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転生する時に選んだ【記憶】スキルが自重を忘れてきた  作者: ゆらゆら


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僕、適性論を再論破する!

予約投稿時間をミスしていました!申し訳無いです!

 スキル確認の儀の後、カル父さんが一足先に家に戻った。

 それに続くように僕も先に帰って一緒に昼食をつくってサフィー母さんとエレアお姉ちゃんの帰りを待っていた。


「アッシュ、それってなにをやってるんだい?」

「これ? ゼフィア先生にね、イメージした動きと実際の動きのズレを減らしていくのが大事だって言われてね。自分が考えたポーズを目を閉じた状態でも取れているか確認してるんだ」


 今はちょうど両手を斜め下に広げて、右足の裏を左足の太ももにつける、「命」のポーズをとっていた。


 よく見てみると、右足が思ったより上がっていなかったり、右手と左手の高さが微妙に違っていたりと、結構ズレるのだ。


 他にはお辞儀をする時に背中が丸まっていたり、膝を曲げて腰を落としたつもりが全然腰を落とせていなかったりもする。


 一つ一つ修正しては【記憶】して、それを何度も繰り返す事で、すぐにその状態に持っていけるかの練習でもある。即応性大事。


「なるほどねえ……お父さんもやってみようかな」

「じゃあ、このポーズ! はいっ」

「はいっ!」


 今やっているのは「シェー」のポーズだ。


「僕のポーズよりも曲げてる足の位置が高いかも」

「中々おもしろいね!」

「「ただいま〜〜」」


 ……何てやっているとタイミング悪く帰ってくるんだよね。


 人間、咄嗟の時には緊張して身体が動かないらしい。僕と父さんは「シェー」のポーズのまま目だけで扉の方を見る。


「あー! アッシュこんな、ところに……何やってるの?」

「カルまで……何やってるのよ?」

「「……」」


 僕と父さんは一度目を合わせるとゆっくりとポーズを解く。


「僕の訓練に付き合ってもらってたんだ」

「うん。中々良い訓練だったものでね。僕も少し勉強になったよ。ね? アッシュ」

「うん、父さん! 付き合ってくれてありがとね」


 ……一人なら恥をかいていたかもしれない。でも僕らは一人じゃないんだ!

 僕と父さんは今、二人三脚。互いを支え合い、共に歩みを進める同士なんだ。


 ね、父さん!


「でもアッシュ、どうしてあんな変なポーズにしたんだい? お父さんちょっと恥ずかしかったよ」

「……」


 お父おおおおさあああああん!!!!

 僕は今日の事を絶対に忘れない。忘れないからな!!


「そんな事より、アッシュ! なんで先に帰っちゃったの! アッシュが帰ったって聞いてポーラちゃん寂しそうにしてたよ!」

「そうよっアッシュ! ジェイナちゃんとジュリアちゃんとは沢山お喋りしたのに、ポーラちゃんをほったらかすとはどういう事なのかしら!」


 そんな事……だと? 僕とカル父さんの今の流れがどうでも良い事かの様に流された……?


 僕はジッとカル父さんを見つめる。目が合う事は無かった。


「二人が楽しそうに話してたのもあるけど、お昼ご飯の支度の為に先に帰ったんだよ。ポーラとは訓練場でも会えるしね」

「……そうね、私たちも長話が過ぎた所はあるわね? そこはごめんなさい」

「うっ。お昼も……その、ありがとう。でもね? ポーラちゃんお耳も尻尾もペタって下げたまま帰ったんだよ?」


 あのポーラが耳と尻尾を下げる? 全然想像出来ない。いつもピコピコブンブンさせているのに。

 それも……。


「僕と話せなかっただけで?」

「「……はぁぁああ〜〜」」


 二人一緒にでっかいため息を吐かれた。


 髪を洗った時から好感度高いのは分かってたけど、話せなくて凹む程じゃないでしょ!?


 乙女心は難しすぎる。


「何にしても! まずはご飯だよ! ポーラとは後で話すからそれで勘弁してよ!」

「仕方ないわね」

「仕方ないね」


 ……僕、六歳と二十年余り。女の子の事は未だよく分からない。



 我が家は今日も賑やかで、それは食事中もだった。


「そう言えば、ポーラちゃんが言ってたわ。アッシュに髪を洗ってもらってから髪艶や毛並みがすごく調子が良いって」

「私もアッシュに洗ってもらいたい!」

「お母さんもお願いしたいわね!!」

「……あれは泥汚れとかが凄かったからやってあげただけで、汚れを落とすのと髪を綺麗にするのはちょっと違うんじゃ無いかなーって」


 二人の目に撤退の文字はなさそうで、僕を逃すと言う文字も無さそうだ。


 女性の美への探究心って本当に留まるところを知らないよね。洗髪屋さんは廃業したつもりなんだけど、復業する事になりそうだ。


「分かったから、ご飯ちゃんと食べてね? 僕の事ばっかり見てたら冷めちゃうよ」

「アッシュ、約束よ?」

「アッシュ、信じてるね?」


 なんなんだろう、優しい表情と穏やかな声の裏に覇気を感じるんだよね。


 目を擦ってみても変わらない。拒否権は無さそうだ。


「その代わり、一回だけだから。それ以降はやらないから!」


 毎度毎度、二人の長い髪を洗わされるなんてたまったものでは無い。

 髪を梳かすのだって大変なのに、洗って乾かすのに一体どれだけ時間を使うことやら。


 この条件だけは譲れないね。


「……仕方ないわね」

「……仕方ないね」


 条件を飲んでもらえた様だが、二人で密談を交わしている。


 僕が自分の時間を犠牲にするだけのメリットを提示されない限り、一回限りの条件が覆される事は無いだろう。



 髪を洗う約束をさせられたが、まあそう酷い事にはならないだろう。僕にとってはもちろん、二人にとってもだ。ウィンドウさんも良い事はあっても害はない、と言質はとってあるしね。


 それに、【記憶】が僕の力なら、【浄化】だって僕の力だ。

 僕の納得出来る使い方をしていこうと思う。


 少し威圧的な昼食を終えて、今日も訓練場へと向かう。


 折角体術を鍛えているのだから道中でも鍛錬をしたい、そう考えた僕はエレアお姉ちゃんを肩車しながら訓練場へと向かう事にした。


「お姉ちゃん、どう? 怖く無い?」

「たかーい! 怖く無いよ、楽しいくらい!」

「良かった。じゃあこのまま歩くけど、出来るだけ揺らさない様に歩く鍛錬するから」

「はーい」


 エレアお姉ちゃんを肩車しながら、エレアお姉ちゃんに出来るだけ振動を伝えず、上下もさせない様に移動するんだ。


 精密身体強化を自分に施しながら、膝での衝撃吸収を意識して歩く。


 足を真っ直ぐ伸ばすのではなく、常に軽く曲げた状態を維持しておく。


「おー。快適だよアッシュ! それにね、畑に緑が増えてきてて綺麗! 向こうの方の秋に蒔いた小麦も見えてたのしー!」


 肩車されて視点が高くなったおかげで視界が広いのが新鮮なのか、とても声が弾んでいる。


 今度は両手を広げながら風を受けているのか、エレアお姉ちゃんの長い髪がたなびいているのが見えた。


 僕としてはエレアお姉ちゃんが楽しそうで何よりだよ。


 一頻り風を楽しんだ後、今度は身体を前に倒して僕の顔を逆さまに覗き込んでくる。


「アッシュは逆さまでもかわいいね!」

「そろそろ僕も格好いいの方が嬉しいかも」

「……ちゃんとかっこいいよ。でも可愛くもあるの!」


 晴れやかな笑顔で僕を褒めちぎってくるエレアお姉ちゃんの方が可愛いですよ。

 かっこいいって言う時の色っぽい顔は綺麗だったけど。


 ……こう言うのって口に出しても良いのかな。


 人の気持ちに触れてしまうのが分かる言葉を告げるのは《《昔から》》苦手だ。

 でも、だからこそ口に出して向き合って行かないといけないのかもしれない。


 傷つける覚悟も受け止める覚悟もした筈なんだから、踏み込む覚悟もしないとかな。


「……お姉ちゃんの方が可愛いし、綺麗だよ」

「っ……っっーーー!!」


 あら、お姉ちゃんの顔が真っ赤になっちゃった。

 顔を両手で覆いながら上で上半身を左右に捻ってるのが伝わってくる。


 少しして落ち着いてきたら僕の頭をぐちゃぐちゃにしながら撫でてきて一言。


「あんな優しい顔で言うなんてずるいよ……」


 折角の肩車なのに、エレアお姉ちゃんは顔を伏せたままだった。


 上を見上げると恥ずかしがって僕の目を隠してきて危なかったので途中からは様子を確認する事も出来なかった。




 それから程なくして訓練場に到着した僕らは、肩車をやめて訓練場にお邪魔する。


 隣で僕の手をにぎにぎしてるエレアお姉ちゃんは今はそっとしておくしか無いだろう。


 攻撃力は高いのに、防御力が無さ過ぎて弟は心配です。


 僕らが訓練場に入ると、すぐにポーラが気付いて寄って来た。


 僕らに気付くまでは、確かに馬耳がペタっとしていた様に見えたが、僕らを見つけた瞬間ピコっと立った。


 駆け寄ってきたポーラは僕の前に立つと、また耳を倒して不安そうにしている。


「ポーラ? えっと大丈夫?」

「あぁ、うん。大丈夫。……それより! エレアはどうしたんだ? 俯いたまんまだけど」

「機嫌は良いから大丈夫だよ。心配かけちゃってごめんね? ……それと、朝ポーラとちゃんとお話し出来なくてごめんね」

「えっ!? 気にしてねーよそんな事! そんなんで一々謝んなよな! バカだなお前は……」


 僕が朝の件について謝っただけで、耳と尻尾が立った。

 言葉尻の方になると機嫌良さそうに尻尾がゆらゆら揺れていた。


 母さんとお姉ちゃんの言う通り、僕と話せなかっただけでテンション下がってたのか……? まじで?


「あっそうだ。アッシュに私から謝っとかねえといけない事があってさ……お前に洗ってもらってから髪と尻尾が凄く綺麗になったって話ちまって。なんか面倒掛けてたらごめんな?」

「あぁ、その事ね。母さんとお姉ちゃんからはもう頼まれちゃったけどポーラが謝る様な事じゃ無いよ。そうだ、良かったら今度二人の頭を洗う時にポーラも来る?」


 ポーラは何も悪く無いのに謝られるのもなんか違うし、あの時は泥落としが目的だったからね。


 折角だから改めて綺麗にしてあげたいと思う。


 じゃないとちょっと申し訳ないよ。


「えっ!? ……良いのか?」

「良いよ良いよ。二人も三人も大差ないしね〜」

「じゃあ、お邪魔しようかな……」


 自分の髪を撫でながらそう答えるポーラは思った以上に女の子でちょっとびっくりしてしまう。


 まあでも、ポーラも来てくれるなら洗髪屋さんはやっぱり廃業にしてヘッドスパ・アッシュを開業しよう。


 全力で綺麗にしてみたらどんな反応が返ってくるか……ちょっと試してみようと思う。



 ポーラの機嫌も治ったと言うか、良くなった様で「ひとっ走り行ってくる」と言って軽やかに駆け出して行った。


 訓練場百周はひとっ走りじゃ無いよと、遠い目をしながら手を振り返して送り出した。


 エレアお姉ちゃんもちょっと走ってくるとの事でこちらも快く送り出す。


 ポーラと並走する時には顔の熱も引いたのか前を向きながら走っていた。



 一人になった僕に今度はゼガンとグロックがコルハを引き連れてやってきた。


「アッシュ君ちょっと良いですか!!」

「僕もちょーっと聞きたい事があるな〜!」


 ゼガンとグロックに引っ張られるコルハとか初めて見たかもしれない。

 コルハが何だかバツが悪そうなのが気になるな。


「落ち着いて話を聞かせてよ。一体どうしたのさ」

「コルハ君が光の魔法を使ってたんですよ!!」

「有り得ない事が起こったんだよ〜! 僕、夢見てるのかと思ったー!」

「……アッシュに教えてもらってから練習して、握り拳くらいの光の球が作れる様になってな。それ自慢したらこうなった」


 信じられない、あり得ないと騒がしいゼガンとグロックを他所に、コルハが経緯を教えてくれる。


 ……これってもしかしてまた適性の話?


「もしかして、ゼガンとグロックは光魔法使えない?」

「使えませんけど、なんですか?」

「僕も使えないねー。適性ないからねー」


 むぅ…………。


「魔法に適性なんて無いよ。強いて言うなら二人に魔法使いの適性が無いだけ。出来ると思える人にしか魔法は出来ないよ」

「……それはどういう意味ですか」

「ふーん。馬鹿にされてるのかな〜」

「違う。出来ると思えない事は魔法でも出来ないって事で……う〜ん」


 面倒だから二人にも光魔法をササっと伝授しよう。適性論をぶっこわしてやるんだ。


「二人とも見てて。『我が意に応え、光の粒よ、出でよ』」


 僕の詠唱によって指先に爪ほどの大きさの光の粒が発生する。

 魔法として使う価値のない魔法。何の役にも立たず、闇も照らせない光の魔法だ。


「この何の役にも立たない魔法くらいなら《《当たり前に使える》》と思うよ。まずはこれ、やってみてよ。詠唱はアレンジしちゃって良いし」


 僕の言い方を挑発や挑戦として受け取ったのか、ゼガンとグロックが僕の詠唱を少しだけ変化させて唱えた。


 その結果、グロックは小さな光を生み出すことに成功した。


「おぉ。グロック出来たじゃん。じゃあそれに追加で魔力注ぐなり、その光の粒をいっぱい作るなりしたらコルハと同じ物を作れるでしょ? 適性合ったんじゃない、魔法使いの」

「……そういうことかー! え! でもそれなら適性って何さー! 僕、一生土魔法しか使えないと思ってたのに〜〜!!」

「なっ……僕には作れなかったのに。アッシュ君から見れば、魔法使いにすらなれないって事ですか……?」


 グロックは理解も早いらしい。僕の言いたい事をもうちゃんと分かった様だ。

 対してゼガンは絶望一歩手前みたいな表情をしている。


 言い方が悪かったかもしれないので、少し手伝わせてもらおう。


「ゼガン。僕の出した光の粒を両手で覆い隠す様にして?」

「……? こう、ですか?」


 自信まで無くしてしまったのか、おずおずと言う通りに光の粒を両手で捕まえるゼガン。


 ゼガンの手に覆われた小さな光の粒は完全にその姿を消し、光が漏れてくることも無い。


 そこで僕は光の粒を消す。


「良いかいゼガン。今君の手の中に光がある。君の手に覆われて光が見えないけど、確かに君は光を掴んだ。それは良いね?」

「はっはい。」

「じゃあ、目を閉じて。確かに手の中にある光を想像して。……想像できたら両手を開いて……今君の両手の上に光はあるよね?」

「あります。だってさっき手の中に……ちゃんとあります」

「良いね。じゃあもう一度詠唱して魔法を使ってみて」


 僕の言葉に少しだけ躊躇して、でも力強い詠唱を紡ぐ。


「『ゼガンが求める、小さな光よ、現れてください』」


 ゼガンの手の上には僕がつくった光の粒とほとんど同じ大きさの光があった。


「ゼガン目を開けて良いよ」

「これは……アッシュ君の光では無いんですよね?」

「この光はゼガンの魔力で生み出されたものだよ。さっきのゼガンの頭には、この小さな光が確かにあったんだ。そのイメージを魔力と詠唱が形にしてくれたんだよ」

「出来ると思える事しか出来ない……魔法使いとしての適性、ですか……」

「三人とも、もっと普段から色んな魔法を使うと良いよ。魔法は自由! 闇を照らせるし、光を遮れる。傷つける事も出来るし、癒す事も出来る。暖を取ることも、渇きを潤す事も、草木を揺らす事も、畑を耕す事だって出来る。魔法は楽しいおもちゃだよ。道具だよ。使うのは僕らだ。楽しく面白く気軽に使って行こうよ!」

「魔法は使わなきゃ上手くならないんだもんな?」

「コルハ君、その通り。花丸をあげましょう」


 光の魔法でコルハの顔の前に光の花丸を描いてプレゼント。


 今日もまた論破してしまった。

 適性論はもはや何処かの早とちりさんの悲しき遺産になってしまったね。

 可能性を狭める様な考え方をあまり広めないで欲しいものだよ!


 ゼガンの目に光が戻った所で、今日も訓練開始だ。


 まずは百周走るぞー!

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