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転生する時に選んだ【記憶】スキルが自重を忘れてきた  作者: ゆらゆら


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僕、スキル確認の儀を見る

 昨日の稽古は姉弟共々こってり絞られた。


 けれども、僕らにはまだまだ伸び代がある事を証明された形でもある。

 僕らはもっと強くなるぞー!



 と決意したのが一週間前と。

 最近は時が過ぎるの速く感じる。


 気がつけば太陽が昇って、次に気がついた時には村が橙色に照らし出されて影が伸びてるんだ。


 僕もお姉ちゃんも慣れない事をしているからか、あまり劇的な変化は見られないが、多少は前に進んでいる。



 だが今日は一週間の最初の日である火の日。カル父さんが言っていたエレアお姉ちゃん世代のスキル確認の儀を執り行う日だ。


 朝は少し早めに起きて、可愛い小麦の手入れを手早く終えて、朝のうちに教会へと赴く。


 僕は受ける必要は無いけど、だからこそ一度は見ておきたいと思ってついて来させてもらった。



 今日は十代の子のスキル確認の儀を行うのだが、村の若手はそこそこ多い。

 そして皆んな挙って自分の成長を確認しに来るのだ。


 新たなスキルを得て喜んだり、努力が実らない事に落胆したり……そして最後には神々に感謝を捧げる。


 ……ウィンドウさんが行なっているであろうスキル確認の儀の感謝を他の神々へと捧げるのは少し複雑だ。

 ウィンドウさん自身が望んだ事に文句を言うつもりは無いが……内心複雑なものは複雑なのだ。



 そんなスキル確認の儀には当然、ジェイナとジュリア、ポーラも来ている。

 みんな初めてのスキル確認の儀に緊張しているのか、人が多いとは言え僕やエレアお姉ちゃんに気付いた様子がない。


 自分の努力の結晶が初めて明るみになるのだから、興味と同時に恐怖が来て普段通りでなくても仕方がないか。



 そうこうしているうちに村長さんが神々の神像の前に立って深々とお辞儀をし、祈りを捧げ始めた。


 ほほほほ言っている村長さんの面影は何処にも見当たらず、立派な村長がそこにいた。


 村長さんが祈りを終えて立ち上がり、こちらに振り向くと張りのある声が響く。


「これより、スキル確認の儀を執り行います。左前の貴方から順に一人づつ私の前へ」


 決して声を張り上げている訳では無いのに教会中に声が響き渡る。

 さらには、村長さんが祈りを捧げた時から空気がシャンと張り詰めたのだ。声を出してからもその空気は変わる事なく未だ神聖さを感じさせる。


 村長さんの凛々しい声に一人目の人がゆっくりと歩み出て、村長さんの前で片膝をつき祈る様に両手を合わせる。


 その姿を認めた村長さんが長い詠唱を始める。

 こんなにも長い詠唱は初めて聞いたが、少し前に霊獣関連の話をした時に言っていた本来のサーマライズの詠唱なのだろう。


 アビリティサーマライズと唱えるだけで良い僕からすると勝手に申し訳なく思えてしまう。


 長い詠唱を終えた村長さんが最後にサーマライズを告げる。


「ターゲット・スキル・サーマライズ」


 こちらからスキル一覧の様なものは見えない様で、村長さんが自ら確認し、それを書き起こした用紙を見せてくれるようだ。


 一人目の人はそれを見て小さくガッツポーズをとった後、改めてお礼を告げて元の席へと戻っていった。


 どうやらスキルを記した用紙は貰えないらしい。それどころか、書いた字が消えた様に見えた。

 ホワイトボードみたいな紙があるのだろうか? あるいは魔法的な効果で字を消せるのか……ちょっと興味をそそられる。



 その後も順調に進んで行き、ジェイナの番が回って来て村長さんがスキルを書き起こし始めた時に、手を止めて少しペースを落として書いていた。


 何か特殊なスキルでもあったのだろうか? 後でジェイナ本人に聞いてみようと思った所で何故か村長さんと目が合った。


 「またなんかやったか?」とでも言いたそうな顔だ。


 僕は急いで首を横に振る。髪が振り回されるくらい勢いよくだ。


 そんな僕を見た村長さんは軽く息を吐いてから元の動きに戻る。


 スキルの確認を終えたジェイナはとても嬉しそうに笑っていた。



 ジュリア、ポーラと続いて、少し間を空けてからついにエレアお姉ちゃんの番だ。


「行ってくるねっ。アッシュ、約束忘れないでね!」

「うん、一日お世話でしょ? 直感系は絶対あるから僕がお世話する事は無いよ……」


 僕のつれない返答にむすっとしながら村長の元へと向かっていくエレアお姉ちゃん。


 前の人たちを見習って同じ動作をとり、村長さんがサーマライズを唱える。


 すると、今日初めて村長さんが目を見開いた。

 すぐさま何事も無かった様に振る舞っていたが、僕は見逃さない。


 絶対なんかすごいのあったなこれ。エレアお姉ちゃんの事だ、一つじゃなくて二つ三つあっても驚かないぞ。


 スキルを確認したエレアお姉ちゃんは、失礼過ぎるほどに肩を落として帰って来た。


 父さん母さんの間に座ると、ブスッとしながらも目立ったスキルを教えてくれる。


「えっとね、剣技、剣術、水魔法、土魔法、風魔法、体術とか色々あったけど、凄そうなのは超直感と超感覚の二つがあったよ……ぶぅ〜」


 ……うっは〜! 超がついてるのが二つって何? 転生時に選べたスキルに超のつくスキルなんて無かったんですけど!

 にしても直感と感覚に超って……らしいな。

 ぴったり過ぎて成程過ぎる。


 少し前、僕が存在を紛らわせる技を覚えるまでは、隠れん坊なんて勝負にならなかった思い出がある。

 カル父さんとの模擬戦でも、見えてないでしょって位置からの攻撃を避けたり、攻めきれそうな場面で首を傾げながら一旦距離を取ったり。


 思い当たる節があれやこれやと出てくる。


「あっでもね、一個嬉しいのがあった。精密身体強化って言うの! これアッシュのつくったやつでしょ? アッシュとお揃いだよきっと!」

「えっ!? それ……スキルになってるの? 僕以外にも編み出した人がいたのか、それとも予想された使い方だったのかな……?」


 あーいや、違うな。僕のスキルに【プラネタリウム】があったのを思い出した。

 ウィンドウさんがノリで追加してる説が一番濃厚だわ。


 ウィンドウさんって想像以上にお茶目なんだよな。

 もっかいサーマライズで確認したら今の僕のスキルって何が表示されるんだろう……ちょっと怖いな。



 スキル確認の儀は滞りなく終わり、村長さんが神々の神像に向かって深く頭を下げ、感謝の祈りを捧げる。


 振り向いた時にはいつもの好々爺然とした村長さんに変わっていた。


「今回のスキル確認の儀はこれにて終了とする。皆、これからも励むようにのぅ! ほっほっほ!」


 厳かな空気が一瞬で跡形も無くなってしまった。

 レアな厳か村長さんだったな。



 さて、後ろの方にいた僕らはすぐに教会を出る。後が支えてしまうからね。


 広場に出た僕らは、エレアお姉ちゃんがいつもの三人と話したいとの事なのでしばらく待っている事になった。


 続々と出てくる少年少女と少しの大人たちの中に友の姿を見つけたエレアお姉ちゃんが駆け寄っていく。


 最初に出て来たのはポーラだったようだ。

 ハイタッチしながらにこやかに話をしている。


 うぅん。ポーラとエレアお姉ちゃんが楽しそうに話しているのを遠目で見ると、とんでもない美少女二人の会話に見える不思議。

 片や、クリーム色の髪と毛を持つ光輝く女の子。

 片や、艶のある黒髪ロングで可愛さと清楚さを振り撒く女の子。


 何となく両手を擦り合わせて拝んでおく。


「ありがたやぁ〜ありがたやぁ〜」

「アッシュったらまた変な事してるわね?」

「母さん、これは断じて変な事じゃ無いよ! 感謝の祈りを捧げているんだよ!」

「誰にだい?」

「今この瞬間ここに居れる事に対する感謝だね。誰とかじゃ無いんだ。父さん、何に対しても感謝はして良いんだよ……」


 僕は今久々にアルカイックなスマイルをしている自覚がある。

 ただこの時に身を委ね、感謝し、今を楽しむ。それで良いんだ。美少女が朝日に照らされながらにこやかに談笑をしている……素晴らしいよ。


 父さんと母さんが揃って肩をすくめて首を横に振ってる気配がするが瑣末な事。


 あぁ。尊い光景だ。スチルとかギャラリーとかで一枚絵くれないかな?

 セーブとロードは出来ませんか?


 あっ、エレアお姉ちゃんがこっち見て笑ってる。いつも通りだな。


 二人が一緒に寄ってくるが、出来ればあまり近付かないで欲しい。

 最近の二人は益々綺麗になったというか、大人っぽくなって来ていて、ドアップに二人が映ると僕の精神が爆散しちゃうから。


「よぅアッシュ! お前も来てたんだな。カルさんとサフィーさんもおはようございます!」

「おはよ、ポーラ」

「やあ、おはよう」

「ポーラちゃんおはよう〜! や〜髪綺麗ね〜普段どうやって手入れしてるの——」


 あぁ……始まってしまった。アンリミテッドな女子トークが……。

 こうなったら僕と父さんは空気になるしか無いんだ。ただひたすら気配を殺し、空気になる。誰かが気付いてくれるその時まで、ね。


 ……おや? 存外早く存在に気付き直してくれたのか、僕の肩をツンツンと突かれる感触が。


 突かれた方へと首を向けるとそこにはエルフ姉妹が居た。


「アッシュくんっ。おはよぉ! ねえねえ聞いてぇ。わたしねぇ……魔法と精密身体強化がスキルにあったんだよぉ! 頑張ったんだぁ!」

「え、ほんと!? すごい! 本当にがんばったんだね……精密身体強化は勿論のことだけど、魔法もか! おめでとうジェイナ!」

「ありがとおねぇ。んふふ〜」


 ジェイナもこれで立派な魔法使いか、感慨深いね。

 それに精密身体強化は感覚で使えるようになったエレアお姉ちゃんを除けば一番早く習得したんじゃないかな?

 大真面目に凄いや。これだけ喜ぶのも無理ない。


「おはようございます。いつも姉がお世話になっていますね、アッシュ君」

「おはようジュリア。こちらこそいつも構ってもらえて助かってるから気にしないで〜!」


 ジュリアはいつも丁寧と言うか一歩引いてて接しやすくて良いね。

 距離感がね程良いんだ。

 エレアお姉ちゃんとポーラは物理的に近いし、ジェイナは精神的に近くてね、ジュリアが居てくれるだけで助かります。


「二人とも、向こうにポーラとお姉ちゃんも居るよ?」

「おや? 私達と話すのお嫌ですか?」

「もしかして嫌いになっちゃったぁ?」

「えっ。ず、ずるいよそれ!? 嫌とかじゃ無くてね、単純に二人はそっちで話してるけど良いの? って意味で……」

「「ふふっ、わかってるよぉ(ますよ)」」


 二人揃うと最近は良く弄られる。年下扱いと言うやつなんだろうか。ちょっとむずむずする。


「アッシュ、お父さんは先に帰っているから、お母さんとエレアにも伝えておいてね? じゃっ!」

「あっ!! ちょっと父さん!!」


 裏切られたッッ!!

 しかもなんて速度で離れて行くんだ、声がドップラー効果を出してたよ。


「「アッシュ君?」」

「……優しくしてください」


 朝から双子のエルフ姉妹に頭を撫でられた。


「そう言えばジュリアの方は何か良いスキルあった?」

「私ですか? そうですね、魔力感知と精霊魔法を確認出来ました。エルフとしては優秀みたいですが、私はどうにも皆んなより一歩劣っている気がしてしまいますね」


 案外みんなとの差を一番気にしてたのはジュリアだったんだな。

 でもまあ気持ちは分かる。

 同い年の三人がエレアお姉ちゃんとポーラ、そして魔法はもちろん身体強化をも極めんとするジェイナなんだ。致し方無い。


 でもなあ、僕にも出来てない魔力感知が出来るみたいだしなあ……。

 

「魔力感知って僕まだ出来ないんだけど、良かったらさ、魔力感知の訓練の仕方教えてよ! 代わりに僕に出来る事で知りたい事があったらジュリアに教えるよ!」

「おやおや、どうしましょう姉さん」

「ん? ジュリアちゃんのやりたい様にするのが一番だよぉ? ……私はそうさせてもらったもん」

「えぇ……そうですね。ではその交換条件を飲みましょうか」

「それじゃあ、午後の訓練でまた話の続きしよう!」

「ええ、お願いしますねっ」


 僕がジュリアと話している間、ずっとジェイナに頭を撫でられていた事は見ないふりをしてくれたのかな? とってもありがたいね。


 さてと。そろそろ良い時間だし、僕も帰ろうかな。


「それじゃあ二人とも、僕は一旦家に帰るとするよ。うちの女性陣が盛り上がってるから先に帰って昼食の支度をしないとだ」

「うんっ。じゃあまた訓練でねぇ!」

「教えて欲しい事、考えておきますね」


 僕が離れるのが名残惜しいのか、ジェイナにぎゅっとされてしまった。

 されるがままというか、一方的なのは紳士的では無い気がしたので軽く抱き返しておく。


 流れでジュリアとも軽いハグをしたのだが、果たしてする意味があったのかは分からない。

 二人の機嫌は良さそうだったので良しとしておこう。


 ポーラのスキルは結局聞けなかったが、それこそ訓練の時にでも聞けば良いだろうし、今は先に帰ってご飯の支度をしないとだ。



 僕は駆け足で家路につく。

 道中、【記憶】してしまったジェイナとジュリアの温もりを何度も思い出してしまって悩ましかった。

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