには……やっぱり優しく乗せる。


「こっからはお喋り禁止……特にポーラね。何かあったら手を挙げて伝えてね」

「顔赤いぞアッシュ。可愛いなっ!」

「そっちこそ可愛い顔赤くして何言ってんのさ……」


 なんでこんな甘い空気出してんだよ……想定外だよ……。


 後ろ向いて自分のほっぺをバシン! と叩いたらスイッチを入れる。


「ここからは髪を洗って行くから、さっき言った通り、暑い寒いや痒いとかあったら手を挙げてね」


 尻尾の時と同じくらいの温度にした水で髪を包んでいくが、耳に水が入らない様に頭部にフィットする形で包んでいく。


 櫛で頭皮を軽く刺激しながら髪を梳かす。

 ケモ耳にはあまり触れない様にゆっくり丁寧に。


 それが終わったら髪を絞って布で包む。


 お次はケモ耳いきます。

 温かいおしぼりでぎゅっぎゅと拭いていく。

 内側の肌の見える部分も優しく拭いていく。


 毛並みに逆らわない様に根本から耳の先へとぐーっと引っ張るように……これを繰り返す。


 ついでに人の耳の方もやっておくか。

 母さんとお姉ちゃんだけやってないけど……また次の時にやれば良いよね?


 ポーラとミルさんから度々吐息が漏れていたが、既に寝息の様なものが聞こえてきている。


 眠っている間に手足のマッサージもやっておこう。


 あっ、ミルさんの足を先にやっておくか。ワンピースだから気にしちゃうだろうしね。



 ふぅ。終わった。

 マッサージも髪も乾かし終わった。

 おしぼりをとっても起きることはない。


 今の時間は数字で表すなら二時くらいかな?

 一組三十分と、かなり手早く癒しをお届け出来たのではなかろうか。


 このやり切った達成感と僕の肩こりはプライスレスなんですね。わかってます。大人しく回復魔法でも肩に当てておきますとも。


 お姉ちゃんを呼んで、父さんのベッドを【浄化】して使わせてもらうか。


 二人を寝室に寝かせて靴もベッドの横に置いておく。

 ゼフィア先生はまだ眠っている様だ。もう少ししたら流石に起こすかな。


 はーー! スパアッシュ! 満員御礼! 営業終了!

 次回の開店は未定! ご来店有難う御座いましたー!




「やってやったよ母さん。全員夢の住人だ……」

「貴方、本当に凄いわね……」

「アッシュのマッサージまたして欲しいなー?」

「気が向いたらね? 流石に疲れたよ……心が」


 この後はサフィー母さんとエレアお姉ちゃんの蛇の牙入れを色んな案を出しながらいっぱい作った。


 自分で作った革の牙入れを首から下げておく事にした様だ。

 一応牙の中に毒が無いか母さんに確認して貰って、その上で僕が【浄化】してそれを入れている。


 きっとこの蛇の牙がエレアお姉ちゃんに命を教えてくれてるんだろうな……。




 はあ、今日は走りこんだりしてないのにやけに疲れた。悪い気はしないけど、当分の間はスパは封印だな。


 そう言えば、ゼフィア先生はなんでミルさんを連れて来たんだろう。夢から戻ってきたら聴く事にしよう。

 今は僕自身を休ませてくれ〜〜!

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