後悔が先に立った(かもしれない)瞬間
「あの、本当に入居したんですか…?」
クエストを受けにギルドの受付に行くと、ステラはそう聞かれた。
「えぇ、はぃ…」
そう答えると、驚かれ、心配された。
「気を付けて下さいね!?あそこ狂人の巣窟ですから!何かあったらすぐ警備員に知らせるんですよ!!」
「ゎかった、わがったから、肩揺らすのやめれぇ」
頭がぐわんぐわんする。
結局、高い依頼は無かった。薬草を採ってきて、ついでに食べられる野草も採って、おしまい。
自分の部屋に入ろうとしたところ、お隣さんに声を掛けられる。見た目爽やかな青年だ。
「あの、肉多く仕入れすぎて下手すりゃ腐らせそうので、消費するの手伝ってもらえますか…?」
食費すら無い今の状況で、この誘いは有難い。断る理由も無いので、夕食はお隣さんと食べることに。
「ステーキに、骨出汁スープ…贅沢ですが、尽くヒト組織ですね。場所が場所なので、別に驚きはしませんが」
肉を“買った”とも言ってなかったし。
「お、鑑定眼持ち?元が誰だったかとか分かります?」
「そこまでは分かりませんが…貴方のことですし、よっぽど悪事を働いた者なのでしょう」
隣人ガチャは大当たりと言っていい。指名手配犯の中でも有名な人で、裏社会組織の頭領を何人も殺して回ったのだとか。殺人犯である事に変わりは無いが、比較的善人だ。
「ヒト眼球って美味しいんですか?」
「内臓とかはあんま美味しくないから闇医者に売っ払ってますね」
「そうなのですか。鳥の肝臓や心臓などは栄養価が高い上に美味しいらしいので、ヒトもその辺りは残して調理してもいいかもしれませんよ?」
「あー確かに。今度試してみよっかな」
その日、ステラは生まれて初めて人肉を食らった。
人間として大切な何かが失われていくような気がした。世間ではそれを倫理感などと呼ぶのだろうか。
倫理で腹は膨れないのだから仕方が無い。夕食は暫くこの人の世話になろうと、ステラは思った。




